食事から過剰な脂肪を摂取すると、動脈壁への好中球接着が亢進して血管炎症が惹起され、動脈硬化症の発症につながることが、東京医科歯科大学大学院血管代謝探索学分野の大坂端子氏と吉田雅幸氏らの研究グループによる検討でわかった。好中球の活性化は、「C5a」と呼ばれる補体分子が関与することも突き止めており、動脈硬化症の新たな治療標的になるものと期待される。詳細は、「Scientific Reports」オンライン版に2月19日掲載された。 過剰な高脂肪食の摂取は、動脈硬化症や肥満、メタボリックシンドロームの発症に関連するとされるが、これらの関連性についてはエビデンスが少なく、食事由来の脂肪摂取が血管炎症を引き起こす機序は明らかにされていない。. 同氏らの研究グループは、生体内蛍光顕微鏡システムを開発し、動脈硬化症モデル動物の大腿動脈といった大血管で白血球接着が亢進することを既に見いだしている。今回、同氏らは、野生型の正常マウスに高脂肪食または通常食を8週間摂取させ、この生体内観察システムを用いて大腿動脈を観察した。その結果、高脂肪食を摂取したマウスでは、動脈硬化症モデルマウスにみられるような白血球接着が、摂取開始2週間後から徐々に亢進していることがわかった。. 同氏らが、高脂肪食または通常食を摂取したマウスの血液中の蛋白質を網羅的に解析して比較したところ、高脂肪食を摂取したマウスでは、好中球を活性化する補体成分のC5a分子が増加していた。. また、C5aによって活性化された好中球は、単球活性化因子であるMCP(単球走化性蛋白質)-1の産生を亢進し、血管炎症を惹起することも判明した。同氏らによると、補体の作用には病原菌排除や貪食能の促進作用などが知られているが、高脂肪食や動脈硬化症との関連については明らかにされていなかったという。さらに、C5a受容体拮抗薬をマウスに投与すると、マウスの大血管で白血球接着が阻害され、MCP-1上昇も抑制されていた。. 吉田氏はHealthDayの取材に応じ、「今回の知見を、脂肪を摂取しても動脈硬化症が起こらない新たな生活習慣病予防薬の開発や動脈硬化症の早期診断マーカーの確立につなげたい」とコメントしている。(HealthDay News 2016年2月29日). Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
食事から過剰な脂肪を摂取すると、動脈壁への好中球接着が亢進して血管炎症が惹起され、動脈硬化症の発症につながることが、東京医科歯科大学大学院血管代謝探索学分野の大坂端子氏と吉田雅幸氏らの研究グループによる検討でわかった。好中球の活性化は、「C5a」と呼ばれる補体分子が関与することも突き止めており、動脈硬化症の新たな治療標的になるものと期待される。詳細は、「Scientific Reports」オンライン版に2月19日掲載された。 過剰な高脂肪食の摂取は、動脈硬化症や肥満、メタボリックシンドロームの発症に関連するとされるが、これらの関連性についてはエビデンスが少なく、食事由来の脂肪摂取が血管炎症を引き起こす機序は明らかにされていない。. 同氏らの研究グループは、生体内蛍光顕微鏡システムを開発し、動脈硬化症モデル動物の大腿動脈といった大血管で白血球接着が亢進することを既に見いだしている。今回、同氏らは、野生型の正常マウスに高脂肪食または通常食を8週間摂取させ、この生体内観察システムを用いて大腿動脈を観察した。その結果、高脂肪食を摂取したマウスでは、動脈硬化症モデルマウスにみられるような白血球接着が、摂取開始2週間後から徐々に亢進していることがわかった。. 同氏らが、高脂肪食または通常食を摂取したマウスの血液中の蛋白質を網羅的に解析して比較したところ、高脂肪食を摂取したマウスでは、好中球を活性化する補体成分のC5a分子が増加していた。. また、C5aによって活性化された好中球は、単球活性化因子であるMCP(単球走化性蛋白質)-1の産生を亢進し、血管炎症を惹起することも判明した。同氏らによると、補体の作用には病原菌排除や貪食能の促進作用などが知られているが、高脂肪食や動脈硬化症との関連については明らかにされていなかったという。さらに、C5a受容体拮抗薬をマウスに投与すると、マウスの大血管で白血球接着が阻害され、MCP-1上昇も抑制されていた。. 吉田氏はHealthDayの取材に応じ、「今回の知見を、脂肪を摂取しても動脈硬化症が起こらない新たな生活習慣病予防薬の開発や動脈硬化症の早期診断マーカーの確立につなげたい」とコメントしている。(HealthDay News 2016年2月29日). Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.