Silhouette of woman sitting in bed by window
image_print
医療・健康ニュース/パッケージニュース/

ケタミン鼻スプレー、抑うつや自殺念慮の軽減で有望な成績

クラブ・ドラッグとしても知られる麻酔薬のケタミンの点鼻スプレーが、うつ病患者の症状を迅速に軽減し、自殺念慮を抑制できる可能性があることが、小規模なランダム化比較試験(RCT)で示された。RCTの結果は「The American Journal of Psychiatry」4月16日オンライン版に掲載された。この結果を受け、専門家らは同薬の乱用のリスクについて慎重な姿勢を示す一方で、同薬は気分障害の治療薬として有望だとして期待を示している。

ケタミンは麻酔薬だが、「スペシャルK」などの呼称でナイトクラブなどで使用されるクラブ・ドラッグとしても有名だ。ケタミンにはS体とR体の光学異性体があり、麻酔薬としてはこれら2つの異性体が混在するラセミ体が用いられている。今回のRCTは、このうちS体ケタミン(エスケタミン)を含有するスプレー式点鼻薬のうつ病治療薬としての有効性を検証するため、製薬企業のJanssen社による資金提供を受けて実施された。

対象は、大うつ病性障害と診断され、差し迫った自殺の危険性がある患者68人。対象者を標準的なうつ病治療に加えてエスケタミン(84mg)を1週間に2回、4週間にわたって投与する群と、標準治療に加えてプラセボを投与する群のいずれかにランダムに割り付けた。主要評価項目は初回投与から4時間後、24時間後、25日後までの抑うつ症状の評価スコア(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale;MADRSで評価)の変化量とした。また、自殺念慮や自殺行動の評価ツールに基づく自殺リスクについても評価した。

その結果、エスケタミン群ではプラセボ群と比べ、初回投与から4時間後および24時間後の時点における抑うつ症状のスコアが30~40%有意に改善していた。また、エスケタミン群では自殺念慮も有意に低減していた。ただし、25日後の時点では抑うつ症状と自殺念慮の改善は持続していなかった。また、エスケタミン群では一部の患者で悪心やめまい、解離、頭痛などの副作用がみられた。

以上を踏まえ、今回のRCTを実施した米Janssen Research and DevelopmentのCarla Canuso氏らは、「エスケタミンの点鼻薬は、差し迫った自殺の危険性があると判定された患者の自殺念慮を含む抑うつ症状を迅速に低減できる有効な治療薬である可能性がある」と結論づけた。ただし、同氏らはケタミンが乱用リスクを伴う薬剤であることを強調。「The American Journal of Psychiatry」の編集委員を務めるRobert Freedman氏も、同誌の付随論評で「(オピオイドに続く)新たな薬物の過剰摂取の蔓延を阻止することは、われわれ医師の責任だ」と指摘し、ケタミンの使用について慎重な姿勢を示している。

一方、専門家の一人で米レノックス・ヒル病院の精神科医Matthew Lorber氏は、今回の試験は小規模であったことなどから、「(うつ病患者に対して)ケタミンを第一選択薬として自信を持って推奨できるようになるまでには、より大規模かつ長期の研究を実施する必要がある」と指摘。その上で、「従来の抗うつ薬は効果が現れるまでに4~6週間かかり、自殺を減らす効果も認められていない。これに対し、ケタミンは効果の発現が早く、自殺リスクも低減する。特に従来の治療薬が奏効しなかった患者に対する治療選択肢として、ケタミンが大きな可能性を秘めていることは確実だ」としている。

また、米ノースウェル・ヘルスの小児精神科医であるRobert Dicker氏は、うつ病の有病率の高さや自殺との関連を指摘。「成人のうつ病患者の多くは治療抵抗性であるため、新たな治療アプローチの開発の必要性は極めて高い」と強調し、今後の研究で治療抵抗性の患者に対するケタミンの有効性を検証することは重要だとの見解を示している。(HealthDay News 2018年4月17日)

https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/suicide-health-news-646/ketamine-nasal-spray-shows-promise-against-depression-suicide-733027.html

Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

RELATED ARTICLES