妊娠糖尿病の有病率には、ソーシャルキャピタルのなかでも「情緒的支援(emotional support)や近隣住民との信頼関係」が有意に関連することが、東北大学大学院医学系研究科環境遺伝医学総合研究センターの水野聖士氏らの研究グループによる検討でわかった。この研究は、『子どもの健康と環境に関する全国調査』(エコチル調査)のデータを用いたもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」オンライン版に8月9日掲載された。社会や地域との信頼関係や結びつきは「ソーシャルキャピタル」と呼ばれ、こうした信頼関係や社会的支援の充実によりうつ病や心血管疾患、糖尿病の有病率が低下することがこれまでの研究で示されている。しかし、ソーシャルキャピタルと妊娠糖尿病との関連は明らかにされていなかった。そこで同氏らは、エコチル調査のデータを用いて、これらの関連を検証する研究を行った。.同調査は、環境要因が子どもの健康、とくに胎児期から小児期にわたる化学物質曝露や生活環境が子どもの健康にどのような影響を及ぼすのかを検証することを目的とした出生コホート調査。2011年1月から3年間の登録期間中、全国15地域、10万組の妊婦とその子どもが調査に参加し、今回はこのうち8,874人の妊婦を対象に検討を行った。なお、妊娠糖尿病は日本糖尿病学会の診断基準を用いて判定した。ソーシャルキャピタルの質的・量的評価は、第2、第3三半期に行った9つの質問項目による自記式質問紙調査により行った。.主成分分析(PCA)を用いて、(1)ソーシャルキャピタルに関する9つの質問項目すべて、(2)情緒的支援および近隣住民との信頼関係(5項目)、(3)一般的信頼(generalized trust;2項目)のソーシャルキャピタルに関する3つの指標をつくり、検討した。.その結果、対象妊婦8,874人のうち204人(2.30%)が妊娠糖尿病を有していた。多変量ロジスティック回帰分析によると、家庭収入や妊娠前のBMI、妊娠中の喫煙習慣などのベースラインデータを補正後では、「情緒的支援および近隣住民との信頼関係」に関する5項目(愛情や優しさを表す人がいる、支援や相談できる人がいる、信頼できる人がいるなど)で構成される指標が妊娠糖尿病の有病率と有意に関連しており、近隣住民への信用度は低いが、高い情緒的支援を受けている妊婦では妊娠糖尿病リスクが有意に低いことがわかった(補正後オッズ比0.651、95%信頼区間0.429~0.987)。.研究グループは、情緒的支援が欠如し、慢性的なストレスがかかるとエストロゲンやプロゲステロン、コルチコステロンのほか、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が促され、インスリン抵抗性を増大させる可能性があるとしている。(HealthDay News 2016年9月20日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
妊娠糖尿病の有病率には、ソーシャルキャピタルのなかでも「情緒的支援(emotional support)や近隣住民との信頼関係」が有意に関連することが、東北大学大学院医学系研究科環境遺伝医学総合研究センターの水野聖士氏らの研究グループによる検討でわかった。この研究は、『子どもの健康と環境に関する全国調査』(エコチル調査)のデータを用いたもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」オンライン版に8月9日掲載された。社会や地域との信頼関係や結びつきは「ソーシャルキャピタル」と呼ばれ、こうした信頼関係や社会的支援の充実によりうつ病や心血管疾患、糖尿病の有病率が低下することがこれまでの研究で示されている。しかし、ソーシャルキャピタルと妊娠糖尿病との関連は明らかにされていなかった。そこで同氏らは、エコチル調査のデータを用いて、これらの関連を検証する研究を行った。.同調査は、環境要因が子どもの健康、とくに胎児期から小児期にわたる化学物質曝露や生活環境が子どもの健康にどのような影響を及ぼすのかを検証することを目的とした出生コホート調査。2011年1月から3年間の登録期間中、全国15地域、10万組の妊婦とその子どもが調査に参加し、今回はこのうち8,874人の妊婦を対象に検討を行った。なお、妊娠糖尿病は日本糖尿病学会の診断基準を用いて判定した。ソーシャルキャピタルの質的・量的評価は、第2、第3三半期に行った9つの質問項目による自記式質問紙調査により行った。.主成分分析(PCA)を用いて、(1)ソーシャルキャピタルに関する9つの質問項目すべて、(2)情緒的支援および近隣住民との信頼関係(5項目)、(3)一般的信頼(generalized trust;2項目)のソーシャルキャピタルに関する3つの指標をつくり、検討した。.その結果、対象妊婦8,874人のうち204人(2.30%)が妊娠糖尿病を有していた。多変量ロジスティック回帰分析によると、家庭収入や妊娠前のBMI、妊娠中の喫煙習慣などのベースラインデータを補正後では、「情緒的支援および近隣住民との信頼関係」に関する5項目(愛情や優しさを表す人がいる、支援や相談できる人がいる、信頼できる人がいるなど)で構成される指標が妊娠糖尿病の有病率と有意に関連しており、近隣住民への信用度は低いが、高い情緒的支援を受けている妊婦では妊娠糖尿病リスクが有意に低いことがわかった(補正後オッズ比0.651、95%信頼区間0.429~0.987)。.研究グループは、情緒的支援が欠如し、慢性的なストレスがかかるとエストロゲンやプロゲステロン、コルチコステロンのほか、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が促され、インスリン抵抗性を増大させる可能性があるとしている。(HealthDay News 2016年9月20日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.