月経中にタンポンを使用すると、極めてまれではあるが、黄色ブドウ球菌から産生される毒素に起因したトキシックショック症候群(TSS)を発症する可能性があることが報告されている。その一因はタンポンの素材に使われている化学繊維にあるのではないかとの見方があったが、クロード・ベルナール・リヨン第1大学(フランス)のGerard Lina氏らによる研究から、化学繊維のタンポンだけでなく、素材がオーガニックコットンのものを含む全ての種類のタンポンがTSSの発症に関与していることが明らかになった。詳細は「Applied and Environmental Microbiology」4月20日オンライン版に掲載された。TSSは黄色ブドウ球菌や連鎖球菌のような細菌毒素に対する免疫システムの反応により引き起こされる病態である。発熱や発疹、低血圧、疲労などの症状がみられ、急激に状態が悪化して昏睡状態に陥り、多臓器不全によって死亡する場合もある。.TSSは、1970年代にProcter & Gamble(P&G)社製の超吸収タンポン「Rely」を使用した女性に重度のTSS発症例が相次いだことをきっかけに注目されるようになった。この製品は、経血を吸収する素材としてポリエステルの圧縮ビーズを使用していた。P&Gは1980年にRelyを自主回収すると発表したが、その後の調査で、他のブランドの(合成繊維でできた)タンポンでもTSSが起こりうることが明らかになったため、一部の女性は合成繊維ではなく100%コットンのタンポンを選択するようになった。.しかし、本当に自然素材のタンポンの方が安全なのだろうか? それを明らかにするためにLina氏らが実施したのが今回の研究だ。同氏らはこの研究で、現在販売されている11種類のタンポンと4種類の月経カップ(腟内に挿入して経血を吸収するカップ型の生理用品)を集め、実験室でそれぞれの製品について黄色ブドウ球菌の増殖や毒素の産生の程度を調べた。.その結果、タンポンの素材に使われている繊維の種類は黄色ブドウ球菌の増殖や毒素の産生には影響しないことが明らかになった。ただ、繊維床(fiber bed)の構造の違いが重要である可能性が示された。Lina氏は「繊維と繊維の間に空間があると腟内に空気がたまりやすく、黄色ブドウ球菌が増殖して毒素が産生される温床となることが顕微鏡下で観察された」と米国微生物学会(ASM)のプレスリリースで説明している。.一方、一部の女性がタンポンの代わりに使用している月経カップも、TSSに関与していた。Lina氏によると、月経カップは生理用ナプキンと比べて黄色ブドウ球菌の増殖や毒素の産生がより促されやすいという。同氏は、その原因として、月経カップでは黄色ブドウ球菌の増殖に必要な空気が入り込みやすいこと、また、カップ内に黄色ブドウ球菌のバイオフィルムが形成され、簡単に殺菌できない構造であることを挙げている。.今回の研究結果を踏まえ、Lina氏は「コットンとレーヨン(ビスコース)、あるいはレーヨンのみを素材とするタンポンと比べて、オーガニックコットンのみが素材のタンポンの方がより安全だとする仮説を裏付けるものはない」と結論づけている。.TSSが極めてまれな病態であることに変わりはなく、米疾病対策センター(CDC)によると、発症率は100万人当たり1件に満たない。しかし、専門家らは「女性はTSSのリスクについて理解しておく必要がある」と強調している。.専門家の一人で米レノックス・ヒル病院の産婦人科医であるJennifer Wu氏は「腟内に挿入するタイプの生理用品を使用している全ての女性がTSSについて認識しておくべきだ。"オーガニック"あるいは"100%コットン"のタンポンであればTSSのリスクはないと誤解している女性は少なくない。また、最近は月経カップの使用が広がっているが、タンポンの使用によるTSSのリスクは聞いたことがあっても、月経カップにはそのようなリスクはないと考えている女性は多いだろう」と指摘。タンポンや月経カップは頻繁に取り換えるべきだと強調している。.一方、同じく専門家の米ノースウェル・ヘルスクリニック女性健康部長であるJill Rabin氏も、これらの生理用品をより頻繁に取り換え、清潔を保つことを推奨。もし月経カップを使用するなら月経周期ごとに煮沸消毒し、月経中は石鹸と水で洗うよう助言している。(HealthDay News 2018年4月20日).https://consumer.healthday.com/pregnancy-information-29/menstruation-news-473/even-organic-cotton-tampons-can-cause-toxic-shock-study-733153.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
月経中にタンポンを使用すると、極めてまれではあるが、黄色ブドウ球菌から産生される毒素に起因したトキシックショック症候群(TSS)を発症する可能性があることが報告されている。その一因はタンポンの素材に使われている化学繊維にあるのではないかとの見方があったが、クロード・ベルナール・リヨン第1大学(フランス)のGerard Lina氏らによる研究から、化学繊維のタンポンだけでなく、素材がオーガニックコットンのものを含む全ての種類のタンポンがTSSの発症に関与していることが明らかになった。詳細は「Applied and Environmental Microbiology」4月20日オンライン版に掲載された。TSSは黄色ブドウ球菌や連鎖球菌のような細菌毒素に対する免疫システムの反応により引き起こされる病態である。発熱や発疹、低血圧、疲労などの症状がみられ、急激に状態が悪化して昏睡状態に陥り、多臓器不全によって死亡する場合もある。.TSSは、1970年代にProcter & Gamble(P&G)社製の超吸収タンポン「Rely」を使用した女性に重度のTSS発症例が相次いだことをきっかけに注目されるようになった。この製品は、経血を吸収する素材としてポリエステルの圧縮ビーズを使用していた。P&Gは1980年にRelyを自主回収すると発表したが、その後の調査で、他のブランドの(合成繊維でできた)タンポンでもTSSが起こりうることが明らかになったため、一部の女性は合成繊維ではなく100%コットンのタンポンを選択するようになった。.しかし、本当に自然素材のタンポンの方が安全なのだろうか? それを明らかにするためにLina氏らが実施したのが今回の研究だ。同氏らはこの研究で、現在販売されている11種類のタンポンと4種類の月経カップ(腟内に挿入して経血を吸収するカップ型の生理用品)を集め、実験室でそれぞれの製品について黄色ブドウ球菌の増殖や毒素の産生の程度を調べた。.その結果、タンポンの素材に使われている繊維の種類は黄色ブドウ球菌の増殖や毒素の産生には影響しないことが明らかになった。ただ、繊維床(fiber bed)の構造の違いが重要である可能性が示された。Lina氏は「繊維と繊維の間に空間があると腟内に空気がたまりやすく、黄色ブドウ球菌が増殖して毒素が産生される温床となることが顕微鏡下で観察された」と米国微生物学会(ASM)のプレスリリースで説明している。.一方、一部の女性がタンポンの代わりに使用している月経カップも、TSSに関与していた。Lina氏によると、月経カップは生理用ナプキンと比べて黄色ブドウ球菌の増殖や毒素の産生がより促されやすいという。同氏は、その原因として、月経カップでは黄色ブドウ球菌の増殖に必要な空気が入り込みやすいこと、また、カップ内に黄色ブドウ球菌のバイオフィルムが形成され、簡単に殺菌できない構造であることを挙げている。.今回の研究結果を踏まえ、Lina氏は「コットンとレーヨン(ビスコース)、あるいはレーヨンのみを素材とするタンポンと比べて、オーガニックコットンのみが素材のタンポンの方がより安全だとする仮説を裏付けるものはない」と結論づけている。.TSSが極めてまれな病態であることに変わりはなく、米疾病対策センター(CDC)によると、発症率は100万人当たり1件に満たない。しかし、専門家らは「女性はTSSのリスクについて理解しておく必要がある」と強調している。.専門家の一人で米レノックス・ヒル病院の産婦人科医であるJennifer Wu氏は「腟内に挿入するタイプの生理用品を使用している全ての女性がTSSについて認識しておくべきだ。"オーガニック"あるいは"100%コットン"のタンポンであればTSSのリスクはないと誤解している女性は少なくない。また、最近は月経カップの使用が広がっているが、タンポンの使用によるTSSのリスクは聞いたことがあっても、月経カップにはそのようなリスクはないと考えている女性は多いだろう」と指摘。タンポンや月経カップは頻繁に取り換えるべきだと強調している。.一方、同じく専門家の米ノースウェル・ヘルスクリニック女性健康部長であるJill Rabin氏も、これらの生理用品をより頻繁に取り換え、清潔を保つことを推奨。もし月経カップを使用するなら月経周期ごとに煮沸消毒し、月経中は石鹸と水で洗うよう助言している。(HealthDay News 2018年4月20日).https://consumer.healthday.com/pregnancy-information-29/menstruation-news-473/even-organic-cotton-tampons-can-cause-toxic-shock-study-733153.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.