高齢者が車の運転を止めると、精神面・身体面の健康状態が低下する可能性があることが、新たな研究で明らかにされた。運転を止めることが健康問題の直接的な原因となるのかは明らかになっていないが、身体の衰えが運転中止につながり、それがさらに衰えを加速させるという悪循環が生じる可能性が高いと、研究グループは述べている。. 「これは複雑な問題だ」と、米コロンビア大学医療センター(ニューヨーク市)のGuohua Li氏は話す。安全のためには、多くの高齢者がいずれかの時点で運転を諦めなくてはならないが、一方でその決断は大きな影響をもたらす。運転を止めた高齢者は、社会的な孤立を感じて気分が落ち込んだり、運動量が低下して身体の健康状態が悪化したりすることがあるため、ケースバイケースで判断する必要があると同氏は指摘している。. 「Journal of the American Geriatrics Society」オンライン版に1月19日掲載された今回のレビューでは、運転を止めた高齢者と、続けている高齢者を比較した16件の研究に着目した。抑うつ症状に焦点を当てた5件の研究から、年齢や心身の健康状態などの因子を考慮しても、高齢者が運転を止めると抑うつが悪化する確率が2倍になることがわかった。別の研究では、運転を止めた後に身体機能の悪化や記憶力・知的能力の低下の加速が認められた。さらに、運転を止めた人は3~5年以内に死亡する確率も高かった。. 米国老化・老年問題研究連盟(AFAR)のMarian Betz氏は、「この知見から、高齢者が運転により得られる『多くの利益』と、交通安全のバランスをどのように取るべきかという重要な問題が浮き彫りにされる」と述べている。「高齢になると運転を妨げるさまざまな症状が出てくるのは事実だが、必ずしもすぐに運転を止めなくても、夜間やラッシュ時の運転を避けるなどの制限を設けるという選択肢もある。首が動かないなどの身体的問題がある場合は、作業療法士による訓練も有用だ」と同氏は助言している。. 最終的には、運転を止めた高齢者の多くが、代わりに家族の車や他の交通機関を利用することになるが、「単に移動手段があるというだけでは十分ではない」とLi氏は話す。Betz氏は、「運転は社会生活と不可分であり、運転を止めた高齢者はアイデンティティの一部を喪失したように感じる可能性がある。社会的孤立も抑うつ症状に関連すると考えられるため、高齢者の地域社会への関わりを助けることが有用だ」と指摘する。Li氏もこれに同意し、運転を止めた後の移動手段と社会参加を維持するためのプログラムが強く求められると述べている。(HealthDay News 2016年2月3日) http://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/misc-aging-news-10/when-seniors-stop-driving-poorer-health-may-follow-707454.html Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
高齢者が車の運転を止めると、精神面・身体面の健康状態が低下する可能性があることが、新たな研究で明らかにされた。運転を止めることが健康問題の直接的な原因となるのかは明らかになっていないが、身体の衰えが運転中止につながり、それがさらに衰えを加速させるという悪循環が生じる可能性が高いと、研究グループは述べている。. 「これは複雑な問題だ」と、米コロンビア大学医療センター(ニューヨーク市)のGuohua Li氏は話す。安全のためには、多くの高齢者がいずれかの時点で運転を諦めなくてはならないが、一方でその決断は大きな影響をもたらす。運転を止めた高齢者は、社会的な孤立を感じて気分が落ち込んだり、運動量が低下して身体の健康状態が悪化したりすることがあるため、ケースバイケースで判断する必要があると同氏は指摘している。. 「Journal of the American Geriatrics Society」オンライン版に1月19日掲載された今回のレビューでは、運転を止めた高齢者と、続けている高齢者を比較した16件の研究に着目した。抑うつ症状に焦点を当てた5件の研究から、年齢や心身の健康状態などの因子を考慮しても、高齢者が運転を止めると抑うつが悪化する確率が2倍になることがわかった。別の研究では、運転を止めた後に身体機能の悪化や記憶力・知的能力の低下の加速が認められた。さらに、運転を止めた人は3~5年以内に死亡する確率も高かった。. 米国老化・老年問題研究連盟(AFAR)のMarian Betz氏は、「この知見から、高齢者が運転により得られる『多くの利益』と、交通安全のバランスをどのように取るべきかという重要な問題が浮き彫りにされる」と述べている。「高齢になると運転を妨げるさまざまな症状が出てくるのは事実だが、必ずしもすぐに運転を止めなくても、夜間やラッシュ時の運転を避けるなどの制限を設けるという選択肢もある。首が動かないなどの身体的問題がある場合は、作業療法士による訓練も有用だ」と同氏は助言している。. 最終的には、運転を止めた高齢者の多くが、代わりに家族の車や他の交通機関を利用することになるが、「単に移動手段があるというだけでは十分ではない」とLi氏は話す。Betz氏は、「運転は社会生活と不可分であり、運転を止めた高齢者はアイデンティティの一部を喪失したように感じる可能性がある。社会的孤立も抑うつ症状に関連すると考えられるため、高齢者の地域社会への関わりを助けることが有用だ」と指摘する。Li氏もこれに同意し、運転を止めた後の移動手段と社会参加を維持するためのプログラムが強く求められると述べている。(HealthDay News 2016年2月3日) http://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/misc-aging-news-10/when-seniors-stop-driving-poorer-health-may-follow-707454.html Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.