地震や火山噴火、集中豪雨など、日本各地を襲う大災害は後を絶たない。災害時には衛生状態が悪化し、感染症が流行を起こすリスクがある。とくに避難所での感染症コントロールは重要な課題だ。では、非常時にはどういった感染症対策が必要なのだろうか-。国立感染症研究所感染症疫学センター第2室の砂川富正氏によると、災害後に発生する感染症は、その地域や災害フェーズで異なるため、災害ごとにリスクの高い感染症をリストアップし、適切に備える必要があるという。「まずは発災直後から被災地域の感染症に関するリスク評価を行うことが重要だ」と、同氏は強調する。.ここで重要となるのが、「公衆衛生サーベイランス(発生動向調査)」だ。サーベイランスとは、必要なものを把握し、適切に配置するために、継続的に情報収集、分析、提供を行うもの。災害時には、調査のサイクルを絶やさず継続させるため、臨時のサーベイランスを立ち上げるなど災害フェーズに合わせた対応が必要となる。発災から数日間の超急性期には、「ある避難所で患者が多い」などの状況を把握する「問題探知サーベイランス」を、外部から支援が入る段階になったら、発熱や下痢などの発症者数を把握・報告する「症候群サーベイランス」を活用する。.同研究所では、避難所における、症状や症候群を対象としたサーベイランスや、法に基づく感染症発生動向調査データを用いて、被災地域や避難所の感染症リスクを評価する手法を導入。2011年3月の東日本大震災や2015年9月の関東・東北豪雨などで活用してきた。東日本大震災では、災害自体による感染症には破傷風や創傷関連感染症が、避難生活に関連するものにはインフルエンザやノロウイルスを高リスクと評価し、被災地の現場で対応するための参考情報とともに情報提供を行ったという。.今年4月に発生した「平成28年熊本地震」では、がれき撤去などに伴う受傷による破傷風や皮膚感染症、急性呼吸器感染症、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎/急性下痢症が高リスクと評価された(5月13日現在)。実際に、現場では消毒や掃除の徹底の呼びかけなど衛生環境を維持する対策が続けられている。.同氏によると、東日本大震災以降、医療者の間でサーベイランスや感染症リスク評価の重要性への認識が広がっており、熊本地震の被災地で、症候群をベースとしたサーベイランスをもとに、感染制御の担当者が現場で感染症のリスク評価を行い、対策に生かしている事例がみられている。今後はさらに、急性期以降に対応する専門家の育成や公衆衛生を軸にすえたシステム構築が必要になるとしている。(HealthDay News 2016年5月23日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
地震や火山噴火、集中豪雨など、日本各地を襲う大災害は後を絶たない。災害時には衛生状態が悪化し、感染症が流行を起こすリスクがある。とくに避難所での感染症コントロールは重要な課題だ。では、非常時にはどういった感染症対策が必要なのだろうか-。国立感染症研究所感染症疫学センター第2室の砂川富正氏によると、災害後に発生する感染症は、その地域や災害フェーズで異なるため、災害ごとにリスクの高い感染症をリストアップし、適切に備える必要があるという。「まずは発災直後から被災地域の感染症に関するリスク評価を行うことが重要だ」と、同氏は強調する。.ここで重要となるのが、「公衆衛生サーベイランス(発生動向調査)」だ。サーベイランスとは、必要なものを把握し、適切に配置するために、継続的に情報収集、分析、提供を行うもの。災害時には、調査のサイクルを絶やさず継続させるため、臨時のサーベイランスを立ち上げるなど災害フェーズに合わせた対応が必要となる。発災から数日間の超急性期には、「ある避難所で患者が多い」などの状況を把握する「問題探知サーベイランス」を、外部から支援が入る段階になったら、発熱や下痢などの発症者数を把握・報告する「症候群サーベイランス」を活用する。.同研究所では、避難所における、症状や症候群を対象としたサーベイランスや、法に基づく感染症発生動向調査データを用いて、被災地域や避難所の感染症リスクを評価する手法を導入。2011年3月の東日本大震災や2015年9月の関東・東北豪雨などで活用してきた。東日本大震災では、災害自体による感染症には破傷風や創傷関連感染症が、避難生活に関連するものにはインフルエンザやノロウイルスを高リスクと評価し、被災地の現場で対応するための参考情報とともに情報提供を行ったという。.今年4月に発生した「平成28年熊本地震」では、がれき撤去などに伴う受傷による破傷風や皮膚感染症、急性呼吸器感染症、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎/急性下痢症が高リスクと評価された(5月13日現在)。実際に、現場では消毒や掃除の徹底の呼びかけなど衛生環境を維持する対策が続けられている。.同氏によると、東日本大震災以降、医療者の間でサーベイランスや感染症リスク評価の重要性への認識が広がっており、熊本地震の被災地で、症候群をベースとしたサーベイランスをもとに、感染制御の担当者が現場で感染症のリスク評価を行い、対策に生かしている事例がみられている。今後はさらに、急性期以降に対応する専門家の育成や公衆衛生を軸にすえたシステム構築が必要になるとしている。(HealthDay News 2016年5月23日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.