ニューロテンシンという脂肪貯蔵ホルモンが、肥満になる確率に影響を及ぼす可能性が、マウスとヒトを対象に行った新たな研究で示された。「Nature」オンライン版に5月11日掲載の論文。血中のプロニューロテンシンが中年期に高値である人は、この値が低い人に比べて肥満を発症するリスクが2倍であった。研究を率いた米ケンタッキー大学医学部マーキーがんセンターのMark Evers氏は、「非肥満者でも、血中プロニューロテンシン値が高いと、加齢とともに肥満になるリスクが上昇していた」と述べている。.ニューロテンシンは、消化管と中枢神経系に発現するホルモンで、余分な脂肪の貯蔵に働く。同氏らの研究から、血中ニューロテンシン値が低いマウスは、高脂肪食を与えても脂肪吸収率が平均的なマウスに比べて低く、インスリン抵抗性の上昇などを引き起こさないことがわかったという。.「ニューロテンシンは節約型のホルモンだ。われわれの祖先は動物を仕留めたときにしか食べ物を口にすることができなかったため、進化の過程で脂肪を貯蔵するホルモンも必要とされた」と、同氏は説明している。なお、同氏らによるマウスとショウジョウバエを用いた研究では、ニューロテンシンは代謝調節の鍵となるAMPKという酵素の働きを阻害することも判明している。.ヒトにおける影響を検討するため、同氏らは、スウェーデンの観察研究に参加した4,600人強を対象に、血中プロニューロテンシン値を調べた。その結果、血中プロニューロテンシン値が高い人では、低い人に比べてBMI値が高く、ウエスト周囲長が大きく、さらに、将来肥満となるリスクは2倍であることがわかった。.これらの知見は、血中ニューロテンシンが、とくに脂肪量の多い食事を習慣的に摂取する人で、肥満の予測に有用となる可能性が示された。「この血中ニューロテンシンの働きを阻害する薬剤が開発されれば、肥満予防の新たな選択肢となりうるだろう」と、同氏は述べている。.米マウントサイナイ病院(ニューヨーク市)糖尿病・内分泌内科准教授のChristoph Buettner氏は、この知見から、ニューロテンシンが肥満や糖尿病の発症に重要な役割を担うホルモンのひとつである可能性があるとしつつも、今回の結果は予備的なものでさらなる研究を行う必要があるとしている。また、同氏は、ニューロテンシン阻害による減量効果にも確証はないと指摘している。.なお、Evers氏は、ニューロテンシンが乳がんや大腸がん、消化器がんなど複数のがんと関連していることから、肥満者がなぜがんになりやすいのかをニューロテンシンで説明できる可能性もあるとの考えを述べている。(HealthDay News 2016年5月11日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/obesity-health-news-505/does-fat-storing-hormone-cause-obesity-710900.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
ニューロテンシンという脂肪貯蔵ホルモンが、肥満になる確率に影響を及ぼす可能性が、マウスとヒトを対象に行った新たな研究で示された。「Nature」オンライン版に5月11日掲載の論文。血中のプロニューロテンシンが中年期に高値である人は、この値が低い人に比べて肥満を発症するリスクが2倍であった。研究を率いた米ケンタッキー大学医学部マーキーがんセンターのMark Evers氏は、「非肥満者でも、血中プロニューロテンシン値が高いと、加齢とともに肥満になるリスクが上昇していた」と述べている。.ニューロテンシンは、消化管と中枢神経系に発現するホルモンで、余分な脂肪の貯蔵に働く。同氏らの研究から、血中ニューロテンシン値が低いマウスは、高脂肪食を与えても脂肪吸収率が平均的なマウスに比べて低く、インスリン抵抗性の上昇などを引き起こさないことがわかったという。.「ニューロテンシンは節約型のホルモンだ。われわれの祖先は動物を仕留めたときにしか食べ物を口にすることができなかったため、進化の過程で脂肪を貯蔵するホルモンも必要とされた」と、同氏は説明している。なお、同氏らによるマウスとショウジョウバエを用いた研究では、ニューロテンシンは代謝調節の鍵となるAMPKという酵素の働きを阻害することも判明している。.ヒトにおける影響を検討するため、同氏らは、スウェーデンの観察研究に参加した4,600人強を対象に、血中プロニューロテンシン値を調べた。その結果、血中プロニューロテンシン値が高い人では、低い人に比べてBMI値が高く、ウエスト周囲長が大きく、さらに、将来肥満となるリスクは2倍であることがわかった。.これらの知見は、血中ニューロテンシンが、とくに脂肪量の多い食事を習慣的に摂取する人で、肥満の予測に有用となる可能性が示された。「この血中ニューロテンシンの働きを阻害する薬剤が開発されれば、肥満予防の新たな選択肢となりうるだろう」と、同氏は述べている。.米マウントサイナイ病院(ニューヨーク市)糖尿病・内分泌内科准教授のChristoph Buettner氏は、この知見から、ニューロテンシンが肥満や糖尿病の発症に重要な役割を担うホルモンのひとつである可能性があるとしつつも、今回の結果は予備的なものでさらなる研究を行う必要があるとしている。また、同氏は、ニューロテンシン阻害による減量効果にも確証はないと指摘している。.なお、Evers氏は、ニューロテンシンが乳がんや大腸がん、消化器がんなど複数のがんと関連していることから、肥満者がなぜがんになりやすいのかをニューロテンシンで説明できる可能性もあるとの考えを述べている。(HealthDay News 2016年5月11日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/obesity-health-news-505/does-fat-storing-hormone-cause-obesity-710900.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.