メチレンブルーという古くから利用されている薬剤が、短期記憶と注意力に関連する脳領域を活性化させる可能性があることが、小規模研究で示された。研究を実施した米テキサス大学健康科学センター(サンアントニオ)教授のTimothy Duong氏によると、メチレンブルーは1世紀以上にわたり使用されており、近年では、血液が身体組織に十分な酸素を送れなくなる疾患であるメトヘモグロビン血症の治療に利用されているほか、シアン化物や一酸化炭素による中毒症の治療にも用いられる。しかし同薬は、1970年代には既に動物やヒトの記憶力を向上させることも示唆されていた。.今回の研究では、健康成人13人にメチレンブルーを投与したところ、プラセボと比較して、記憶力検査の成績が向上した。さらに脳のMRI検査では、同薬が記憶および視覚・感覚情報に関与する脳構造を刺激することで効果を発揮することが判明した。.メチレンブルーは容易に入手でき、安価であるが、現時点ではまだ記憶力低下の予防や治療の目的で利用できる段階ではないとDuong氏は述べている。.米ワイルコーネル医科大学(ニューヨーク市)神経外科臨床助教授のEzriel Kornel氏(研究には参加していない)は、本研究に対し、同薬を繰り返し投与すると効果が減少するのかどうかが明らかにされていない点や、記憶力の正常な人のみを対象としており、記憶障害のある人が含まれていない点を指摘している。しかし、この知見は「魅力的」であると述べ、もっと大規模な長期研究でこの薬剤の可能性を深く掘り下げる必要があるとしている。.Duong氏によると、メチレンブルーは「抗酸化物質およびエネルギー増強剤」として作用するという。今回の研究では、22~62歳の健康な男女26人に、低用量のメチレンブルー錠剤またはプラセボ(有効成分を含まない錠剤)のいずれかを1回投与し、その前および1時間後に機能的MRIを実施した。メチレンブルー投与群では、知的作業の実施中に脳の活動亢進がみられ、情動反応、記憶力、視覚・感覚情報の処理能力に関連する脳領域に変化が認められた。また、記憶の「想起」に関連する検査の正答率が平均7%上昇した。.Duong氏らは現在、軽度認知障害のある患者を対象に含めて、同様の研究を進めているという。メチレンブルーは低用量では副作用は極めて少ないことが特徴であるが、広く使用されるようになれば新たな安全性の問題が浮上してくる可能性もあると、Kornel氏は述べている。この知見は「Radiology」オンライン版に6月28日掲載された。(HealthDay News 2016年6月28日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/memory-problems-health-news-468/old-drug-boosts-memory-centers-in-brain-712336.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
メチレンブルーという古くから利用されている薬剤が、短期記憶と注意力に関連する脳領域を活性化させる可能性があることが、小規模研究で示された。研究を実施した米テキサス大学健康科学センター(サンアントニオ)教授のTimothy Duong氏によると、メチレンブルーは1世紀以上にわたり使用されており、近年では、血液が身体組織に十分な酸素を送れなくなる疾患であるメトヘモグロビン血症の治療に利用されているほか、シアン化物や一酸化炭素による中毒症の治療にも用いられる。しかし同薬は、1970年代には既に動物やヒトの記憶力を向上させることも示唆されていた。.今回の研究では、健康成人13人にメチレンブルーを投与したところ、プラセボと比較して、記憶力検査の成績が向上した。さらに脳のMRI検査では、同薬が記憶および視覚・感覚情報に関与する脳構造を刺激することで効果を発揮することが判明した。.メチレンブルーは容易に入手でき、安価であるが、現時点ではまだ記憶力低下の予防や治療の目的で利用できる段階ではないとDuong氏は述べている。.米ワイルコーネル医科大学(ニューヨーク市)神経外科臨床助教授のEzriel Kornel氏(研究には参加していない)は、本研究に対し、同薬を繰り返し投与すると効果が減少するのかどうかが明らかにされていない点や、記憶力の正常な人のみを対象としており、記憶障害のある人が含まれていない点を指摘している。しかし、この知見は「魅力的」であると述べ、もっと大規模な長期研究でこの薬剤の可能性を深く掘り下げる必要があるとしている。.Duong氏によると、メチレンブルーは「抗酸化物質およびエネルギー増強剤」として作用するという。今回の研究では、22~62歳の健康な男女26人に、低用量のメチレンブルー錠剤またはプラセボ(有効成分を含まない錠剤)のいずれかを1回投与し、その前および1時間後に機能的MRIを実施した。メチレンブルー投与群では、知的作業の実施中に脳の活動亢進がみられ、情動反応、記憶力、視覚・感覚情報の処理能力に関連する脳領域に変化が認められた。また、記憶の「想起」に関連する検査の正答率が平均7%上昇した。.Duong氏らは現在、軽度認知障害のある患者を対象に含めて、同様の研究を進めているという。メチレンブルーは低用量では副作用は極めて少ないことが特徴であるが、広く使用されるようになれば新たな安全性の問題が浮上してくる可能性もあると、Kornel氏は述べている。この知見は「Radiology」オンライン版に6月28日掲載された。(HealthDay News 2016年6月28日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/memory-problems-health-news-468/old-drug-boosts-memory-centers-in-brain-712336.html.Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.