2009年に米国医学研究所(IOM)が公表した妊娠前BMIとそれに応じた体重増加の推奨基準は、比較的「やせ」が多いとされる日本人の妊婦にも適応できることが、横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センターの榎本紀美子氏と青木茂氏らの検討でわかった。BMI値が上昇するほど妊娠合併症リスクが上昇するほか、妊娠中の体重増加が推奨範囲を外れると妊娠転帰が不良となることが明らかになった。詳細は「PLOS ONE」オンライン版に6月9日掲載された。 妊娠中の母親における体重増加の程度は、妊娠転帰に影響を及ぼすとされる。IOMは2009年、妊娠前BMIに応じた妊娠中の体重増加の推奨値を公表した。これによると、妊娠前BMIが18.5未満のUnderweight(やせ)の妊婦では12.5~18kgの体重増加が推奨され、Normalweight(適正体重;BMI 18.5~24.9)では11.5~16kg、Overweight(過体重;同25.0~29.9)では7~11.5kg、Obese(肥満;同30以上)では5~9kgの増加に抑えることとされている。. しかし、日本では妊娠前BMIのカテゴリーは18.5未満、18.5~25.0未満、25.0以上の3つとされている。また、日本ではやせの妊婦が比較的多く、妊娠前BMIに応じた妊娠中の体重増加の推奨値も提示されていないことから、今回、同氏らは、大規模な日本人妊婦コホートを対象に、IOM-BMI基準の妥当性を検証する後ろ向き観察研究を行った。. 対象は、2013年に、日本産科婦人科学会による周産期登録データベースに登録された、妊娠22週以降に出産した単胎妊娠の妊婦9万7,157人。対象者をIOM-BMI基準による妊娠前BMI値で4群に分け、さらに、妊娠中の体重増加がIOM推奨範囲の「過少増加」、「適正増加」、「超過」の3群に分けて妊娠転帰を比較検討した。対象者のうち約71%が適正体重で、やせが約18%、過体重が約7%、肥満が2.9%であった。. その結果、妊娠前BMIが上昇するに伴って、妊娠高血圧、妊娠糖尿病、過期産、帝王切開、産後出血や巨大児が有意に増加したが、胎児発育遅延(SGA)は有意に減少した。. また、妊娠前BMIで分類した4群はいずれも、妊娠中に推奨範囲を超えて体重が増加すると過期産や巨大児が増加し、体重増加が推奨範囲を満たさないとSGA、早産、早期破水、自然早産が増加しており、妊娠中の至適な体重増加が良好な妊娠転帰と関連していることがわかった。. 榎本氏はHealthDayの取材に応じ、今回の知見から「良好な妊娠分娩転帰のためには妊娠中の適正な体重増加が必要である」と述べ、なかでもBMI 30以上の肥満妊婦について、「BMI 30以上の肥満は妊娠中の体重コントロールでは妊娠分娩転帰の改善を図れないため、妊娠前体重の適正化が重要である」と付け加えている。(HealthDay News 2016年6月27日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
2009年に米国医学研究所(IOM)が公表した妊娠前BMIとそれに応じた体重増加の推奨基準は、比較的「やせ」が多いとされる日本人の妊婦にも適応できることが、横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センターの榎本紀美子氏と青木茂氏らの検討でわかった。BMI値が上昇するほど妊娠合併症リスクが上昇するほか、妊娠中の体重増加が推奨範囲を外れると妊娠転帰が不良となることが明らかになった。詳細は「PLOS ONE」オンライン版に6月9日掲載された。 妊娠中の母親における体重増加の程度は、妊娠転帰に影響を及ぼすとされる。IOMは2009年、妊娠前BMIに応じた妊娠中の体重増加の推奨値を公表した。これによると、妊娠前BMIが18.5未満のUnderweight(やせ)の妊婦では12.5~18kgの体重増加が推奨され、Normalweight(適正体重;BMI 18.5~24.9)では11.5~16kg、Overweight(過体重;同25.0~29.9)では7~11.5kg、Obese(肥満;同30以上)では5~9kgの増加に抑えることとされている。. しかし、日本では妊娠前BMIのカテゴリーは18.5未満、18.5~25.0未満、25.0以上の3つとされている。また、日本ではやせの妊婦が比較的多く、妊娠前BMIに応じた妊娠中の体重増加の推奨値も提示されていないことから、今回、同氏らは、大規模な日本人妊婦コホートを対象に、IOM-BMI基準の妥当性を検証する後ろ向き観察研究を行った。. 対象は、2013年に、日本産科婦人科学会による周産期登録データベースに登録された、妊娠22週以降に出産した単胎妊娠の妊婦9万7,157人。対象者をIOM-BMI基準による妊娠前BMI値で4群に分け、さらに、妊娠中の体重増加がIOM推奨範囲の「過少増加」、「適正増加」、「超過」の3群に分けて妊娠転帰を比較検討した。対象者のうち約71%が適正体重で、やせが約18%、過体重が約7%、肥満が2.9%であった。. その結果、妊娠前BMIが上昇するに伴って、妊娠高血圧、妊娠糖尿病、過期産、帝王切開、産後出血や巨大児が有意に増加したが、胎児発育遅延(SGA)は有意に減少した。. また、妊娠前BMIで分類した4群はいずれも、妊娠中に推奨範囲を超えて体重が増加すると過期産や巨大児が増加し、体重増加が推奨範囲を満たさないとSGA、早産、早期破水、自然早産が増加しており、妊娠中の至適な体重増加が良好な妊娠転帰と関連していることがわかった。. 榎本氏はHealthDayの取材に応じ、今回の知見から「良好な妊娠分娩転帰のためには妊娠中の適正な体重増加が必要である」と述べ、なかでもBMI 30以上の肥満妊婦について、「BMI 30以上の肥満は妊娠中の体重コントロールでは妊娠分娩転帰の改善を図れないため、妊娠前体重の適正化が重要である」と付け加えている。(HealthDay News 2016年6月27日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.