魚や貝などの魚介類を1日に110gほど食べる人は、食べる習慣のない人よりもうつ病になりにくい可能性があることが、国立がん研究センターなどが進める多目的コホート研究(JPHC Study)で明らかにされた。100gの目安は鮭が1切れ、いわしだと1尾。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサペンタ塩酸(DPA)などのオメガ3(n-3)系脂肪酸による影響が考えられるという。詳細は「Translational Psychiatry」9月26日オンライン版に掲載された。これまで欧米を中心とした研究で、魚、特に青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸の摂取はうつ病の発症リスク低下と関連することが報告されている。しかし、研究グループによると、日本人が参加した研究は限られており、また、精神科の医師が厳格にうつ病を診断した研究はほとんど行われていなかった。そこで、研究グループは今回、JPHC研究に参加した一般住民を対象に、魚介類とオメガ3系脂肪酸の摂取量と精神科医により診断されたうつ病との関連を調べた。.対象は、1990年に40~59歳だった長野県内の住民1万2,219人のうち、1995年と2000年に食物摂取頻度を尋ねるアンケートに回答し、2014~2015年の「こころの検診」に参加した1,181人。アンケートでは、サケ・マス、カツオ・マグロ、アジ・イワシ、魚卵、イカ、タコ、エビなどのほか、アサリ・シジミといった貝類、かまぼこなどの加工食品などの摂取頻度を調べた。.その結果、参加者を魚介類の1日の摂取量で4つの群に等分に分けてうつ病の発症リスクを比較したところ、1日57g(中央値)と最も少なかった群と比べて2番目に多かった群(中央値で111g/日)でうつ病リスクが半減し(オッズ比0.44、95%信頼区間0.23~0.84)、その他の群でも約20~30%ほどリスクが低減していることが分かった。.また、オメガ3系脂肪酸の種類別〔α-リノレン酸、EPA、DPA、ドコサヘキサエン酸(DHA)〕の摂取量でも同様に4つの群に分けてうつ病リスクを比べたところ、EPAは最も少なかった群(200mg/日)と比べて3番目に多かった群(307mg/日)で、DPAは最も少なかった群(67mg/日)と比べて2番目に多かった群(123mg/日)でリスクが半減していた(それぞれのオッズ比0.54、0.30~0.99、同0.42、0.22~0.85)。.ただし、EPA、DPAはいずれも摂取量が一定量を上回るとこうしたうつ病リスクの低減効果は弱まっていた。一方、α-リノレン酸とDHAの摂取量とうつ病リスクとの間には明らかな関連は認められなかった。.これらの結果から、研究グループは「魚介類やオメガ3系脂肪酸は単に摂取量が多いほどうつ病リスクが下がるのではなく、適度に摂取するとリスクは下がるが、ある一定量を超えるとその影響は弱まる可能性がある」と指摘している。こうした結果が得られた理由については不明としつつ、「魚介類は炒めて食べる人が多いとする報告もあり、サラダ油に含まれる、炎症惹起に働くオメガ6(n-6)系多価不飽和脂肪酸の摂取量が増えてオメガ3系脂肪酸の効果が打ち消されたのではないか」との考えを示している。(HealthDay News 2017年10月10日).Full Texthttp://www.nature.com/tp/journal/v7/n9/full/tp2017206a.html?foxtrotcallback=true.Press Releasehttp://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/7983.html.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.
魚や貝などの魚介類を1日に110gほど食べる人は、食べる習慣のない人よりもうつ病になりにくい可能性があることが、国立がん研究センターなどが進める多目的コホート研究(JPHC Study)で明らかにされた。100gの目安は鮭が1切れ、いわしだと1尾。エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサペンタ塩酸(DPA)などのオメガ3(n-3)系脂肪酸による影響が考えられるという。詳細は「Translational Psychiatry」9月26日オンライン版に掲載された。これまで欧米を中心とした研究で、魚、特に青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸の摂取はうつ病の発症リスク低下と関連することが報告されている。しかし、研究グループによると、日本人が参加した研究は限られており、また、精神科の医師が厳格にうつ病を診断した研究はほとんど行われていなかった。そこで、研究グループは今回、JPHC研究に参加した一般住民を対象に、魚介類とオメガ3系脂肪酸の摂取量と精神科医により診断されたうつ病との関連を調べた。.対象は、1990年に40~59歳だった長野県内の住民1万2,219人のうち、1995年と2000年に食物摂取頻度を尋ねるアンケートに回答し、2014~2015年の「こころの検診」に参加した1,181人。アンケートでは、サケ・マス、カツオ・マグロ、アジ・イワシ、魚卵、イカ、タコ、エビなどのほか、アサリ・シジミといった貝類、かまぼこなどの加工食品などの摂取頻度を調べた。.その結果、参加者を魚介類の1日の摂取量で4つの群に等分に分けてうつ病の発症リスクを比較したところ、1日57g(中央値)と最も少なかった群と比べて2番目に多かった群(中央値で111g/日)でうつ病リスクが半減し(オッズ比0.44、95%信頼区間0.23~0.84)、その他の群でも約20~30%ほどリスクが低減していることが分かった。.また、オメガ3系脂肪酸の種類別〔α-リノレン酸、EPA、DPA、ドコサヘキサエン酸(DHA)〕の摂取量でも同様に4つの群に分けてうつ病リスクを比べたところ、EPAは最も少なかった群(200mg/日)と比べて3番目に多かった群(307mg/日)で、DPAは最も少なかった群(67mg/日)と比べて2番目に多かった群(123mg/日)でリスクが半減していた(それぞれのオッズ比0.54、0.30~0.99、同0.42、0.22~0.85)。.ただし、EPA、DPAはいずれも摂取量が一定量を上回るとこうしたうつ病リスクの低減効果は弱まっていた。一方、α-リノレン酸とDHAの摂取量とうつ病リスクとの間には明らかな関連は認められなかった。.これらの結果から、研究グループは「魚介類やオメガ3系脂肪酸は単に摂取量が多いほどうつ病リスクが下がるのではなく、適度に摂取するとリスクは下がるが、ある一定量を超えるとその影響は弱まる可能性がある」と指摘している。こうした結果が得られた理由については不明としつつ、「魚介類は炒めて食べる人が多いとする報告もあり、サラダ油に含まれる、炎症惹起に働くオメガ6(n-6)系多価不飽和脂肪酸の摂取量が増えてオメガ3系脂肪酸の効果が打ち消されたのではないか」との考えを示している。(HealthDay News 2017年10月10日).Full Texthttp://www.nature.com/tp/journal/v7/n9/full/tp2017206a.html?foxtrotcallback=true.Press Releasehttp://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/7983.html.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.