糖尿病患者にとって、低血糖は極めて危険な健康状態をもたらすリスクとなるが、経鼻投与できるパウダータイプのグルカゴンによって血糖値が迅速に正常化することを示した研究結果が第77回米国糖尿病学会(ADA 2017、6月9~13日、サンディエゴ)で報告された。この経鼻パウダーには、低血糖状態で意識を失っている患者にも、家族など周囲にいる人が簡単に投与できる利点もあるという。グルカゴンは血糖値を上げる作用を有するホルモンで、既に低血糖治療に使用されているが、現在は注射タイプのものしかない。研究を主導した米ミネソタ大学のElizabeth Seaquist氏によると、注射タイプのグルカゴンは使用に恐怖心を抱く家族が少なくないが、経鼻パウダーを実際に使用した介護者の95%が「極めて簡単に使用できた」と回答しているという。.低血糖に陥った場合には、果汁や加糖飲料、キャンディーなど糖分を含む飲み物や食べ物をすぐに摂取すれば血糖値は正常に回復する。しかし、適切に対処しないと症状は悪化し、意識障害やけいれんが生じ、死に至ることもある。症状が続く場合や意識障害のため飲食できない場合には、グルカゴンを注射する。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では重篤な低血糖によって病院に搬送される1型糖尿病の患者数は推定で年間30万人に上る。.今回の研究で使用された経鼻グルカゴンパウダーは、喘息治療などに使用されている経鼻ステロイド吸入薬に似た形状で、それよりもやや小さなデバイスに装填されているという。使用時には家族や介護者が患者の鼻孔に先端を挿入し、デバイスの底のボタンを押すとグルカゴンを投与できる。薬剤は鼻腔内で血液中に吸収される。共同研究者の1人で、Eli Lilly社の上級医療アドバイザーを務めるCristina Guzman氏は「患者は息をしたり吸い込んだりする必要がなく、極めて簡単に使用できる」と説明している。.研究では、1型糖尿病患者にあらかじめ経鼻グルカゴンパウダーを渡しておき、低血糖発作時にこのパウダーを使用してもらった。その結果、69人の患者で計157回の低血糖発作が起こったが、このうち96%の発作が経鼻グルカゴンパウダーを使用後30分以内に血糖値が正常に回復していた。一方、副作用については、注射タイプのグルカゴンと同様に吐き気や嘔吐の他、鼻粘膜刺激や頭痛などが報告された。.Eli Lilly社は現在、注射タイプのグルカゴン製剤を製造しているが、この経鼻グルカゴンパウダーを2018年中に米国食品医薬品局(FDA)に承認申請し、承認後には国外での販売も目指す予定。現在、製品名は未定で、販売価格も不明だ。なお、Seaquist氏は同社の顧問で、この研究は同社とパウダータイプのグルカゴン製剤を開発したLocemia社の資金援助を受けて実施された。(HealthDay News 2017年6月13日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/for-diabetics-nasal-powder-fixed-severe-low-blood-sugar-723607.html.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.
糖尿病患者にとって、低血糖は極めて危険な健康状態をもたらすリスクとなるが、経鼻投与できるパウダータイプのグルカゴンによって血糖値が迅速に正常化することを示した研究結果が第77回米国糖尿病学会(ADA 2017、6月9~13日、サンディエゴ)で報告された。この経鼻パウダーには、低血糖状態で意識を失っている患者にも、家族など周囲にいる人が簡単に投与できる利点もあるという。グルカゴンは血糖値を上げる作用を有するホルモンで、既に低血糖治療に使用されているが、現在は注射タイプのものしかない。研究を主導した米ミネソタ大学のElizabeth Seaquist氏によると、注射タイプのグルカゴンは使用に恐怖心を抱く家族が少なくないが、経鼻パウダーを実際に使用した介護者の95%が「極めて簡単に使用できた」と回答しているという。.低血糖に陥った場合には、果汁や加糖飲料、キャンディーなど糖分を含む飲み物や食べ物をすぐに摂取すれば血糖値は正常に回復する。しかし、適切に対処しないと症状は悪化し、意識障害やけいれんが生じ、死に至ることもある。症状が続く場合や意識障害のため飲食できない場合には、グルカゴンを注射する。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では重篤な低血糖によって病院に搬送される1型糖尿病の患者数は推定で年間30万人に上る。.今回の研究で使用された経鼻グルカゴンパウダーは、喘息治療などに使用されている経鼻ステロイド吸入薬に似た形状で、それよりもやや小さなデバイスに装填されているという。使用時には家族や介護者が患者の鼻孔に先端を挿入し、デバイスの底のボタンを押すとグルカゴンを投与できる。薬剤は鼻腔内で血液中に吸収される。共同研究者の1人で、Eli Lilly社の上級医療アドバイザーを務めるCristina Guzman氏は「患者は息をしたり吸い込んだりする必要がなく、極めて簡単に使用できる」と説明している。.研究では、1型糖尿病患者にあらかじめ経鼻グルカゴンパウダーを渡しておき、低血糖発作時にこのパウダーを使用してもらった。その結果、69人の患者で計157回の低血糖発作が起こったが、このうち96%の発作が経鼻グルカゴンパウダーを使用後30分以内に血糖値が正常に回復していた。一方、副作用については、注射タイプのグルカゴンと同様に吐き気や嘔吐の他、鼻粘膜刺激や頭痛などが報告された。.Eli Lilly社は現在、注射タイプのグルカゴン製剤を製造しているが、この経鼻グルカゴンパウダーを2018年中に米国食品医薬品局(FDA)に承認申請し、承認後には国外での販売も目指す予定。現在、製品名は未定で、販売価格も不明だ。なお、Seaquist氏は同社の顧問で、この研究は同社とパウダータイプのグルカゴン製剤を開発したLocemia社の資金援助を受けて実施された。(HealthDay News 2017年6月13日).https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/for-diabetics-nasal-powder-fixed-severe-low-blood-sugar-723607.html.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.