日常生活における身体活動量や座位行動が、インスリン抵抗性や2型糖尿病発症のバイオマーカーとしても知られている分枝鎖アミノ酸(BCAA)やアラニン、プロリンなどの代謝物質の血中濃度と関連することが、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の深井航太氏と武林亨氏らの研究グループの検討でわかった。心血管疾患や糖尿病といった非感染性疾患(Non-Communicable Disease;NCD)の予防において、これらの代謝物質は重要な役割を担う可能性があるという。詳細は「PLOS ONE」オンライン版に10月14日掲載された。メタボローム解析による代謝産物群のプロファイリングが進み、身体活動などの生活習慣因子に関連する代謝物質(メタボライト)の変化などが把握され、生活習慣病のバイオマーカーとなりうる代謝変化が明らかにされつつある。.研究グループは今回、2012年に開始した鶴岡メタボロームコホート研究のベースラインデータを用いて、35~74歳の健康な成人男性1,193人を対象に、身体活動量と、近年、健康への悪影響が注目されている座位行動に着目し、これらに関連した代謝物質の変化を検討する住民ベースの観察研究を行った。.研究開始時点に、参加者から空腹時の血液サンプルを採取し、キャピラリー電気泳動-質量分析法(CE-MS)を用いたメタボローム解析によって、おもに極性を有する115種の代謝物質を定量した。これらの代謝物質と、質問票によって収集した日常的な身体活動量や座位時間との関連を統計学的に検討した。また、解析結果全体の再現性を確認するために、検証解析も実施している。.解析の結果、身体活動量と有意に代謝物質濃度が関連したのは13物質であった。これらの関連は、年齢、BMI、エネルギー摂取量、喫煙、飲酒習慣といった交絡因子を調整しても同様の傾向がみられ、検証解析でも再現された。さらに、座位時間に関しては7物質との関連がみられた。とくに、BCAAやBCAA関連代謝物である4-メチル-2-オキソペンタン酸、2-オキソイソ吉草酸、また、アラニン、プロリンについては身体活動量が多く、座位時間が短い、より"active"な群ほど血中濃度の低下が認められた。.研究グループによると、これらの代謝物質は、実験研究や疫学研究において、インスリン抵抗性や糖尿病などの生活習慣病の発症との関連が報告されていることから、身体活動量が及ぼす生体影響の理解の一助になるとともに、生活習慣病予防のターゲットとなりうる可能性を示すものだとしている。(HealthDay News 2016年10月31日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.