糖尿病治療薬のメトホルミンを服用すると、大腸腺腫切除後に、がん化するリスクが高い腺腫の新規発症および再発率が抑制されるとの研究結果を、横浜市立大学肝胆膵消化器病学の中島淳氏らが報告した。安価な既存薬による大腸がんの「化学予防」の実現につながるものと期待される。詳細は、「Lancet Oncology」オンライン版に3月2日掲載された。. がん撲滅は世界中で喫緊の課題とされている。なかでも大腸がんは、生活習慣の欧米化を背景にわが国でも患者数が急増しており、新たな対策が求められている。. 中島氏らは、がんの究極な対策は予防にあるとし、薬剤を用いた「化学予防」に着目。これまで、糖尿病治療薬のメトホルミンによる大腸がん抑制効果を示唆する数多くの研究が報告されているものの、基礎研究レベルの結果にとどまっていたことから、今回、大腸ポリープ切除術を施行した患者を対象に、術後のメトホルミン投与の有効性と安全性を検討するランダム化プラセボ対照二重盲検デザインの比較試験を実施した。. 対象は、大腸腺腫またはポリープを内視鏡で切除した非糖尿病患者151人。対象患者をメトホルミン250mg/日を服用する群(79人)とプラセボを服用する群(72人)の2群にランダムに割り付けた。服薬開始から1年後に内視鏡検査を実施し、大腸前がん病変である腺腫またはポリープの新規発症率、再発率を比較検討した。. その結果、服薬開始から1年後の腺腫の新規発症および再発率は、プラセボ群に比べてメトホルミン群で約40%有意に低下していた(30.6%対51.6%、リスク比0.60、95%信頼区間0.39~0.92、P=0.016)。大腸ポリープの新規発症および再発率も同様に、プラセボ群に比べてメトホルミン群で約33%低いことがわかった(38.0%対56.5%、同0.67、0.47~0.97)。なお、メトホルミンの服用による重篤な有害事象は認められなかった。. 同氏らは「大腸腺腫やがんを切除後もがんリスクは高いとされており、メトホルミンの服用が大腸がんリスクの低減につながると考えられる」と述べている。また、同氏はHealthDayの取材に応じ、メトホルミンは化学予防薬の4つの必須条件(副作用が少ない、作用機序が明らか、服用しやすい、安価)を満たしていることから、「心筋梗塞や脳梗塞の予防にアスピリンが使われているように、がんの予防にも、ハイリスク患者には薬剤による予防介入が実用化されるのもそう遠くないと考えている」と期待を示している。(HealthDay News 2016年3月14日). Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
糖尿病治療薬のメトホルミンを服用すると、大腸腺腫切除後に、がん化するリスクが高い腺腫の新規発症および再発率が抑制されるとの研究結果を、横浜市立大学肝胆膵消化器病学の中島淳氏らが報告した。安価な既存薬による大腸がんの「化学予防」の実現につながるものと期待される。詳細は、「Lancet Oncology」オンライン版に3月2日掲載された。. がん撲滅は世界中で喫緊の課題とされている。なかでも大腸がんは、生活習慣の欧米化を背景にわが国でも患者数が急増しており、新たな対策が求められている。. 中島氏らは、がんの究極な対策は予防にあるとし、薬剤を用いた「化学予防」に着目。これまで、糖尿病治療薬のメトホルミンによる大腸がん抑制効果を示唆する数多くの研究が報告されているものの、基礎研究レベルの結果にとどまっていたことから、今回、大腸ポリープ切除術を施行した患者を対象に、術後のメトホルミン投与の有効性と安全性を検討するランダム化プラセボ対照二重盲検デザインの比較試験を実施した。. 対象は、大腸腺腫またはポリープを内視鏡で切除した非糖尿病患者151人。対象患者をメトホルミン250mg/日を服用する群(79人)とプラセボを服用する群(72人)の2群にランダムに割り付けた。服薬開始から1年後に内視鏡検査を実施し、大腸前がん病変である腺腫またはポリープの新規発症率、再発率を比較検討した。. その結果、服薬開始から1年後の腺腫の新規発症および再発率は、プラセボ群に比べてメトホルミン群で約40%有意に低下していた(30.6%対51.6%、リスク比0.60、95%信頼区間0.39~0.92、P=0.016)。大腸ポリープの新規発症および再発率も同様に、プラセボ群に比べてメトホルミン群で約33%低いことがわかった(38.0%対56.5%、同0.67、0.47~0.97)。なお、メトホルミンの服用による重篤な有害事象は認められなかった。. 同氏らは「大腸腺腫やがんを切除後もがんリスクは高いとされており、メトホルミンの服用が大腸がんリスクの低減につながると考えられる」と述べている。また、同氏はHealthDayの取材に応じ、メトホルミンは化学予防薬の4つの必須条件(副作用が少ない、作用機序が明らか、服用しやすい、安価)を満たしていることから、「心筋梗塞や脳梗塞の予防にアスピリンが使われているように、がんの予防にも、ハイリスク患者には薬剤による予防介入が実用化されるのもそう遠くないと考えている」と期待を示している。(HealthDay News 2016年3月14日). Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.