2HDN糖尿病ニュース5月18日配信1

腹膜への膵島細胞移植で1型糖尿病の完治に希望

人工膵臓の作製に一歩近づく新たな知見が、「New England Journal of Medicine」オンライン版に5月10日掲載されたレター論文で報告された。重症1型糖尿病の女性患者(43歳)の大網(omentum)と呼ばれる腹膜の一部にインスリン産生膵島細胞を移植したところ、予想よりも早くインスリンが産生・分泌されはじめ、移植から1年後もインスリン注射をせずとも患者の状態は良好に維持されているという。1型糖尿病の完治の実現に希望をもたらす研究結果として注目される。

現在の膵島移植は、脳死ドナーの膵臓から膵島細胞を分離して肝臓近くの門脈という血管に移植する方法がとられているが、研究を率いた米マイアミ大学助教授のDavid Baidal氏は「この知見から、これまでとは異なる移植方法の可能性への期待が高まった」と述べており、また、国際若年性糖尿病研究財団(JDRF)のJulia Greenstein氏(研究には参加していない)も「この研究は膵島移植の新しい出発点となり得るものだ」と評価している。

今回の研究は概念実証(proof of concept)試験であり、「BioHub」と呼ばれるミニ臓器の開発に向けた第一段階になるものと期待されている。研究の最終段階では、BioHubは膵臓を模倣した臓器となり、移植した膵島細胞自体が血液を供給できるようになるまで酸素を提供する。また、1型糖尿病の発症原因である自己免疫系によるβ細胞破壊にも対処できるものと考えられている。

このBioHub開発の第一歩は、体内で最適な移植部位を探し出すことにある。肝臓に移植できる細胞の量は限られており、また移植には出血やその他の合併症リスクが懸念されるためだ。

Greenstein氏は「肝臓は血液量が豊富でインスリン産生に適しており、膵島を移植する場所としてよいとされている。しかし、まれに合併症が起こる場合があり、その場合には移植細胞を取り除く必要が生じるが、肝臓から移植した膵島細胞だけを取り除くことはできない」と指摘している。さらに、膵島移植後も拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬を長期にわたり服用する必要がある。

こうした問題点もあり、膵島移植の適応は一般には、糖尿病の管理が非常に難しい患者や自覚なく意識障害などの低血糖症状が現れる無自覚性低血糖症患者などに限定されている。今回の研究で移植を受けた女性患者は、1型糖尿病罹病歴が25年間で、重度の無自覚性低血糖症であった。彼女の低血糖症状はQOL(生活の質)を大きく損ない、両親と同居し、旅行する際にも親が同行しなければならなかったという。

今回の研究で行われた移植手術は低侵襲で、膵島細胞は最終的には分解する「足場」に留置された。このケースでは合併症は起こらなかった。Baidal氏は「この患者の血糖値が劇的に改善したのは嬉しい驚きだった」と振り返っている。

移植後は通常、新しい膵島細胞を休ませるためにインスリン注射をしばらく続けるが、この症例では移植した新しい膵島細胞がうまく作動したため、インスリン注射により低血糖が生じたほどであったという。そのため、想定よりも早く、移植後17日でインスリン投与を中止でき、血糖コントロールも安定していたという。研究グループでは今後、他の患者で移植治療の有効性を再現し、また長期にわたる治療の影響や安全性についても調べる予定だという。(HealthDay News 2017年5月10日)

https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/type-i-diabetes-news-182/transplant-of-insulin-producing-cells-offers-hope-against-type-1-diabetes-722536.html

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