米国の低所得者向け公的保険であるメディケイドに加入するC型肝炎患者のうち約46%は、最新の薬剤による治療を拒否されていることが新たな研究で明らかにされ、米国肝臓病学会(AASLD)年次集会で発表された。ソホスブビル(商品名:ソバルディ)、レジパスビル(ハーボニー)などの直接作用型抗ウイルス薬(DAA)により、C型肝炎の9割が治癒することが明らかにされているが、米国では本治療に1人あたり9万ドル(約1,100万円)もの費用がかかるため、州のメディケイドプログラムはこの薬剤の使用に厳格な要件を設けているという。 発表を行った米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院(フィラデルフィア)助教授のVincent Lo Re III氏らは、DAAの利用状況を調べるため、米国北東部の4州で提出された処方箋を分析。2014年11月から2015年4月までに、患者2,342人のうち計377人(16%)が処方を拒否されていた。内訳はメディケイドが233件、民間保険が104件、メディケアが40件で、メディケイドによる主な拒否理由は、「必要性を評価する情報が不十分」(48%)、「医学的必要性がない」(31%)、アルコール・薬物スクリーニング陽性(4%)などであった。. しかし、このような厳しい方針は長期的にみれば損失となる可能性がある。「JAMA Internal Medicine」オンライン版に11月23日掲載された別の研究によると、重症度にかかわらず、C型肝炎患者にもれなくDAAによる治療を実施すれば、生涯医療支出を33億ドル節約できる可能性があるという。「すべての患者を直ちに治療するほうがコスト効率は高い」と、この研究を行った米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)教授のJames Kahn 氏は話している。. 米国肝臓財団のTom Nealon氏は、高額な薬剤の利用を厳しく制御すれば短期的にはコストを削減できるが、長期的にはメディケイドの支出がさらに増える結果になる可能性が高いと指摘する。JAMA掲載の研究によれば、現在の薬剤価格ではC型肝炎患者の半数を全員治療すると5年間で約530億ドルの費用がかかるのに対し、疾患の進行した患者のみを治療すれば300億ドルで済む。しかし、多くの患者がいずれはDAAを使用することになるため、早期に治療するほうが保険会社は余分な支出を避けることができるという。. 米メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は先ごろ、メディケイド加入者への処方制限を見直すようすべての州に警告書を送付するとともに、製薬企業に対しても薬剤の費用について質問する文書を別途送付している。. なお、学会発表された研究は一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2015年11月24日). http://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/hepatitis-news-373/almost-half-of-medicaid-patients-who-need-pricey-hepatitis-c-drugs-are-denied-study-705552.html Copyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.
米国の低所得者向け公的保険であるメディケイドに加入するC型肝炎患者のうち約46%は、最新の薬剤による治療を拒否されていることが新たな研究で明らかにされ、米国肝臓病学会(AASLD)年次集会で発表された。ソホスブビル(商品名:ソバルディ)、レジパスビル(ハーボニー)などの直接作用型抗ウイルス薬(DAA)により、C型肝炎の9割が治癒することが明らかにされているが、米国では本治療に1人あたり9万ドル(約1,100万円)もの費用がかかるため、州のメディケイドプログラムはこの薬剤の使用に厳格な要件を設けているという。 発表を行った米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院(フィラデルフィア)助教授のVincent Lo Re III氏らは、DAAの利用状況を調べるため、米国北東部の4州で提出された処方箋を分析。2014年11月から2015年4月までに、患者2,342人のうち計377人(16%)が処方を拒否されていた。内訳はメディケイドが233件、民間保険が104件、メディケアが40件で、メディケイドによる主な拒否理由は、「必要性を評価する情報が不十分」(48%)、「医学的必要性がない」(31%)、アルコール・薬物スクリーニング陽性(4%)などであった。. しかし、このような厳しい方針は長期的にみれば損失となる可能性がある。「JAMA Internal Medicine」オンライン版に11月23日掲載された別の研究によると、重症度にかかわらず、C型肝炎患者にもれなくDAAによる治療を実施すれば、生涯医療支出を33億ドル節約できる可能性があるという。「すべての患者を直ちに治療するほうがコスト効率は高い」と、この研究を行った米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)教授のJames Kahn 氏は話している。. 米国肝臓財団のTom Nealon氏は、高額な薬剤の利用を厳しく制御すれば短期的にはコストを削減できるが、長期的にはメディケイドの支出がさらに増える結果になる可能性が高いと指摘する。JAMA掲載の研究によれば、現在の薬剤価格ではC型肝炎患者の半数を全員治療すると5年間で約530億ドルの費用がかかるのに対し、疾患の進行した患者のみを治療すれば300億ドルで済む。しかし、多くの患者がいずれはDAAを使用することになるため、早期に治療するほうが保険会社は余分な支出を避けることができるという。. 米メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は先ごろ、メディケイド加入者への処方制限を見直すようすべての州に警告書を送付するとともに、製薬企業に対しても薬剤の費用について質問する文書を別途送付している。. なお、学会発表された研究は一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2015年11月24日). http://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/hepatitis-news-373/almost-half-of-medicaid-patients-who-need-pricey-hepatitis-c-drugs-are-denied-study-705552.html Copyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.