代謝コントロール不良の2型糖尿病患者では、男性に比べて女性でより腎機能が低下しやすく、とくに血糖値や脂質値の管理に注意が必要となることが、熊本大学大学院生命科学研究部薬物治療学分野の梶原彩文氏と猿渡淳二氏らの検討でわかった。詳細は「Journal of Diabetes Research」5月9日オンライン版に掲載された。糖尿病患者の大血管障害、細小血管障害の発症・進展には性差があることが注目を集めている。同氏らは、これまで女性の2型糖尿病患者では、男性患者に比べて糖尿病網膜症の発症リスクが高く、これには診断の遅れが関連することを既に報告している(Diabetes Res Clin Pract 2014; 103(3): e7-10)。今回、同氏らは、2型糖尿病患者の腎機能を縦断的に観察し、早期の腎機能障害やそのリスク因子に性差が存在するかどうかを検討した。.対象は、2002~2011年に糖尿病専門病院である陣内病院(熊本市)を受診した65歳未満の2型糖尿病患者344人(うち男性が247人)。平均追跡期間が8.1年の後ろ向き観察研究を行い、対象患者の推定糸球体濾過量(eGFR)の年間低下率を比較検討した。.初診時の対象者の平均年齢は50.8±9.1歳、糖尿病罹病期間は平均5.3±6.1年であり、eGFRは男性が95.1±21.7mL/分/1.73m2、女性が99.9±28.9mL/分/1.73m2であった(P=0.140)。初診時のHbA1cの値に性差は認められず(男性9.7±2.7%対9.8±2.4%、P=0.688)、網膜症の有病率と収縮期血圧(SBP)値、LDLコレステロール(LDL-C)値は、男性に比べて女性で有意に高かった。eGFRの年間低下率(平均値)は、女性が-3.5±2.7%/年、男性が-2.0±2.2%/年と、男女間で有意差がみられた(P<0.001)。.初診時の網膜症または蛋白尿は、男女ともに急激な腎機能低下と関連していたが、HbA1cとLDL-Cの値は女性のみでeGFR年間低下率と有意に関連することがわかった。また、eGFR年間低下率に対して、性別と糖尿病網膜症、蛋白尿、HbA1cまたはLDL-Cの値の間には、それぞれ有意な相互作用が認められた(P<0.05)。このことは、これらのリスク因子をもつ女性患者は、eGFR低下リスクがより高いことを示唆している。これらの結果は、傾向スコアマッチング法により初診時の特徴を一致させた男女それぞれ41人での解析でも裏づけられたという。(HealthDay News 2016年6月13日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
代謝コントロール不良の2型糖尿病患者では、男性に比べて女性でより腎機能が低下しやすく、とくに血糖値や脂質値の管理に注意が必要となることが、熊本大学大学院生命科学研究部薬物治療学分野の梶原彩文氏と猿渡淳二氏らの検討でわかった。詳細は「Journal of Diabetes Research」5月9日オンライン版に掲載された。糖尿病患者の大血管障害、細小血管障害の発症・進展には性差があることが注目を集めている。同氏らは、これまで女性の2型糖尿病患者では、男性患者に比べて糖尿病網膜症の発症リスクが高く、これには診断の遅れが関連することを既に報告している(Diabetes Res Clin Pract 2014; 103(3): e7-10)。今回、同氏らは、2型糖尿病患者の腎機能を縦断的に観察し、早期の腎機能障害やそのリスク因子に性差が存在するかどうかを検討した。.対象は、2002~2011年に糖尿病専門病院である陣内病院(熊本市)を受診した65歳未満の2型糖尿病患者344人(うち男性が247人)。平均追跡期間が8.1年の後ろ向き観察研究を行い、対象患者の推定糸球体濾過量(eGFR)の年間低下率を比較検討した。.初診時の対象者の平均年齢は50.8±9.1歳、糖尿病罹病期間は平均5.3±6.1年であり、eGFRは男性が95.1±21.7mL/分/1.73m2、女性が99.9±28.9mL/分/1.73m2であった(P=0.140)。初診時のHbA1cの値に性差は認められず(男性9.7±2.7%対9.8±2.4%、P=0.688)、網膜症の有病率と収縮期血圧(SBP)値、LDLコレステロール(LDL-C)値は、男性に比べて女性で有意に高かった。eGFRの年間低下率(平均値)は、女性が-3.5±2.7%/年、男性が-2.0±2.2%/年と、男女間で有意差がみられた(P<0.001)。.初診時の網膜症または蛋白尿は、男女ともに急激な腎機能低下と関連していたが、HbA1cとLDL-Cの値は女性のみでeGFR年間低下率と有意に関連することがわかった。また、eGFR年間低下率に対して、性別と糖尿病網膜症、蛋白尿、HbA1cまたはLDL-Cの値の間には、それぞれ有意な相互作用が認められた(P<0.05)。このことは、これらのリスク因子をもつ女性患者は、eGFR低下リスクがより高いことを示唆している。これらの結果は、傾向スコアマッチング法により初診時の特徴を一致させた男女それぞれ41人での解析でも裏づけられたという。(HealthDay News 2016年6月13日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.