有酸素運動を長期間継続すると糖尿病性腎症が改善する可能性がある-。東北大学大学院医学系研究科の伊藤大亮氏と清元秀泰教授らの研究グループが、糖尿病モデルラットを用いてこの機序を解明したと報告した。 同氏らは、肥満合併2型糖尿病に対する有酸素運動は、一酸化窒素を増強し、酸化ストレスおよび糖化ストレスの軽減を介して腎障害を改善する可能性があり、糖尿病性腎症早期において、有酸素運動が腎保護に働く有用な知見だとしている。詳細は、「PLOS ONE」9月17日オンライン版に掲載された。. 糖尿病性腎症は、腎不全に至ると透析療法や腎移植を要し、その一次・重症化予防は喫緊な臨床的課題だ。この腎症への早期の治療は、おもに薬物療法による厳格な血糖や血圧管理が中心で、運動や食事指導は推奨程度にとどまっている。伊藤氏らは、運動療法、とくに体重減少や高血糖・インスリン感受性改善などの効果を示している「長期間行う有酸素運動」に着目。糖尿病モデルラットを用いて、腎症に対する有酸素運動の影響を検討した。. 同氏らは、2型糖尿病肥満モデルラットに1日60分、週5日のトレッドミル走行を2カ月間行わせ、腎組織における一酸化窒素、酸化ストレスおよび糖化ストレスの変化を調べた。なお、一酸化窒素は腎臓保護への関与が、酸化ストレスや高血糖による糖化ストレスは腎症進展への関与が指摘されている指標だという。. その結果、2カ月間にわたる有酸素運動を継続すると、アルブミン尿や多尿、糸球体過剰濾過が抑制され、腎機能も改善することがわかった。腎組織の観察から、有酸素運動により腎糸球体や血管の障害が改善されていた。また、運動により腎内の内皮型および神経型一酸化窒素合成酵素が増強される一方で、酸化ストレスと糖化ストレスのマーカーは軽減していることを見いだした。. 同氏らはHealthDayの取材に応じ、「この病態はヒトの糖尿病性腎症第2期(早期腎症)に相当する。ガイドラインでは、インスリンや経口血糖降下薬に加えて、高血圧合併例には早期からのRA系阻害薬の投与が推奨されているが、自覚症状や合併症がない場合には病院でのフェローなどから外れるケースも多くみられる」と臨床上の課題を指摘。. 今後の臨床応用について、「今後は、早期からの運動療法が積極的な治療法のひとつとして選択されることが期待される。また、この研究で解明された一酸化窒素、酸化ストレスや糖化ストレスをサロゲート・マーカーとして用いて、運動療法による糖尿病性腎症改善を検証する臨床介入研究の実施が期待される」と話している。(HealthDay News 2015年9月24日). Copyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.
有酸素運動を長期間継続すると糖尿病性腎症が改善する可能性がある-。東北大学大学院医学系研究科の伊藤大亮氏と清元秀泰教授らの研究グループが、糖尿病モデルラットを用いてこの機序を解明したと報告した。 同氏らは、肥満合併2型糖尿病に対する有酸素運動は、一酸化窒素を増強し、酸化ストレスおよび糖化ストレスの軽減を介して腎障害を改善する可能性があり、糖尿病性腎症早期において、有酸素運動が腎保護に働く有用な知見だとしている。詳細は、「PLOS ONE」9月17日オンライン版に掲載された。. 糖尿病性腎症は、腎不全に至ると透析療法や腎移植を要し、その一次・重症化予防は喫緊な臨床的課題だ。この腎症への早期の治療は、おもに薬物療法による厳格な血糖や血圧管理が中心で、運動や食事指導は推奨程度にとどまっている。伊藤氏らは、運動療法、とくに体重減少や高血糖・インスリン感受性改善などの効果を示している「長期間行う有酸素運動」に着目。糖尿病モデルラットを用いて、腎症に対する有酸素運動の影響を検討した。. 同氏らは、2型糖尿病肥満モデルラットに1日60分、週5日のトレッドミル走行を2カ月間行わせ、腎組織における一酸化窒素、酸化ストレスおよび糖化ストレスの変化を調べた。なお、一酸化窒素は腎臓保護への関与が、酸化ストレスや高血糖による糖化ストレスは腎症進展への関与が指摘されている指標だという。. その結果、2カ月間にわたる有酸素運動を継続すると、アルブミン尿や多尿、糸球体過剰濾過が抑制され、腎機能も改善することがわかった。腎組織の観察から、有酸素運動により腎糸球体や血管の障害が改善されていた。また、運動により腎内の内皮型および神経型一酸化窒素合成酵素が増強される一方で、酸化ストレスと糖化ストレスのマーカーは軽減していることを見いだした。. 同氏らはHealthDayの取材に応じ、「この病態はヒトの糖尿病性腎症第2期(早期腎症)に相当する。ガイドラインでは、インスリンや経口血糖降下薬に加えて、高血圧合併例には早期からのRA系阻害薬の投与が推奨されているが、自覚症状や合併症がない場合には病院でのフェローなどから外れるケースも多くみられる」と臨床上の課題を指摘。. 今後の臨床応用について、「今後は、早期からの運動療法が積極的な治療法のひとつとして選択されることが期待される。また、この研究で解明された一酸化窒素、酸化ストレスや糖化ストレスをサロゲート・マーカーとして用いて、運動療法による糖尿病性腎症改善を検証する臨床介入研究の実施が期待される」と話している。(HealthDay News 2015年9月24日). Copyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.