米国全土で小児の自殺率は上昇傾向にあるが、中でもユタ州では全国平均を大幅に上回るペースで自殺率が上昇していることが米疾病対策センター(CDC)のFrancis Annor氏らによる研究から明らかになった。2011年から2015年にかけて10~17歳の小児の自殺率は全米で23.5%上昇したが、ユタ州では同期間に136.2%上昇し、たった4年間で2倍以上になったことが分かったという。この研究結果は「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」3月23日号に掲載された。Annor氏らによると、ユタ州では2011~2015年の4年間に10~17歳の小児150人が自殺で死亡した。このうち77.4%は男子で、75.4%が15~17歳だった。自殺方法は、ほとんどが銃による自殺または縊死だった。.また、同州における10~17歳の自殺率(10万人当たり)は、2011年の4.7人から2015年には11.1人へと2倍以上に上昇。一方、全米の同年齢層の自殺率(同)は、2011年の3.4人から2015年には4.1人へと上昇していたが、ユタ州のような急激な上昇は認められなかった。.なぜユタ州で小児の自殺が急増したのだろうか。Annor氏らは、その原因を探るため、同期間に自殺した小児の医療記録を調べた。その結果、自殺した小児の35.2%に精神疾患があり、31.0%が抑うつ状態にあったことが分かった。また、55.3%の小児が自殺前の2週間以内に家族や恋人との関係の悪化をきっかけに危機的な状況に陥っていた。さらに、小児の68.3%がこうした自殺のきっかけとなりうる複数の問題を抱えていた。.この他、精神疾患を抱えていた小児の84.0%が自殺する直前まで何らかの治療を受けていたことや、29.6%に自殺念慮や自殺未遂の既往歴があったことが明らかになった。また、小児の12.7%が自殺前の1週間に家族からスマートフォンやタブレット、ゲーム機、パソコンなどの使用を禁止されていたことも分かった。ただし、Annor氏らはこのようなデバイスの使用を禁止することが自殺を誘発したのか否かについては不明なため、今後さらなる研究が必要だとしている。.この研究結果を受け、専門家の一人で米レノックス・ヒル病院の小児精神科医であるMatthew Lorber氏は「ユタ州の事例は全米に向けた警鐘となるものだ」と指摘する。同氏は「米国の若者の自殺率は2011年以降、上昇し続けている。また、米国では10~17歳の小児の死因で3番目に多いのが自殺だ」と説明。その上で「この研究から小児の自殺には特定可能なリスク因子があることが明らかになった。こうしたリスク因子に対応するためには、小児が精神科医療を受けやすくしなければならない。かかりつけの小児科医や家庭医も、小児患者に対して定期的に自殺念慮や抑うつのスクリーニングを実施すべきだろう」と話す。.さらに、Lorber氏は「家族の関わり方が鍵になる」と強調する。「多くの小児の自殺者に共通してみられる問題が、家族との対立や社会的な孤立だ。小児に精神科の治療を行ったり、社会的な活動の機会を提供したりする際には家族の協力が欠かせない。(スマートフォンなどの)電子機器の使用が当たり前となった現代の小児には、幼いうちから社会性を養うために親が積極的に関わる必要がある」と同氏は話している。.一方、米ズッカー・ヒルサイド病院のScott Krakower氏は「家族や友人、教師は小児の自殺の前兆に注意してほしい」と呼び掛けている。同氏によると、抑うつ状態の悪化や学業成績の低下のほか、怒りっぽくなったり、不安や睡眠障害などがみられたりした場合、自殺の前兆である可能性があるという。また、小児が自殺について書き記していたり、ソーシャルメディアで自殺について語っているのが分かったら、直ちに精神科医に相談すべきだとしている。(HealthDay News 2018年3月22日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/suicide-health-news-646/cdc-probes-troubling-rise-in-suicide-among-utah-teens-732236.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
米国全土で小児の自殺率は上昇傾向にあるが、中でもユタ州では全国平均を大幅に上回るペースで自殺率が上昇していることが米疾病対策センター(CDC)のFrancis Annor氏らによる研究から明らかになった。2011年から2015年にかけて10~17歳の小児の自殺率は全米で23.5%上昇したが、ユタ州では同期間に136.2%上昇し、たった4年間で2倍以上になったことが分かったという。この研究結果は「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」3月23日号に掲載された。Annor氏らによると、ユタ州では2011~2015年の4年間に10~17歳の小児150人が自殺で死亡した。このうち77.4%は男子で、75.4%が15~17歳だった。自殺方法は、ほとんどが銃による自殺または縊死だった。.また、同州における10~17歳の自殺率(10万人当たり)は、2011年の4.7人から2015年には11.1人へと2倍以上に上昇。一方、全米の同年齢層の自殺率(同)は、2011年の3.4人から2015年には4.1人へと上昇していたが、ユタ州のような急激な上昇は認められなかった。.なぜユタ州で小児の自殺が急増したのだろうか。Annor氏らは、その原因を探るため、同期間に自殺した小児の医療記録を調べた。その結果、自殺した小児の35.2%に精神疾患があり、31.0%が抑うつ状態にあったことが分かった。また、55.3%の小児が自殺前の2週間以内に家族や恋人との関係の悪化をきっかけに危機的な状況に陥っていた。さらに、小児の68.3%がこうした自殺のきっかけとなりうる複数の問題を抱えていた。.この他、精神疾患を抱えていた小児の84.0%が自殺する直前まで何らかの治療を受けていたことや、29.6%に自殺念慮や自殺未遂の既往歴があったことが明らかになった。また、小児の12.7%が自殺前の1週間に家族からスマートフォンやタブレット、ゲーム機、パソコンなどの使用を禁止されていたことも分かった。ただし、Annor氏らはこのようなデバイスの使用を禁止することが自殺を誘発したのか否かについては不明なため、今後さらなる研究が必要だとしている。.この研究結果を受け、専門家の一人で米レノックス・ヒル病院の小児精神科医であるMatthew Lorber氏は「ユタ州の事例は全米に向けた警鐘となるものだ」と指摘する。同氏は「米国の若者の自殺率は2011年以降、上昇し続けている。また、米国では10~17歳の小児の死因で3番目に多いのが自殺だ」と説明。その上で「この研究から小児の自殺には特定可能なリスク因子があることが明らかになった。こうしたリスク因子に対応するためには、小児が精神科医療を受けやすくしなければならない。かかりつけの小児科医や家庭医も、小児患者に対して定期的に自殺念慮や抑うつのスクリーニングを実施すべきだろう」と話す。.さらに、Lorber氏は「家族の関わり方が鍵になる」と強調する。「多くの小児の自殺者に共通してみられる問題が、家族との対立や社会的な孤立だ。小児に精神科の治療を行ったり、社会的な活動の機会を提供したりする際には家族の協力が欠かせない。(スマートフォンなどの)電子機器の使用が当たり前となった現代の小児には、幼いうちから社会性を養うために親が積極的に関わる必要がある」と同氏は話している。.一方、米ズッカー・ヒルサイド病院のScott Krakower氏は「家族や友人、教師は小児の自殺の前兆に注意してほしい」と呼び掛けている。同氏によると、抑うつ状態の悪化や学業成績の低下のほか、怒りっぽくなったり、不安や睡眠障害などがみられたりした場合、自殺の前兆である可能性があるという。また、小児が自殺について書き記していたり、ソーシャルメディアで自殺について語っているのが分かったら、直ちに精神科医に相談すべきだとしている。(HealthDay News 2018年3月22日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/suicide-health-news-646/cdc-probes-troubling-rise-in-suicide-among-utah-teens-732236.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.