がんの正確な診断や治療法の選択に際して、従来の生検に代わるものとして、血液を用いる「リキッド・バイオプシー(液体生検)」の有望性が示された。研究を率いた米カリフォルニア大学デービス校(UCD)総合がんセンターのPhilip Mack氏によると、リキッド・バイオプシーでは、腫瘍から血液中に流れ込んだDNAを分析する。同氏らは1万5,000人以上を対象として、Guardant360と呼ばれる新型の遺伝子スキャンを用いて患者の血液中のDNAを分析し、70種類のがん関連遺伝子における突然変異の有無を調べた。本研究はこの検査を開発したGuardant Health社による資金提供を受けて実施され、米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された。.腫瘍では新たな変異を獲得することで治療への抵抗性が生じる。そのため、この検査により特定の治療に対する抵抗性も検知でき、標的治療を用いる医師にとっても重要な情報が得られるという。今回の研究で特によくみられたがんの種類は、進行性肺がん(37%)、乳がん(14%)、大腸がん(10%)であった。.腫瘍から血液中にDNAが放出されることは数十年前から知られていたが、生検の代用となるかどうかが常に問題であったと、Mack氏は説明する。今回の研究で、血液中の腫瘍DNAから、腫瘍検体にもみられる発がん性の変異を極めて正確に検知できることが判明した。.患者398人を対象に、リキッド・バイオプシーでの遺伝子検査の結果を生検と比較したところ、94~100%の確率で組織検体と同じ変異が血液検体にも含まれていた。また、腫瘍が薬剤への耐性を獲得したときにみられる変化も検出できることがわかった。検査を受けた患者全体の63%超では、リキッド・バイオプシーにより、米国食品医薬品局(FDA)で承認もしくは臨床試験で効果が確認されている薬剤から利用しうる治療選択肢が見つかった。.リキッド・バイオプシーの費用は従来の生検と同程度になると予想されているが、現時点では、がんの初期診断には依然として組織生検と病理診断が必要だという。Mack氏は、「熟練した病理医は組織内の細胞の外見や挙動からほとんどの腫瘍の種類がわかる。たとえば、肝臓から採取した病変が実は肺がんだったと見分けることもある」と説明する一方、リキッド・バイオプシーの真価は、がんの進行を経時的に監視する際に発揮されるとの見解を示している。.別の専門家らは、特定の患者では診断においてもリキッド・バイオプシーが有効な代替手段になりうると指摘し、例として外科的処置に適さない高齢者や健康状態の悪い患者、がんが脳や骨に転移した患者、出血リスクの高い患者などを挙げている。また、今回の研究では遺伝子に基づくがん治療に焦点を当てているが、がん免疫療法の効果を予測する検査も開発できる可能性があるという。(HealthDay News 2016年6月4日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/mis-cancer-news-102/liquid-biopsy-may-help-doctors-track-changes-in-tumors-711659.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
がんの正確な診断や治療法の選択に際して、従来の生検に代わるものとして、血液を用いる「リキッド・バイオプシー(液体生検)」の有望性が示された。研究を率いた米カリフォルニア大学デービス校(UCD)総合がんセンターのPhilip Mack氏によると、リキッド・バイオプシーでは、腫瘍から血液中に流れ込んだDNAを分析する。同氏らは1万5,000人以上を対象として、Guardant360と呼ばれる新型の遺伝子スキャンを用いて患者の血液中のDNAを分析し、70種類のがん関連遺伝子における突然変異の有無を調べた。本研究はこの検査を開発したGuardant Health社による資金提供を受けて実施され、米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された。.腫瘍では新たな変異を獲得することで治療への抵抗性が生じる。そのため、この検査により特定の治療に対する抵抗性も検知でき、標的治療を用いる医師にとっても重要な情報が得られるという。今回の研究で特によくみられたがんの種類は、進行性肺がん(37%)、乳がん(14%)、大腸がん(10%)であった。.腫瘍から血液中にDNAが放出されることは数十年前から知られていたが、生検の代用となるかどうかが常に問題であったと、Mack氏は説明する。今回の研究で、血液中の腫瘍DNAから、腫瘍検体にもみられる発がん性の変異を極めて正確に検知できることが判明した。.患者398人を対象に、リキッド・バイオプシーでの遺伝子検査の結果を生検と比較したところ、94~100%の確率で組織検体と同じ変異が血液検体にも含まれていた。また、腫瘍が薬剤への耐性を獲得したときにみられる変化も検出できることがわかった。検査を受けた患者全体の63%超では、リキッド・バイオプシーにより、米国食品医薬品局(FDA)で承認もしくは臨床試験で効果が確認されている薬剤から利用しうる治療選択肢が見つかった。.リキッド・バイオプシーの費用は従来の生検と同程度になると予想されているが、現時点では、がんの初期診断には依然として組織生検と病理診断が必要だという。Mack氏は、「熟練した病理医は組織内の細胞の外見や挙動からほとんどの腫瘍の種類がわかる。たとえば、肝臓から採取した病変が実は肺がんだったと見分けることもある」と説明する一方、リキッド・バイオプシーの真価は、がんの進行を経時的に監視する際に発揮されるとの見解を示している。.別の専門家らは、特定の患者では診断においてもリキッド・バイオプシーが有効な代替手段になりうると指摘し、例として外科的処置に適さない高齢者や健康状態の悪い患者、がんが脳や骨に転移した患者、出血リスクの高い患者などを挙げている。また、今回の研究では遺伝子に基づくがん治療に焦点を当てているが、がん免疫療法の効果を予測する検査も開発できる可能性があるという。(HealthDay News 2016年6月4日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/mis-cancer-news-102/liquid-biopsy-may-help-doctors-track-changes-in-tumors-711659.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.