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「乳がん治療による心臓への影響、監視を」米学会ステートメント

米国心臓協会(AHA)は2月1日、乳がんと心血管疾患との関係についての科学的な知見やそれに基づく心疾患の予防法や治療法をまとめたステートメント(scientific statement)を「Circulation」2月1日オンライン版で発表した。ステートメントの著者らは「乳がんに対する放射線治療や乳がん治療薬の一部は心臓に悪影響をもたらす可能性があることから、治療中および治療後には心血管の状態も注意深く監視すべきだ」と強調している。

ステートメントには、乳がんと心疾患に共通するリスク因子や、乳がん治療による心臓への影響、その影響を最小限に抑えるための戦略などがまとめられている。特に重要なポイントとして挙げられているのは、「乳がん治療の一部が心臓に悪影響をもたらす可能性があることを踏まえ、医療従事者がしっかりと心血管の状態を監視すべき」としている点。また、「乳がん経験者、特に65歳以上の乳がん経験者は乳がんではなく心不全などの心血管疾患が原因で死亡する確率が高い」として、がん治療中および治療後には心疾患のリスク因子を適切に管理することも求めている。

このステートメントについて、筆頭著者で米オハイオ州立大学のLaxmi Mehta氏は「乳がん患者を治療から遠ざけたり、怖がらせたりすることを目的としたものではない」と強調し、「副作用を含めた十分な情報を得た上で、最適ながん治療を医師とともに選択することを促すことが狙いだ」と説明している。

一部の乳がん治療が心疾患リスクを上昇させる可能性があることは、既に広く知られている。米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのRichard Steingart氏によると、治療の種類によって心臓への影響が現れるタイミングが異なり、化学療法の場合はその影響は治療開始から間もない段階で現れることが多いのに対し、胸部への放射線治療による影響は数年後に現れる可能性があるという。

では、具体的にどのような薬剤で心臓への影響に注意すべきなのか。ステートメントによると、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系の薬剤は心筋細胞に悪影響を与え、慢性心不全の原因となる場合がある。また、HER2遺伝子陽性の乳がんに有効とされる薬剤(トラスツズマブなど)も、可逆的な場合がほとんどではあるが心不全をもたらす可能性がある。ただ、こうした副作用がみられても、β遮断薬やACE阻害薬などの標準的な心疾患治療薬によって心機能が改善する可能性はあるという。

ただし、「乳がん治療によって心臓に重大な影響がもたらされるリスクは全般的には低い」と、前出のSteingart氏は強調している。また、同氏は「年齢や高血圧、喫煙習慣の有無といった心血管のリスク因子によってもリスクに違いがある」としている。

ステートメントの筆頭著者のMehta氏は、乳がん患者に対して「息切れや胸痛などの症状に注意を払い、受診の際には医師にがんの治療歴についても伝えてほしい」と助言。また、心血管のリスク因子を悪化させないために健康的な生活習慣を維持することを勧めている。Steingart氏も「運動や食生活など生活習慣に気を付けることは、がんの治療を乗り切る上でも重要だ」としている。

Mehta氏は「治療の向上によって乳がんを発症しても長生きする女性が増えたことは良いニュースだ。しかし、高齢になった乳がん患者は乳がんよりも心疾患で死亡する可能性が高いため、乳がん治療中や治療後の心血管リスク因子の管理に最善を尽くすことは極めて重要だ」と指摘。その上で、心血管疾患予防のために「禁煙」「健康的な食事」「定期的な運動」「適正体重の維持」と血糖、脂質、血圧のコントロールの計7つの習慣を持つべきとするAHAの推奨( Life’s Simple 7)への遵守を呼び掛けている。(HealthDay News 2018年2月1日)

https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/breast-cancer-treatment-can-be-tough-on-the-heart-730735.html

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