厚生労働省が推奨する全身持久力(cardiorespiratory fitness)の基準を継続的に達成すると2型糖尿病リスクが低減できる可能性があると、東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の門間陽樹氏らが発表した。この研究は60歳未満の男性会社員を最大で23年間追跡したもの。2型糖尿病の予防には、厚労省が勧める全身持久力の基準を一時的にではなく、継続的に達成することがより重要であることが分かった。詳細は「Journal of Epidemiology」11月25日オンライン版に掲載された。全身持久力は定期的な中強度~高強度の身体活動によって高まることが知られており、2型糖尿病などの生活習慣病を予防するには全身持久力を高く保つことが有効であることは世界的にも認められている。日本では、2013年に厚労省が公表した「健康づくりのための身体活動基準2013」において、例えば40~59歳の男性の場合、167m/分(10km/時)の速度のランニングを3分間以上継続できる程度の全身持久力が推奨されている。.しかし、2型糖尿病のリスクを減らすためには、この基準をどのくらいの期間満たすべきなのか、また全身持久力は一時的に達成すればよいのか、最初に達成し、その後は達成できなくてもリスク低減に有効であるのかなどは明らかにされていなかった。そこで、門間氏らは今回、全身持久力を複数回測定した2型糖尿病を発症していない男性会社員を長期にわたり追跡し、全身持久力の基準達成状況と2型糖尿病の発症リスクとの関係を調べた。.対象は、追跡調査を開始する以前の8年(1979年4月~1987年3月)の間に全身持久力を4回以上測定し、1986年4月~1987年3月に登録した糖尿病のない21~59歳の男性会社員2,235人。参加者それぞれの全身持久力の曲線下面積(AUC)を算出し、厚労省の基準に基づいて算出された面積を超えているか否かで2群に分け、2型糖尿病の発症率を2010年まで最大で23年(中央値で15年)間追跡した。.追跡期間中に400人が2型糖尿病を発症した。複数の因子を調整した解析の結果、全身持久力の面積が基準に基づく面積を超えていた群と比べて、超えていなかった群では2型糖尿病の発症リスクは33%高いことが分かった(ハザード比1.33、95%信頼区間1.06~1.65)。.また、初回の測定で基準に達し、その後も継続的に基準を満たしていた群(参照群)と、初回は基準に達していなくてもその後、継続的に基準を満たした群は2型糖尿病リスクが同程度であった。一方、参照群と比べて、初回からその後も基準に達しなかった群では糖尿病リスクは約40%高いことも分かった。なお、同様に初回は基準を達してもその後、継続的に基準を満たさなかった群の場合も糖尿病リスクは約40%高い値を示したが、これらは統計学的な差は認められなかった。.以上の結果を踏まえて、門間氏らは「今回の結果から、厚労省が勧める全身持久力の基準を継続的に達成すると中年期の男性は2型糖尿病リスクを低減できる可能性があることが分かった。厚労省が公表している全身持久力の基準は、2型糖尿病予防の観点から妥当なものだと言えるだろう」と述べている。(HealthDay News 2017年12月11日).Abstracthttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20160199/_article.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.
厚生労働省が推奨する全身持久力(cardiorespiratory fitness)の基準を継続的に達成すると2型糖尿病リスクが低減できる可能性があると、東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の門間陽樹氏らが発表した。この研究は60歳未満の男性会社員を最大で23年間追跡したもの。2型糖尿病の予防には、厚労省が勧める全身持久力の基準を一時的にではなく、継続的に達成することがより重要であることが分かった。詳細は「Journal of Epidemiology」11月25日オンライン版に掲載された。全身持久力は定期的な中強度~高強度の身体活動によって高まることが知られており、2型糖尿病などの生活習慣病を予防するには全身持久力を高く保つことが有効であることは世界的にも認められている。日本では、2013年に厚労省が公表した「健康づくりのための身体活動基準2013」において、例えば40~59歳の男性の場合、167m/分(10km/時)の速度のランニングを3分間以上継続できる程度の全身持久力が推奨されている。.しかし、2型糖尿病のリスクを減らすためには、この基準をどのくらいの期間満たすべきなのか、また全身持久力は一時的に達成すればよいのか、最初に達成し、その後は達成できなくてもリスク低減に有効であるのかなどは明らかにされていなかった。そこで、門間氏らは今回、全身持久力を複数回測定した2型糖尿病を発症していない男性会社員を長期にわたり追跡し、全身持久力の基準達成状況と2型糖尿病の発症リスクとの関係を調べた。.対象は、追跡調査を開始する以前の8年(1979年4月~1987年3月)の間に全身持久力を4回以上測定し、1986年4月~1987年3月に登録した糖尿病のない21~59歳の男性会社員2,235人。参加者それぞれの全身持久力の曲線下面積(AUC)を算出し、厚労省の基準に基づいて算出された面積を超えているか否かで2群に分け、2型糖尿病の発症率を2010年まで最大で23年(中央値で15年)間追跡した。.追跡期間中に400人が2型糖尿病を発症した。複数の因子を調整した解析の結果、全身持久力の面積が基準に基づく面積を超えていた群と比べて、超えていなかった群では2型糖尿病の発症リスクは33%高いことが分かった(ハザード比1.33、95%信頼区間1.06~1.65)。.また、初回の測定で基準に達し、その後も継続的に基準を満たしていた群(参照群)と、初回は基準に達していなくてもその後、継続的に基準を満たした群は2型糖尿病リスクが同程度であった。一方、参照群と比べて、初回からその後も基準に達しなかった群では糖尿病リスクは約40%高いことも分かった。なお、同様に初回は基準を達してもその後、継続的に基準を満たさなかった群の場合も糖尿病リスクは約40%高い値を示したが、これらは統計学的な差は認められなかった。.以上の結果を踏まえて、門間氏らは「今回の結果から、厚労省が勧める全身持久力の基準を継続的に達成すると中年期の男性は2型糖尿病リスクを低減できる可能性があることが分かった。厚労省が公表している全身持久力の基準は、2型糖尿病予防の観点から妥当なものだと言えるだろう」と述べている。(HealthDay News 2017年12月11日).Abstracthttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20160199/_article.Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.