1-1 HDN12月11日「今日のニュース」No.1
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米俳優の訴訟で話題のMRI用造影剤、有害性認められず

米国では11月初旬、「MRI検査で使用したガドリニウムを含む造影剤が原因で、妻が重篤な状態に陥った」として俳優のチャック・ノリスが妻とともに訴訟を起こしたことが報じられ、その安全性をめぐって懸念が広がっている。しかし、ガドリニウム造影剤による脳神経への影響は認められなかったとする最新研究の結果が北米放射線学会(RSNA 2017、11月26日~12月1日、米シカゴ)で発表された。

ガドリニウムはMRI検査用の造影剤に含まれている重金属の一種で、通常、静脈投与される。今回の研究を実施した米メイヨー・クリニックのRobert McDonald氏によると、ガドリニウムは1988年以降、長年にわたって使用され、これまでの使用回数は累計で約4億回と推定されているという。

しかし近年、脳内に微量のガドリニウムが蓄積する可能性があるとの報告があったことなどから、米食品医薬品局(FDA)は2017年9月にガドリニウムを使用した造影剤の製品ラベルに、脳など複数の器官にガドリニウムが蓄積する可能性があるとの警告を追記するよう指示した。

ノリスの妻はMRI検査の後、脱力感や疲労感、疼痛発作、灼熱感などに苦しんだとされている。しかし、実際に脳などに蓄積したガドリニウムは健康に悪影響を与えるのだろうか?

McDonald氏らは今回、メイヨー・クリニック加齢研究(MCSA)と呼ばれる前向きコホート研究に登録された50~90歳の正常な認知機能の男女4,261人(平均年齢71.9歳)のデータを用いて、ガドリニウムを含有するMRI用造影剤の使用による神経学的機能および神経認知機能への影響について検討した。

対象者の25.6%(1,092人)にガドリニウム造影剤の使用経験が1回以上あった。使用経験者の使用回数の中央値は2回で、初めてガドリニウム造影剤を使用した日からベースライン時までの期間は中央値で5.6年だった。

年齢や性、教育レベル、ベースライン時の神経認知機能などで調整して解析した結果、ガドリニウム造影剤の使用は認知機能の低下や認知症、神経心理学的能力の低下あるいは運動能力の低下に関連していなかった。また、ガドリニウム造影剤が認知機能の低下を速めたり、認知症への進行を速めたりするとのエビデンスも得られなかった。

今回の研究結果を踏まえ、McDonald氏は「一般的に使用されている用量のガドリニウム造影剤であれば、仮に脳内に蓄積したとしても有害な影響をもたらすとのエビデンスはないことが分かった」としている。

一方、米ケースウエスタンリザーブ大学放射線科准教授のVikas Gulani氏は「今回の研究ではガドリニウムの脳内での蓄積による害は認められなかったが、他の神経学的問題を引き起こす可能性は否定できない」と話す。同氏は「造影剤はMRIによってがんや心疾患、肝疾患などを正確に診断するために重要なものであり、リスクとベネフィットのバランスが大切だ」と強調するとともに、「造影剤を使わずにMRIを実施できる場合には使用を回避すべきだ」と助言している。

なお、学会発表された研究は査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2017年11月29日)

https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/mri-scan-news-455/chuck-norris-says-mri-dye-harmed-wife-s-brain-but-study-finds-no-link-728906.html

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