1-1 HDN3月22日「今日のニュース」No.1
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がん治療薬の「経済的毒性」で米大統領諮問委が提言

がん治療は近年、目覚ましい進歩を遂げたが、その一方で多くの新薬の価格が高騰した。米大統領がん諮問委員会は3月13日に発表した報告書 「Promoting Value, Affordability, and Innovation in Cancer Drug Treatment」で、こうした高価な新薬はがん患者に「経済的毒性(financial toxicity)」をもたらしているとして、緊急対策が必要だとの見解を示した。

がん治療は近年の分子標的薬や免疫療法の登場によって飛躍的に向上し、がん患者の生存期間は大幅に延長した。その一方で、これらの新薬の価格は短期間に急激に上昇し、「経済的毒性」となって患者に重い負担を強いている。報告書には「家計が圧迫されると、患者は予定されている治療を受けられなくなり、結果的に予後が悪化する可能性がある」との指摘が記されている。

報告書によれば、がん患者が1年間に支払う薬剤費は、1995年の5万4,100ドルから2013年には20万7,000ドルに上昇した。この間に登場した高価な新薬が年間治療費を押し上げたとみられている。特に2009~2013年に米国で承認された新薬の価格の高さは突出しており、がん患者1人当たりの薬剤費は年間10万ドルを超えていた。また、2015年にこれらのブレークスルーセラピー(画期的治療薬)を使用したがん患者1人当たりの薬剤費は、1カ月間だけで7,484~2万1,834ドルに達していた。

「治療のために薬が必要でありながら、処方された通りに薬を使用するべきか、家計を考慮して踏みとどまるべきかという難しい選択を迫られている患者に毎日のように遭遇している」と同委員会の顧問を務めた米国立がん研究所(NCI)のAnn Geiger氏は話す。

一方、製薬企業の業界団体である米国研究製薬工業協会(PhRMA)広報部門のHolly Campbell氏は「新薬によって米国ではがんによる死亡率が25%低下し、がん患者の3人中2人が診断されてから5年以上は生存できるようになった。現在のがん治療は10年前には想像もできなかったものだ」とした上で、最新の治療薬は保険が適用されない場合が多く、適用されても自己負担額が大きいという問題を指摘している。

なお、同委員会は今回の報告書の中で、がん治療薬の価格の適正化に向けて以下の対策を講じるよう提言している。

・価値に基づいた価格設定を推進し、薬剤のベネフィットと有効性を反映した薬価とする
・患者に対してそれぞれの治療選択肢の費用についても適切な情報を提供し、明確なコミュニケーションを図った上で治療を選択する
・がん治療の薬剤費による患者への負担を最小限に抑えることができる質の高い医療保険を利用しやすくする
・ジェネリック薬やバイオシミラー薬の開発を促進するため競争を促す
・米食品医薬品局(FDA)によるがん治療薬の安全性と有効性の評価に必要な財源を確保する
・革新的で価値の高いがん治療薬の開発につながる新たな研究に投資する

米国臨床腫瘍学会(ASCO)会長のClifford Hudis氏は、この報告書の内容を称賛し、「がん治療薬の価格の高騰は社会的な問題だ。医療費を増大させている他の問題とともに、がん治療薬の問題についても国を挙げて取り組む必要がある」と強調している。米国がん協会のがん啓発活動部門であるがん対策ネットワーク(ACS CAN)のKirsten Sloan氏もこれに同意し、「患者が必要な薬剤を使用し続けるためには、革新と適正価格のバランスを考慮したアプローチが不可欠だ」と指摘している。

なお、今回の報告書をまとめた諮問委員会はオバマ前大統領が任命した委員で構成されている。そのため、トランプ大統領がこの報告書をどのように受け止めているのかについては現時点では不明だ。(HealthDay News 2018年3月13日)

https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/mis-cancer-news-102/presidential-panel-says-high-priced-cancer-drugs-harm-patient-care-731892.html

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