内臓脂肪の蓄積以外の動脈硬化リスク因子をもたない腹部肥満は、日本人男性では慢性腎臓病(CKD)の有病リスク上昇と関連するが、女性ではこうした関連はみられないことが、金沢医科大学衛生学の櫻井勝氏らの検討でわかった。高血圧や脂質異常症、糖尿病をもたず、腹部肥満単独でも、男性ではCKDリスクが高まる可能性があるという。詳細は「Journal of Epidemiology」オンライン版に4月16日掲載された。 肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病などのメタボリックシンドロームのリスク因子はCKDの進行に悪影響を及ぼし、これらの関連性には性差がみられることが報告されているが、肥満度が比較的低いアジア人種を対象とした研究は数限られていた。そこで、同氏らは、日本人の男女を対象に、腹部肥満および代謝異常症とCKD有病率との関連を検討する大規模な横断観察研究を行った。. 対象は、2008年に金沢市で定期健康診断を受けた40~75歳の一般住民2万4,067人(男性8,133人、女性1万5,934人)。平均年齢は男性67.1歳、女性64.7歳、平均BMIはそれぞれ23.4、22.5だった。. 腹部肥満(ウエスト周囲長が男性85cm、女性90cm超)、高血圧、脂質異常症、高血糖は、日本のメタボリックシンドローム診断基準に準じて判断した。また、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出にはModification of Diet in Renal Disease(MDRD)推算式の修正版を使用し、eGFR値が60mL/分/1.73m2未満かつ/または蛋白尿を呈する場合をCKDと診断した。. その結果、CKD基準を満たした人の割合は、男性で約23%、女性では約14%であった。腹部肥満と高血圧、脂質異常症、高血糖はそれぞれ、男女ともにeGFR低値(60mL/分/1.73m2未満)、蛋白尿、CKDリスクと関連していた。. また、男女ともに、腹部肥満の有無にかかわらず、高血圧などのリスク因子の併存数が増えるに伴いCKD有病率が上昇していた。一方で、これらのリスク因子をもたない腹部肥満者におけるCKDリスクには性差がみられ、男性では、腹部肥満単独でもCKDリスクを有意に上昇させたのに対し、女性では腹部肥満単独でのCKDリスクの上昇はみられなかった。女性の腹部肥満の基準をウエスト周囲長80cm以上、BMIを25以上としても同様の結果が得られた。. 同氏はHealthDayの取材に応じ、今回の知見について、「内臓脂肪蓄積はCKDのリスクのひとつと考えられているが,皮下脂肪の多い女性では,腹部肥満や過体重が内臓脂肪蓄積を十分反映していない可能性がある。性差や代謝異常の合併を考慮した肥満の評価が重要であろう」とコメントしている。(HealthDay News 2016年5月16日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
内臓脂肪の蓄積以外の動脈硬化リスク因子をもたない腹部肥満は、日本人男性では慢性腎臓病(CKD)の有病リスク上昇と関連するが、女性ではこうした関連はみられないことが、金沢医科大学衛生学の櫻井勝氏らの検討でわかった。高血圧や脂質異常症、糖尿病をもたず、腹部肥満単独でも、男性ではCKDリスクが高まる可能性があるという。詳細は「Journal of Epidemiology」オンライン版に4月16日掲載された。 肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病などのメタボリックシンドロームのリスク因子はCKDの進行に悪影響を及ぼし、これらの関連性には性差がみられることが報告されているが、肥満度が比較的低いアジア人種を対象とした研究は数限られていた。そこで、同氏らは、日本人の男女を対象に、腹部肥満および代謝異常症とCKD有病率との関連を検討する大規模な横断観察研究を行った。. 対象は、2008年に金沢市で定期健康診断を受けた40~75歳の一般住民2万4,067人(男性8,133人、女性1万5,934人)。平均年齢は男性67.1歳、女性64.7歳、平均BMIはそれぞれ23.4、22.5だった。. 腹部肥満(ウエスト周囲長が男性85cm、女性90cm超)、高血圧、脂質異常症、高血糖は、日本のメタボリックシンドローム診断基準に準じて判断した。また、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出にはModification of Diet in Renal Disease(MDRD)推算式の修正版を使用し、eGFR値が60mL/分/1.73m2未満かつ/または蛋白尿を呈する場合をCKDと診断した。. その結果、CKD基準を満たした人の割合は、男性で約23%、女性では約14%であった。腹部肥満と高血圧、脂質異常症、高血糖はそれぞれ、男女ともにeGFR低値(60mL/分/1.73m2未満)、蛋白尿、CKDリスクと関連していた。. また、男女ともに、腹部肥満の有無にかかわらず、高血圧などのリスク因子の併存数が増えるに伴いCKD有病率が上昇していた。一方で、これらのリスク因子をもたない腹部肥満者におけるCKDリスクには性差がみられ、男性では、腹部肥満単独でもCKDリスクを有意に上昇させたのに対し、女性では腹部肥満単独でのCKDリスクの上昇はみられなかった。女性の腹部肥満の基準をウエスト周囲長80cm以上、BMIを25以上としても同様の結果が得られた。. 同氏はHealthDayの取材に応じ、今回の知見について、「内臓脂肪蓄積はCKDのリスクのひとつと考えられているが,皮下脂肪の多い女性では,腹部肥満や過体重が内臓脂肪蓄積を十分反映していない可能性がある。性差や代謝異常の合併を考慮した肥満の評価が重要であろう」とコメントしている。(HealthDay News 2016年5月16日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.