患者自身の腫瘍から得られた遺伝的手がかりに基づく個別化(personalized)がん治療は、従来の化学療法よりも優れるようだとの示唆が、新たな研究レビューで示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のMaria Schwaederle氏が率いた今回の研究は、米シカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表される予定。学会発表されたデータおよび結論は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。.個別化医療は、精密医療(precision medicine)とも呼ばれる。米国立がん研究所(NCI)によると、これは腫瘍の増殖・拡大を可能にしている固有のDNA変異を標的とすることによって、がんの治療を目指すものだという。このアプローチに基づき開発された薬剤は、免疫系によるがん細胞の発見・破壊を助け、がん細胞の分裂を阻害し、腫瘍に栄養を供給する新たな血管を形成するシグナルを阻止し、あるいはがん細胞に自滅するよう命令するだろうと、NCIは説明する。.米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(ニューヨーク市)のDavid Hyman氏は、今回の研究は個別化医療の潜在的な力を示すものだと話す。標的治療の例としては、肺がん治療薬エルロチニブ(商品名:タルセバ)、メラノーマ治療薬ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)、乳がん治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)などが挙げられ、いずれも腫瘍の増殖を誘発するシグナルを阻害してがんを抑制する。.今回の研究では、2011~2013年に発表された346件の第I相試験を分析。全体で1万3,200人以上の患者が対象となり、腫瘍データを用いて患者を選定する個別化医療を受けた群は58群、その他の治療を受けた群は293群に及んだ。.腫瘍縮小率は、個別化医療群では約31%であったのに対し、がんと薬剤を個別に一致させていない群では約5%であった。無増悪生存期間は5.7カ月対2.9カ月とほぼ2倍であった。さらに、患者のDNAバイオマーカーに基づいた治療は、蛋白マーカーを利用した治療よりも優れることがわかった(42%対22.4%)。.「薬剤の標的となる変異をもつ患者を選択すれば、良好な奏効率がみられることは直感的にも極めて理解しやすい」とSchwaederle氏は話す。第I相試験は、薬剤が安全かどうかを判定するための初期段階の試験だが、今回の結果から、遺伝子情報を利用して患者と適切な薬剤を一致させるのは早いほどよいことが示されたとHyman氏は述べている。さらに、同チームがこれまでに実施した第II相および第III相試験の分析でも、個別化医療による転帰の向上が認められているという。(HealthDay News 2016年5月19日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/mis-cancer-news-102/precision-cancer-treatment-may-extend-lives-711123.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
患者自身の腫瘍から得られた遺伝的手がかりに基づく個別化(personalized)がん治療は、従来の化学療法よりも優れるようだとの示唆が、新たな研究レビューで示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のMaria Schwaederle氏が率いた今回の研究は、米シカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表される予定。学会発表されたデータおよび結論は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。.個別化医療は、精密医療(precision medicine)とも呼ばれる。米国立がん研究所(NCI)によると、これは腫瘍の増殖・拡大を可能にしている固有のDNA変異を標的とすることによって、がんの治療を目指すものだという。このアプローチに基づき開発された薬剤は、免疫系によるがん細胞の発見・破壊を助け、がん細胞の分裂を阻害し、腫瘍に栄養を供給する新たな血管を形成するシグナルを阻止し、あるいはがん細胞に自滅するよう命令するだろうと、NCIは説明する。.米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(ニューヨーク市)のDavid Hyman氏は、今回の研究は個別化医療の潜在的な力を示すものだと話す。標的治療の例としては、肺がん治療薬エルロチニブ(商品名:タルセバ)、メラノーマ治療薬ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)、乳がん治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)などが挙げられ、いずれも腫瘍の増殖を誘発するシグナルを阻害してがんを抑制する。.今回の研究では、2011~2013年に発表された346件の第I相試験を分析。全体で1万3,200人以上の患者が対象となり、腫瘍データを用いて患者を選定する個別化医療を受けた群は58群、その他の治療を受けた群は293群に及んだ。.腫瘍縮小率は、個別化医療群では約31%であったのに対し、がんと薬剤を個別に一致させていない群では約5%であった。無増悪生存期間は5.7カ月対2.9カ月とほぼ2倍であった。さらに、患者のDNAバイオマーカーに基づいた治療は、蛋白マーカーを利用した治療よりも優れることがわかった(42%対22.4%)。.「薬剤の標的となる変異をもつ患者を選択すれば、良好な奏効率がみられることは直感的にも極めて理解しやすい」とSchwaederle氏は話す。第I相試験は、薬剤が安全かどうかを判定するための初期段階の試験だが、今回の結果から、遺伝子情報を利用して患者と適切な薬剤を一致させるのは早いほどよいことが示されたとHyman氏は述べている。さらに、同チームがこれまでに実施した第II相および第III相試験の分析でも、個別化医療による転帰の向上が認められているという。(HealthDay News 2016年5月19日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/mis-cancer-news-102/precision-cancer-treatment-may-extend-lives-711123.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.