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リンパ浮腫の初めての治療薬に有望性

多くのがん、特に乳がんの治療後に生じることがあるリンパ浮腫。その治療法につながる可能性のあるメカニズムが明らかにされた。既に、新たな治療薬の開発に向けた臨床試験が進行中であるという。

研究著者の1人である米スタンフォード大学医学部(カリフォルニア州)のStanley Rockson氏によると、米国では推定1000万人がリンパ浮腫を経験しているという。リンパ浮腫は、腕や脚など身体の一部に水分が過剰に溜まる症状で、多くの場合、がん治療でリンパ系が損傷されることにより発症する。今のところ有効な治療薬はないため、マッサージや圧迫帯、空気圧迫装置などで対処することになる。見た目の問題だけでなく、身体機能や社会生活が大きく制限されることもある。

今回の研究では、リンパ浮腫の分子機序を明らかにするため、ケトプロフェンという薬剤に着目した。同薬は鎮痛消炎剤であり、これまでもリンパ浮腫の治療薬として検討されたことがあるが、心臓、消化管、腎臓などへの副作用が問題となっていた。そのため、安全な代替となるものを探すことにしたという。

研究グループは、まず、ケトプロフェンがリンパ浮腫にもたらす治療効果について検討した。リンパ浮腫様の症状を誘発したマウスを用いた実験により、ケトプロフェンはロイコトリエンB4(LTB4)と呼ばれる蛋白質を阻害することで、組織傷害と水分滞留を防いでいることを突き止めた。LTB4はリンパ浮腫患者の細胞検体でも増加していた。

さらに検討したところ、ベスタチンと呼ばれる別の薬剤も同様の作用を持つことが判明した。ベスタチンは米国では未承認だが、日本では以前からがん治療に使用されている。この薬剤の利点は、LTB4に対してケトプロフェンよりも選択的に作用するため、副作用が少ないことであるという。

この実験結果に基づき、リンパ浮腫に対するベスタチンの臨床試験が既に開始されている。なお、この臨床試験は米Eiger BioPharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)による資金提供を受けている。今回の研究の著者らは同社の顧問でもあり、同社はベスタチンのライセンス契約を日本の製薬企業と結んでいる。

米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(ニューヨーク市)のTheresa Gillis氏は、この研究に期待を示す一方、リンパ浮腫の「マウスモデル」は放射線療法やリンパ節郭清を受けたがん患者の状態をそのまま再現するものではないため、臨床試験の結果が出るまではベスタチンがヒトにも効くのかは明らかでないと指摘している。

しかし、リンパ浮腫の新たな治療法が強く求められているのは事実だとGillis氏は認める。「現在、リンパ浮腫の治療には毎年多額の医療費がかかっている。重症患者では専用の圧迫帯を毎日着用するなど負担も大きい。しかも、患者が適切に努力をしても症状は次第に悪化していくことがある」と同氏は述べ、今回の知見はリンパ浮腫の根底にあるプロセスを解明するものであり、最終的にはリンパ浮腫の予防にもつながることを期待するとしている。

ベスタチンの臨床試験の結果が出るのは数年後になる。Rockson氏は、「患者は研究の開始に勇気づけられると思う。歴史的にリンパ浮腫は注目されてきておらず、患者はある種の絶望を感じていたからだ。しかし今は希望が見えてきたと言える」と話している。

今回の研究は「Science Translational Medicine」5月10日号に掲載された。(HealthDay News 2017年5月10日)

https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/mis-cancer-news-102/hope-for-1st-drug-against-lymphedema-a-cancer-complication-722558.html

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