子どもを持つ親ならばすでに知っていることだが、8~12歳の思春期前の男児の体力はスーパーアスリート並みであることが科学的に裏付けられた。成人と比較して、思春期前の子どもは高強度な運動に耐える卓越した運動能力を持っており、運動後にもトライアスロンや長距離走、自転車競技などの一流選手と同程度の回復力を示したという研究結果が、「Frontiers in Physiology」4月24日オンライン版に掲載された。クレモン-オーヴェルニュ大学(フランス)のSébastien Ratel氏らは「訓練されていない(untrained)」思春期前の男児12人および19~23歳の男性12人と、19~27歳の男性アスリート12人を対象に、年齢ごとの運動能力を比較した。「訓練されていない」とは、娯楽としての運動(スノーボードやスキー、スケートボード、登山など)に費やす時間が週4時間以下の者とした。一方、アスリートは全国レベルの運動選手であり、週6回以上の長距離トレーニングを少なくとも2年間続けていた。.全ての対象者で、自転車エルゴメーターを用い、2日以上の間隔をあけて「有酸素性」または「無酸素性」の運動能力を測定した。無酸素性能力の評価には、短時間で高強度の運動を行うWingate testを行った。対象者にはそれぞれ運動後に、運動中に感じた苦しさなどの運動強度を10段階で評価してもらい、さらに血中乳酸値を測定した。乳酸値が高いということは、筋肉が肺からの供給量を上回る酸素を必要としていることを意味し、体内の糖分(炭水化物)を燃料として使用している状態(無酸素運動)であることを指す。この場合は有酸素運動よりも筋肉の疲労が大きくなるという。.Ratel氏らが各グループのエネルギー産生について評価したところ、アスリートではない成人男性に比べ、男児は無酸素性よりも、酸素を使って糖分からエネルギーを得る酸化的代謝からより多くのエネルギーを得ていることがわかった。また、男児は運動後の疲労が少なく、激しい運動の後でも筋肉の回復が早かった。一方で、男児と成人アスリートは有酸素性と無酸素性のエネルギー代謝パターンだけではなく、筋肉の回復や疲労の程度も同程度であった。さらに、運動後の心拍数の回復の面では男児がアスリートを上回っていた。これは血中の乳酸値をすばやく運動前に回復させる能力が優れているためではないかと、研究者らは推測している。.しかし残念なことに、この若さゆえの利点は年齢とともに失われることも明らかになった。Ratel氏は「少なくとも筋肉レベルでは、有酸素運動への適応能力は成人期に入ると著しく低下し、前後して糖尿病などになりやすくなる」と述べている。Ratel氏は、今回の結果がこのような疾患の発症機序を知るための手がかりとなるのではないかと考えており、「運動不足によりこうした疾患が増加するのであれば、疾患リスクを高める可能性がある成長に伴う生理的な変化を理解することは有用である」と指摘している。.本研究の共同研究者であるエディスコーワン大学(オーストラリア)のAnthony Blazevich氏はさらに、調査結果が幼児の運動能力を最大限に引き出す方法を示唆していると指摘し、「研究結果により小児期は筋持久性が非常に優れていることが明らかになった。そのため、スポーツの技術や短距離走のスピード、筋力などを集中的に考えることで、子どもたちのパフォーマンスが向上し、スポーツをもっと楽しめるようになるかもしれない」と述べている。(HealthDay News 2018年4月24日).https://consumer.healthday.com/fitness-information-14/cycling-health-news-245/kids-are-naturally-as-fit-as-an-iron-man-733208.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
子どもを持つ親ならばすでに知っていることだが、8~12歳の思春期前の男児の体力はスーパーアスリート並みであることが科学的に裏付けられた。成人と比較して、思春期前の子どもは高強度な運動に耐える卓越した運動能力を持っており、運動後にもトライアスロンや長距離走、自転車競技などの一流選手と同程度の回復力を示したという研究結果が、「Frontiers in Physiology」4月24日オンライン版に掲載された。クレモン-オーヴェルニュ大学(フランス)のSébastien Ratel氏らは「訓練されていない(untrained)」思春期前の男児12人および19~23歳の男性12人と、19~27歳の男性アスリート12人を対象に、年齢ごとの運動能力を比較した。「訓練されていない」とは、娯楽としての運動(スノーボードやスキー、スケートボード、登山など)に費やす時間が週4時間以下の者とした。一方、アスリートは全国レベルの運動選手であり、週6回以上の長距離トレーニングを少なくとも2年間続けていた。.全ての対象者で、自転車エルゴメーターを用い、2日以上の間隔をあけて「有酸素性」または「無酸素性」の運動能力を測定した。無酸素性能力の評価には、短時間で高強度の運動を行うWingate testを行った。対象者にはそれぞれ運動後に、運動中に感じた苦しさなどの運動強度を10段階で評価してもらい、さらに血中乳酸値を測定した。乳酸値が高いということは、筋肉が肺からの供給量を上回る酸素を必要としていることを意味し、体内の糖分(炭水化物)を燃料として使用している状態(無酸素運動)であることを指す。この場合は有酸素運動よりも筋肉の疲労が大きくなるという。.Ratel氏らが各グループのエネルギー産生について評価したところ、アスリートではない成人男性に比べ、男児は無酸素性よりも、酸素を使って糖分からエネルギーを得る酸化的代謝からより多くのエネルギーを得ていることがわかった。また、男児は運動後の疲労が少なく、激しい運動の後でも筋肉の回復が早かった。一方で、男児と成人アスリートは有酸素性と無酸素性のエネルギー代謝パターンだけではなく、筋肉の回復や疲労の程度も同程度であった。さらに、運動後の心拍数の回復の面では男児がアスリートを上回っていた。これは血中の乳酸値をすばやく運動前に回復させる能力が優れているためではないかと、研究者らは推測している。.しかし残念なことに、この若さゆえの利点は年齢とともに失われることも明らかになった。Ratel氏は「少なくとも筋肉レベルでは、有酸素運動への適応能力は成人期に入ると著しく低下し、前後して糖尿病などになりやすくなる」と述べている。Ratel氏は、今回の結果がこのような疾患の発症機序を知るための手がかりとなるのではないかと考えており、「運動不足によりこうした疾患が増加するのであれば、疾患リスクを高める可能性がある成長に伴う生理的な変化を理解することは有用である」と指摘している。.本研究の共同研究者であるエディスコーワン大学(オーストラリア)のAnthony Blazevich氏はさらに、調査結果が幼児の運動能力を最大限に引き出す方法を示唆していると指摘し、「研究結果により小児期は筋持久性が非常に優れていることが明らかになった。そのため、スポーツの技術や短距離走のスピード、筋力などを集中的に考えることで、子どもたちのパフォーマンスが向上し、スポーツをもっと楽しめるようになるかもしれない」と述べている。(HealthDay News 2018年4月24日).https://consumer.healthday.com/fitness-information-14/cycling-health-news-245/kids-are-naturally-as-fit-as-an-iron-man-733208.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.