血圧や脂質、血糖などに異常がなく代謝的に健康であっても、肥満がある成人には、生涯にわたり数万ドルに上る医療費や生産性の損失といった社会的コストがかかることが、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究グループの分析で分かった。研究の詳細は「Obesity」10月号に掲載されている。研究を行った同大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のBruce Lee氏は「この結果は、肥満が個人や社会全体に与える影響について再考するきっかけとなるものだ」と述べている。.Lee氏らは今回、米国成人の大規模な健康データを用いて、過体重や肥満の成人が生涯で罹る慢性疾患や健康状態を追跡し、コンピュータモデルを用いて関連する費用を算出。適正体重の人と比べて医療費と病気や欠勤・休職などによる生産性の損失額がどれだけ増えるのかを推定した。.その結果、代謝的には健康だが肥満がある人では、適正体重の人と比べて生涯にかかる社会的なコストは大きく増えることが分かった。最も費用が高かったのは50歳モデルの3万6,278ドル(約406万円)で、最も少ないのは80歳モデルの1万6,882ドル(約189万円)であった。.肥満は2型糖尿病や心臓病、一部のがんなど多くの慢性疾患を引き起こし、保険料全体だけでなく個人が負担する額も押し上げることになるという。「肥満者は保険料の負担が増える上に、自身の生産性は低下するため家計にも影響する」とLee氏は説明している。.一方で、この研究では減量により社会的コストは大きく削減できることも分かった。例えば、20歳で肥満の人が過体重レベルまで減量すると、その人の生涯にかかる社会的コストは3分の1にまで減らすことができたほか、70歳で肥満の人でも過体重レベルまで体重を減らせば生涯コストは40%削減されたという。.米国では成人の3分の2が肥満や過体重であると推定されている。米国肥満学会のスポークスパーソンを務め、根拠に基づく方法で肥満問題に取り組む団体、ConscienHealthを設立したTed Kyle氏は「食生活の是正と運動習慣が大切なことは、ほとんどの肥満の人が知っているが、そうした医師のアドバイスは実際には減量につながっていない」と米国の肥満治療の問題点を指摘する。.Kyle氏によると、減量により慢性疾患を予防できることは明らかで、全米糖尿病予防プログラム(Diabetes Prevention Program)と呼ばれる大規模研究では、耐糖能異常がみられる人を対象に食生活の改善や運動習慣、行動変容を強く促すカウンセリングを行ってわずかでも減量させると、過体重の人でも2型糖尿病になるリスクが低下することが明らかにされているという。しかし、こうしたプログラムを利用できる国民はごく一部に過ぎず、「肥満の人には身体に染みついた悪い習慣を直すためには強力な手助けが必要だ」と同氏は強調している。(HealthDay News 2017年9月26日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/obesity-health-news-505/u-s-pays-a-hefty-price-for-obesity-726846.html.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.
血圧や脂質、血糖などに異常がなく代謝的に健康であっても、肥満がある成人には、生涯にわたり数万ドルに上る医療費や生産性の損失といった社会的コストがかかることが、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究グループの分析で分かった。研究の詳細は「Obesity」10月号に掲載されている。研究を行った同大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のBruce Lee氏は「この結果は、肥満が個人や社会全体に与える影響について再考するきっかけとなるものだ」と述べている。.Lee氏らは今回、米国成人の大規模な健康データを用いて、過体重や肥満の成人が生涯で罹る慢性疾患や健康状態を追跡し、コンピュータモデルを用いて関連する費用を算出。適正体重の人と比べて医療費と病気や欠勤・休職などによる生産性の損失額がどれだけ増えるのかを推定した。.その結果、代謝的には健康だが肥満がある人では、適正体重の人と比べて生涯にかかる社会的なコストは大きく増えることが分かった。最も費用が高かったのは50歳モデルの3万6,278ドル(約406万円)で、最も少ないのは80歳モデルの1万6,882ドル(約189万円)であった。.肥満は2型糖尿病や心臓病、一部のがんなど多くの慢性疾患を引き起こし、保険料全体だけでなく個人が負担する額も押し上げることになるという。「肥満者は保険料の負担が増える上に、自身の生産性は低下するため家計にも影響する」とLee氏は説明している。.一方で、この研究では減量により社会的コストは大きく削減できることも分かった。例えば、20歳で肥満の人が過体重レベルまで減量すると、その人の生涯にかかる社会的コストは3分の1にまで減らすことができたほか、70歳で肥満の人でも過体重レベルまで体重を減らせば生涯コストは40%削減されたという。.米国では成人の3分の2が肥満や過体重であると推定されている。米国肥満学会のスポークスパーソンを務め、根拠に基づく方法で肥満問題に取り組む団体、ConscienHealthを設立したTed Kyle氏は「食生活の是正と運動習慣が大切なことは、ほとんどの肥満の人が知っているが、そうした医師のアドバイスは実際には減量につながっていない」と米国の肥満治療の問題点を指摘する。.Kyle氏によると、減量により慢性疾患を予防できることは明らかで、全米糖尿病予防プログラム(Diabetes Prevention Program)と呼ばれる大規模研究では、耐糖能異常がみられる人を対象に食生活の改善や運動習慣、行動変容を強く促すカウンセリングを行ってわずかでも減量させると、過体重の人でも2型糖尿病になるリスクが低下することが明らかにされているという。しかし、こうしたプログラムを利用できる国民はごく一部に過ぎず、「肥満の人には身体に染みついた悪い習慣を直すためには強力な手助けが必要だ」と同氏は強調している。(HealthDay News 2017年9月26日).https://consumer.healthday.com/vitamins-and-nutrition-information-27/obesity-health-news-505/u-s-pays-a-hefty-price-for-obesity-726846.html.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.