2型糖尿病と心不全が合併した患者では、低用量アスピリンを毎日服用すると、服用しなかった場合と比べて全死亡および心不全に関連した入院のリスクが約10%低減する一方で、非致死的心筋梗塞や脳卒中の発症リスクは約50%高まることが新しい研究で報告された。研究の詳細は米オーランドで開かれる第67回米国心臓病学会(ACC 2018、3月10日~12日)で発表される。この研究は、英国の550ものプライマリケアを受診した患者を登録した大規模データベース(The Health Improvement Network;THIN)を用いて、心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患、心房細動の既往がない55歳以上の糖尿病と心不全を合併した患者1万2,000人強の医療記録を解析したもの。対象患者のうち約半数はアスピリンを毎日服用し、残りの約半数は服用していなかった。.対象患者を低用量アスピリン常用の有無で分けて、平均で5年間後ろ向きに追跡した結果、アスピリンを服用していない群と比べて服用している群では、全死亡と心不全に関連した入院による複合アウトカムのリスクは11%低減することが分かった(調整後の多変量Cox回帰モデルで解析したハザード比は0.89、95%信頼区間0.84~0.94)。また、低用量アスピリンの常用による大出血イベントリスクへの影響はみられなかったが、非服用群と比べて服用群では非致死的心筋梗塞および脳卒中のリスクは50%高いことも明らかになった。.抗血小板薬であるアスピリンは、血小板の凝集を抑制して血液が固まりにすることから血栓リスクを低減させるとされる。心不全と糖尿病の病態下では血液の凝集活性が高まって血栓が形成されやすくなるため、心筋梗塞や脳卒中の発症につながる。なお、米国では2型糖尿病患者は約2700万人、心不全患者は約650万人いると推定されている。.低用量アスピリンの常用は、心筋梗塞や脳卒中の既往がある人ではこれらの再発予防として推奨されている。しかし、研究を率いた米ワイルコーネル医科大学のCharbel Abi Khalil氏らによると、アスピリンが心血管リスク因子を保有するがこれらの既往はない人の一次予防に有効か否かは不明だという。また、一部の研究では、心不全患者ではアスピリンの常用は有害な可能性をもたらすことが示唆されているという。.Abi Khalil氏は、2型糖尿病と心不全を合併した患者で低用量アスピリンを常用すると非致死的心筋梗塞と脳卒中のリスクが増加した今回の結果は驚くべきものだとしつつ、「今回解析対象とした患者の平均年齢は70歳と高く、こうした高齢者ではもともと心血管イベントを起こしやすかったことが影響した可能性がある」と指摘している。また、同氏は、アスピリンの服用については、そのリスクとベネフィットについて主治医に相談するようにと助言している。なお、学会で発表された研究結果は、査読を受けた専門誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2018年3月1日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/aspirin-news-46/daily-aspirin-can-bring-heart-benefits-but-risks-too-731486.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
2型糖尿病と心不全が合併した患者では、低用量アスピリンを毎日服用すると、服用しなかった場合と比べて全死亡および心不全に関連した入院のリスクが約10%低減する一方で、非致死的心筋梗塞や脳卒中の発症リスクは約50%高まることが新しい研究で報告された。研究の詳細は米オーランドで開かれる第67回米国心臓病学会(ACC 2018、3月10日~12日)で発表される。この研究は、英国の550ものプライマリケアを受診した患者を登録した大規模データベース(The Health Improvement Network;THIN)を用いて、心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患、心房細動の既往がない55歳以上の糖尿病と心不全を合併した患者1万2,000人強の医療記録を解析したもの。対象患者のうち約半数はアスピリンを毎日服用し、残りの約半数は服用していなかった。.対象患者を低用量アスピリン常用の有無で分けて、平均で5年間後ろ向きに追跡した結果、アスピリンを服用していない群と比べて服用している群では、全死亡と心不全に関連した入院による複合アウトカムのリスクは11%低減することが分かった(調整後の多変量Cox回帰モデルで解析したハザード比は0.89、95%信頼区間0.84~0.94)。また、低用量アスピリンの常用による大出血イベントリスクへの影響はみられなかったが、非服用群と比べて服用群では非致死的心筋梗塞および脳卒中のリスクは50%高いことも明らかになった。.抗血小板薬であるアスピリンは、血小板の凝集を抑制して血液が固まりにすることから血栓リスクを低減させるとされる。心不全と糖尿病の病態下では血液の凝集活性が高まって血栓が形成されやすくなるため、心筋梗塞や脳卒中の発症につながる。なお、米国では2型糖尿病患者は約2700万人、心不全患者は約650万人いると推定されている。.低用量アスピリンの常用は、心筋梗塞や脳卒中の既往がある人ではこれらの再発予防として推奨されている。しかし、研究を率いた米ワイルコーネル医科大学のCharbel Abi Khalil氏らによると、アスピリンが心血管リスク因子を保有するがこれらの既往はない人の一次予防に有効か否かは不明だという。また、一部の研究では、心不全患者ではアスピリンの常用は有害な可能性をもたらすことが示唆されているという。.Abi Khalil氏は、2型糖尿病と心不全を合併した患者で低用量アスピリンを常用すると非致死的心筋梗塞と脳卒中のリスクが増加した今回の結果は驚くべきものだとしつつ、「今回解析対象とした患者の平均年齢は70歳と高く、こうした高齢者ではもともと心血管イベントを起こしやすかったことが影響した可能性がある」と指摘している。また、同氏は、アスピリンの服用については、そのリスクとベネフィットについて主治医に相談するようにと助言している。なお、学会で発表された研究結果は、査読を受けた専門誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2018年3月1日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/aspirin-news-46/daily-aspirin-can-bring-heart-benefits-but-risks-too-731486.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.