がん患者は、悪性腫瘍によって目に見えない心臓への損傷を受けている可能性があることが、オーストリアの研究で明らかにされた。新たにがんと診断された患者では心疾患の存在を示すホルモンや化学物質の血中濃度が高いことから、臨床的徴候がなくてもがんが心臓組織を損傷している可能性が示唆されると、研究グループは結論づけている。.米国心臓病学会(ACC)のAna Barac氏によると、近年、がんの化学療法が心臓に毒性作用をもたらすことがわかってきたため、心臓医とがん専門医の間の壁がやや取り払われており、がん専門医は化学療法を実施する前に心疾患の科学的指標をチェックすることも多いという。しかし今回の研究で、がん患者は化学療法を受ける前からこうした指標の値が高く、がんの進行とともにさらに上昇することがわかった。. 同氏によると、この結果はがんと心臓病に対する医師の考え方を変える可能性があるという。本研究は患者555人を対象に実施され、医学誌「Heart」に9月28日掲載された。. 今回の研究では、患者が化学療法を開始する前に、心疾患の徴候を調べる一連の血液検査を実施した。例えば心筋収縮を制御するトロポニンと呼ばれる化学物質は、心臓発作を起こしたことがあるかを検査するのに用いられると米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)教授のAnn Bolger氏は説明している。. 患者を2年間にわたり追跡し、その間に約3分の1が死亡した。分析の結果、トロポニンをはじめとする各ホルモンの値は、がんの重症度とともに上昇しており、なかには通常の100倍になるものもあった。いずれの指標にも患者の全死因による死亡リスクとの有意な関連が認められ、21~54%の上昇がみられた。. がんが間接的に心臓に損傷を与える機序としては、例えば身体ががんを攻撃するために炎症反応を増大させ、それが心臓に害を及ぼすことが考えられるという。また、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのAlexander Lyon氏によると、がんが筋肉を破壊する毒性物質を産生することにより直接的に心臓を傷つける可能性もあるという。. しかし、腫瘍の増殖に必要な新たな小血管が形成されるときにこのようなホルモンや化学物質が産生されるなど、別の理由も考えられるとBarac氏は指摘する。それでも今回の結果は、がん患者の心臓の状態を評価し、損傷から守るための薬剤治療を行うことが重要であることを示すものだと専門家らは話す。. 「がんの闘病中に心疾患まで発症することは患者にとって極めて厳しいものだ。そのような状況を避けるために手を尽くしたい」と、Bolger氏は述べている。(HealthDay News 2015年9月28日). http://consumer.healthday.com/cancer-information-5/chemotherapy-news-122/could-cancer-be-a-hidden-danger-to-the-heart-703662.htmlCopyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.
がん患者は、悪性腫瘍によって目に見えない心臓への損傷を受けている可能性があることが、オーストリアの研究で明らかにされた。新たにがんと診断された患者では心疾患の存在を示すホルモンや化学物質の血中濃度が高いことから、臨床的徴候がなくてもがんが心臓組織を損傷している可能性が示唆されると、研究グループは結論づけている。.米国心臓病学会(ACC)のAna Barac氏によると、近年、がんの化学療法が心臓に毒性作用をもたらすことがわかってきたため、心臓医とがん専門医の間の壁がやや取り払われており、がん専門医は化学療法を実施する前に心疾患の科学的指標をチェックすることも多いという。しかし今回の研究で、がん患者は化学療法を受ける前からこうした指標の値が高く、がんの進行とともにさらに上昇することがわかった。. 同氏によると、この結果はがんと心臓病に対する医師の考え方を変える可能性があるという。本研究は患者555人を対象に実施され、医学誌「Heart」に9月28日掲載された。. 今回の研究では、患者が化学療法を開始する前に、心疾患の徴候を調べる一連の血液検査を実施した。例えば心筋収縮を制御するトロポニンと呼ばれる化学物質は、心臓発作を起こしたことがあるかを検査するのに用いられると米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)教授のAnn Bolger氏は説明している。. 患者を2年間にわたり追跡し、その間に約3分の1が死亡した。分析の結果、トロポニンをはじめとする各ホルモンの値は、がんの重症度とともに上昇しており、なかには通常の100倍になるものもあった。いずれの指標にも患者の全死因による死亡リスクとの有意な関連が認められ、21~54%の上昇がみられた。. がんが間接的に心臓に損傷を与える機序としては、例えば身体ががんを攻撃するために炎症反応を増大させ、それが心臓に害を及ぼすことが考えられるという。また、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのAlexander Lyon氏によると、がんが筋肉を破壊する毒性物質を産生することにより直接的に心臓を傷つける可能性もあるという。. しかし、腫瘍の増殖に必要な新たな小血管が形成されるときにこのようなホルモンや化学物質が産生されるなど、別の理由も考えられるとBarac氏は指摘する。それでも今回の結果は、がん患者の心臓の状態を評価し、損傷から守るための薬剤治療を行うことが重要であることを示すものだと専門家らは話す。. 「がんの闘病中に心疾患まで発症することは患者にとって極めて厳しいものだ。そのような状況を避けるために手を尽くしたい」と、Bolger氏は述べている。(HealthDay News 2015年9月28日). http://consumer.healthday.com/cancer-information-5/chemotherapy-news-122/could-cancer-be-a-hidden-danger-to-the-heart-703662.htmlCopyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.