徳島大学大学院循環器内科学の福田大受氏と佐田政隆氏らの研究グループは、肥満により肥大、変性した脂肪細胞から放出されるDNA断片が、脂肪細胞の慢性炎症やインスリン抵抗性を引き起こす機序を解明したと発表した。この遊離DNA断片が、Toll様受容体9(TLR9)を介してマクロファージを活性化し、慢性炎症を促進するという。肥満がインスリン抵抗性につながる機序のひとつを明らかにした今回の知見は、糖尿病などの生活習慣病の新たな予防・治療法の開発につながるものと期待される。詳細は「Science Advances」3月25日オンライン版に掲載された。 脂肪細胞に脂肪が蓄積して肥大化すると、脂肪細胞からTNF-αや脂肪酸などの各種サイトカインの分泌が亢進し、慢性炎症を惹起し、インスリン抵抗性の発症につながると考えられているが、その機序は明らかではない。. 佐田氏らの研究グループは、今回、肥大化した脂肪細胞が一定の大きさに達すると、脂肪細胞は変成し、細胞死に至る点に着目し、肥大化した成熟脂肪細胞の細胞死と脂肪組織の慢性炎症との関連性を、マウスを用いて検討した。. 同氏らは、まず、高脂肪食で肥満させた野生型マウスでは、普通食で飼育した非肥満のマウスに比べて、脂肪細胞の肥大や変性に関連した血液中の遊離DNA断片の濃度が高く、この血中濃度は内臓脂肪量や血糖値などと相関することを見いだした。. 次に、同氏らは、変性した脂肪細胞から放出される遊離DNA断片が、TLR9によって認識され、脂肪組織内のマクロファージを活性化し、炎症を促進することを見いだした。電子顕微鏡下の観察で、肥満マウスの脂肪組織内のマクロファージが、変性脂肪細胞から遊離したDNA断片を貪食している様子が観察された。. さらに、TLR9欠損マウスを高脂肪食で飼育したところ、同条件下で飼育した野生型マウスに比べて、脂肪組織内のマクロファージの蓄積や炎症性サイトカインの発現が減少し、インスリン感受性が改善していることがわかった。肥満の野生型マウスにTLR9阻害薬を投与したところ、脂肪組織の炎症が軽減し、インスリン抵抗性も改善したという。同氏らは、ヒトにおいても同様に、内臓脂肪肥満者では、非肥満者に比べてDNA断片の血中濃度が有意に高く、この濃度はHOMA-IRと関連していたことを確認している。(HealthDay News 2016年4月4日). Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
徳島大学大学院循環器内科学の福田大受氏と佐田政隆氏らの研究グループは、肥満により肥大、変性した脂肪細胞から放出されるDNA断片が、脂肪細胞の慢性炎症やインスリン抵抗性を引き起こす機序を解明したと発表した。この遊離DNA断片が、Toll様受容体9(TLR9)を介してマクロファージを活性化し、慢性炎症を促進するという。肥満がインスリン抵抗性につながる機序のひとつを明らかにした今回の知見は、糖尿病などの生活習慣病の新たな予防・治療法の開発につながるものと期待される。詳細は「Science Advances」3月25日オンライン版に掲載された。 脂肪細胞に脂肪が蓄積して肥大化すると、脂肪細胞からTNF-αや脂肪酸などの各種サイトカインの分泌が亢進し、慢性炎症を惹起し、インスリン抵抗性の発症につながると考えられているが、その機序は明らかではない。. 佐田氏らの研究グループは、今回、肥大化した脂肪細胞が一定の大きさに達すると、脂肪細胞は変成し、細胞死に至る点に着目し、肥大化した成熟脂肪細胞の細胞死と脂肪組織の慢性炎症との関連性を、マウスを用いて検討した。. 同氏らは、まず、高脂肪食で肥満させた野生型マウスでは、普通食で飼育した非肥満のマウスに比べて、脂肪細胞の肥大や変性に関連した血液中の遊離DNA断片の濃度が高く、この血中濃度は内臓脂肪量や血糖値などと相関することを見いだした。. 次に、同氏らは、変性した脂肪細胞から放出される遊離DNA断片が、TLR9によって認識され、脂肪組織内のマクロファージを活性化し、炎症を促進することを見いだした。電子顕微鏡下の観察で、肥満マウスの脂肪組織内のマクロファージが、変性脂肪細胞から遊離したDNA断片を貪食している様子が観察された。. さらに、TLR9欠損マウスを高脂肪食で飼育したところ、同条件下で飼育した野生型マウスに比べて、脂肪組織内のマクロファージの蓄積や炎症性サイトカインの発現が減少し、インスリン感受性が改善していることがわかった。肥満の野生型マウスにTLR9阻害薬を投与したところ、脂肪組織の炎症が軽減し、インスリン抵抗性も改善したという。同氏らは、ヒトにおいても同様に、内臓脂肪肥満者では、非肥満者に比べてDNA断片の血中濃度が有意に高く、この濃度はHOMA-IRと関連していたことを確認している。(HealthDay News 2016年4月4日). Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.