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中強度運動で2型糖尿病に伴う認知症が改善する可能性 ――海馬の乳酸代謝改善が鍵、筑波大の国際研究グループ(2016.12.19配信)

中強度の運動を習慣的に行うと、2型糖尿病に伴って低下した認知機能が改善することを、筑波大学体育系の征矢英昭氏らの国際研究グループが、ラットを用いた実験で突き止めた。運動によって2型糖尿病の海馬で低下していたグリコーゲン由来の乳酸輸送能が回復し、これによって認知機能の改善が得られるという。詳細は「Diabetologia」オンライン版に12月8日掲載された。

2型糖尿病に伴う認知機能低下の要因には、海馬の脳由来神経栄養因子(BDNF)濃度の低下や神経細胞の炎症などの関与が指摘されているが、脳の糖代謝異常に関する研究は進んでいない。研究グループは、既に健康なラットを用いた研究で、海馬のグリコーゲン代謝を高める中強度運動が認知機能の向上に有効であることを見いだしている。そこで今回、1)海馬におけるグリコーゲン由来の乳酸利用能の異常が2型糖尿病に合併する認知機能の低下に関与しているのか、さらに、2)運動介入で乳酸利用能の異常と認知機能低下を改善できるのかを、ラットを用いた実験で検証した。

研究グループは、まず、ヒトの2型糖尿病モデルであるOLETFラットと健康な対照ラットを用いて、海馬におけるグリコーゲン貯蔵量と神経細胞への乳酸取り込みを担うMCT2蛋白質の発現量を比較した。

その結果、OLETFラットの海馬では、対照ラットに比べてグリコーゲン貯蔵量が有意に増加し、MCT2発現量が有意に低下していることがわかった。また、神経活動を活性化させる運動時には、健康な対照ラット、OLETFラットともに海馬グリコーゲン貯蔵量が減少することも突き止めた。このことから、研究グループは、海馬で利用可能なグリコーゲン貯蔵量が増加しているものの、海馬のMCT2発現量が低下し、神経細胞への乳酸輸送が低下することが、2型糖尿病に伴う認知機能低下につながると述べている。

次に、研究グループは、OLETFラットと健康な対照ラットを用いて、30分間の中強度運動を4週間行わせ、認知機能や海馬のグリコーゲン貯蔵量、MCT2発現量の変化を観察した。なお、認知機能の評価には、モリス水迷路テストを用いた。

その結果、4週間の中強度運動を実施後には、OLETFラットの認知機能が改善したほか、同ラットでもともと高まっていたグリコーゲン貯蔵量がさらに増加し、低下していたMCT2発現量が回復していることも確認された。一方で、海馬のMCT1やMCT4の発現量は、糖尿病や運動による影響を受けないこともわかった。

研究グループは、これらの結果から、2型糖尿病の海馬機能は中強度運動によって回復し、これにはMCT2を介したグリコーゲン由来の乳酸輸送能の改善が関与するものと考察しており、海馬における乳酸代謝の改善が糖尿病に合併する認知機能低下の治療標的になりうるとしている。(HealthDay News 2016年12月19日)

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