image_print
疾患・分野別ニュース/国内ニュース/

加齢に伴うインスリンシグナルの変化が記憶低下と関連 ――千葉大の研究グループ

記憶を維持するには、血糖値の調節に重要なインスリンと脂肪細胞内のインスリンシグナル伝達が必要とされることを、千葉大学大学院薬学研究院生化学研究室の殿城亜矢子氏らの研究グループがショウジョウバエを用いた実験で突き止めた。加齢に伴いインスリンシグナルに変化が生じ、シグナル伝達が低下することが記憶低下を引き起こしている可能性がある。詳細は「Cell Reports」オンライン版に2月14日掲載された。

インスリンは細胞膜の上にあるインスリン受容体に結合して細胞内にシグナルを伝える。このインスリンシグナルは哺乳類から昆虫を含む無脊椎動物の発生や成長、代謝の制御などに重要な役割を果たしている。最近ではインスリンが記憶や学習に影響を及ぼし、また糖尿病などの代謝性疾患でみられるインスリン調節の異常が認知症のリスク因子になりうることが示唆されているが、インスリンが果たす役割については明らかにされていなかった。

そこで研究グループは今回、ショウジョウバエを用いてインスリンが記憶を制御する機序や加齢に伴う記憶能力の低下とどのように関連するのかを調べた。ショウジョウバエを用いたのは、匂いと電気刺激を条件づけすることで学習能や記憶能を簡単に測定できることと、老化すると記憶能力が低下することが知られていることによるという。

研究グループはまず、発生や成長の時期にかかわらず、一過的にインスリンシグナルを抑制したショウジョウバエを作製し、学習能や記憶能を測定したところ、インスリンシグナルを抑えると記憶が維持されないことがわかった。次に、筋肉や脂肪組織、神経細胞などさまざまな組織に発現するインスリン受容体のうち、脂肪組織における受容体の発現が記憶の維持に必要であることも判明した。

さらに、ショウジョウバエではインスリンとインスリン様成長因子(IGF)の機能はDilpという分子群がまかなっており、Dilp1からDilp8までの8種が機能分担しているが、今回の研究でとくにDilp3が記憶の維持に必要であることが明らかにされた。Dilp3は加齢に伴って特異的に低下しており、老化したショウジョウバエにDilp3を過剰に発現させると記憶力が向上した。

以上から、研究グループは「若いショウジョウバエではDilp3と脂肪組織におけるインスリンシグナルの活性化により記憶が維持される一方で、老化したショウジョウバエではDilp3の発現が低下することで記憶力の低下が引き起こされていることがわかった」と述べている。(HealthDay News 2017年3月6日)

Copyright (c) 2017 HealthDay. All rights reserved.

No Tags

RELATED ARTICLES

Search

記事カテゴリ