1-1 HDN5月1日「パッケージニュース」No.2
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バジャウ族の潜水能力は遺伝によるもの?

バジャウ族はインドネシアなどの東南アジアの海域で水上生活する漂海民族として知られているが、このバジャウ族の人々の身体には長時間の潜水に適応する遺伝的な変化がみられることが、「Cell」4月19日号に掲載の論文で報告された。この研究から、バジャウ族の人々には脾臓のサイズを大きくする遺伝子変異がみられ、脾臓が大きくなることで息を長時間止めて潜水できるようになったという。

バジャウ族は、1,000年以上にわたり東南アジアの海をハウスボートで移動しながら、素潜りと槍で食料を採集して生活している民族だ。長時間息を止める能力に長けていることでも有名で、重りと木のゴーグルだけを身に着けて70m潜れる人もいる。このような長時間の潜水ができる要因には脾臓が重要な役割を担っていると考えられていた。

英ケンブリッジ大学のMelissa Ilardo氏らは、インドネシアのバジャウ族と近隣の陸上で生活し、遺伝的にも近いサルアン族の人々から遺伝子検体を採取し、超音波検査を行って脾臓の大きさを比較した。その結果、バジャウ族の脾臓サイズの中央値はサルアン族のものより50%大きいことが分かった。

次に遺伝子解析を行った結果、バジャウ族にはサルアン族にはみられないPDE10Aと呼ばれる遺伝子の変異が認められた。PDE10A遺伝子は甲状腺ホルモンT4の分泌をコントロールする働きがあることから、Ilardo氏は「バジャウ族は甲状腺ホルモンの分泌を増やして脾臓サイズを大きくすることで、長時間の潜水に適応したと考えられる」と説明している。なお、同氏によると、甲状腺ホルモンと脾臓サイズの関連はマウスの実験でも確認されているという。

Ilardo氏は「これまでヒトの脾臓については十分な情報は得られていないが、ウェッデルアザラシなどの深い潜水を行うアザラシは、全身のサイズには不釣り合いな大きな脾臓を持つことが知られていた」と説明する。また、ヒトが息を止めて水に潜ると脾臓は収縮し、酸素を豊富に含む赤血球が血流に放出されるため血中の酸素濃度が最大で9%増加することも分かっている。「アザラシの脾臓が自然淘汰により肥大したとすれば、ヒトにも同様の進化が起こった可能性がある」と同氏は付け加えている。

さらに、Ilardo氏らはこの知見は医学研究の分野に広く意味があるものだと強調する。例えば、ヒトが潜水すると身体の組織が急速に酸素を失う急性低酸素症に似た反応が起こるが、急性低酸素症は救急治療でみられる合併症の主な原因とされており、今回のような研究は症状の理解に役立つ可能性があるという。共著者の一人でコペンハーゲン大学(デンマーク)教授のRasmus Nielsen氏は「研究室ではできない実験を自然が可能にしてくれた」と話している。(HealthDay News 2018年4月19日)

https://consumer.healthday.com/fitness-information-14/diving-and-skin-health-news-248/gene-change-may-have-helped-indonesia-s-deep-sea-divers-733056.html

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