米疾病対策センター(CDC)の下部組織である米国立新興・人獣共通感染症センター(NCEZID)の研究グループによる調査から、近年、米国でダニや蚊などのヒトの血液を吸う節足動物が媒介する感染症が劇的に増加したことが分かった。調査では、こうした害虫による感染症の報告数は、2016年には2004年の約3.5倍であったという。調査報告書は「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」5月4日号に掲載された。NCEZIDは今回、プエルトリコ、米領バージン諸島、米領サモアを含む米国の法定伝染病監視システム(NNDSS)を用いて、蚊やダニ、ノミといった節足動物が媒介する16種類の感染症の報告について、神経侵襲性および非神経侵襲性の両方が全国的に届出義務を負うようになった2004年から、これらの感染症の報告が完全データ化された2016年までのデータを抽出し、分析した。その結果、同期間に報告された節足動物媒介性ウイルス感染症の報告数は累計64万2,602例で、年間報告数は2004年の2万7,388例に対して2016年には9万6,075例と大幅に増加していた。.分析の対象期間とした2004~2016年でダニ媒介による感染症報告数は2万2,527例から4万8,610例と倍増し、累積報告の82%はライム(Lyme)病が占めていた。また、アナプラズマ病とエールリヒア症(Ehrlichiosis)の合計発生率は紅斑熱と同様ほぼ、毎年上昇し、2011年から届出義務の対象となったダニによる寄生虫感染症バベシア症もダニ媒介性感染症の発生率の上昇に寄与していた。一方、蚊媒介性感染症で特に多かったのはウエストナイル熱やデング熱、ジカ熱だった。.さらに、こうした節足動物媒介ウイルス感染症がみられた地域は拡大傾向にあること、また地域によって報告数が多い感染症の種類が異なることも分かった。例えば、ダニ媒介性感染症は75%以上を占め全米各地で発生しているが、特に東部および太平洋沿岸地域で多く、蚊媒介性感染症のうちウエストナイル熱は米大陸部で地方病として周期的な流行がみられ、デング熱やチクングニア熱、ジカ熱の報告はほとんどがプエルトリコや米領サモア、米領バージン諸島に集中していた。.研究グループの一員でNCEZIDのLyle Petersen氏は「今回の調査データから、ダニ媒介性感染症が増加傾向にあることや、感染地域が拡大していることが分かった。また、蚊媒介性感染症の国外からの流入も加速していることも明らかになった」と説明している。.今回の調査結果を踏まえ、研究グループは「各州および地域の保健当局や感染症を媒介する生物を管理する組織がこうした害虫への対策を強化できるよう、サポートする必要がある」と結論づけている。また、「サポートを強化することで、これらの感染症や害虫の検査や、感染の予防や制御を担うスタッフの訓練、一般市民への害虫の咬傷から身を守る方法の啓発などをさらに充実させることができる」としている。.これを受け、米国感染症学会(IDSA)会長のPaul Auwaerter氏は「ライム病やジカ熱など、節足動物媒介性ウイルス感染症によってもたらされる苦しみは極めて大きく、患者やその家族に与える影響は計り知れない。これまで何度となく、こうした感染症による苦痛の軽減を望む数多くの患者を診てきたが、われわれも患者と同様に解決策を求めている」と話している。.また、米レノックス・ヒル病院の救急医であるRobert Glatter氏は、一般の人々にも蚊やダニに咬まれないよう意識してほしいと呼び掛けている。その具体策として、長袖と長ズボンを着用し、特にダニに咬まれるリスクが高い森林や草が多い場所を歩くときは、必ず適切な虫よけを使用するよう助言している。そのほかに、ペットを飼っている人は、定期的にペットにダニが潜んでいないか確認してほしいとしている。(HealthDay News 2018年5月1日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/tick-borne-illness-1000/u-s-illnesses-tied-to-ticks-mosquitoes-are-soaring-733509.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
米疾病対策センター(CDC)の下部組織である米国立新興・人獣共通感染症センター(NCEZID)の研究グループによる調査から、近年、米国でダニや蚊などのヒトの血液を吸う節足動物が媒介する感染症が劇的に増加したことが分かった。調査では、こうした害虫による感染症の報告数は、2016年には2004年の約3.5倍であったという。調査報告書は「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」5月4日号に掲載された。NCEZIDは今回、プエルトリコ、米領バージン諸島、米領サモアを含む米国の法定伝染病監視システム(NNDSS)を用いて、蚊やダニ、ノミといった節足動物が媒介する16種類の感染症の報告について、神経侵襲性および非神経侵襲性の両方が全国的に届出義務を負うようになった2004年から、これらの感染症の報告が完全データ化された2016年までのデータを抽出し、分析した。その結果、同期間に報告された節足動物媒介性ウイルス感染症の報告数は累計64万2,602例で、年間報告数は2004年の2万7,388例に対して2016年には9万6,075例と大幅に増加していた。.分析の対象期間とした2004~2016年でダニ媒介による感染症報告数は2万2,527例から4万8,610例と倍増し、累積報告の82%はライム(Lyme)病が占めていた。また、アナプラズマ病とエールリヒア症(Ehrlichiosis)の合計発生率は紅斑熱と同様ほぼ、毎年上昇し、2011年から届出義務の対象となったダニによる寄生虫感染症バベシア症もダニ媒介性感染症の発生率の上昇に寄与していた。一方、蚊媒介性感染症で特に多かったのはウエストナイル熱やデング熱、ジカ熱だった。.さらに、こうした節足動物媒介ウイルス感染症がみられた地域は拡大傾向にあること、また地域によって報告数が多い感染症の種類が異なることも分かった。例えば、ダニ媒介性感染症は75%以上を占め全米各地で発生しているが、特に東部および太平洋沿岸地域で多く、蚊媒介性感染症のうちウエストナイル熱は米大陸部で地方病として周期的な流行がみられ、デング熱やチクングニア熱、ジカ熱の報告はほとんどがプエルトリコや米領サモア、米領バージン諸島に集中していた。.研究グループの一員でNCEZIDのLyle Petersen氏は「今回の調査データから、ダニ媒介性感染症が増加傾向にあることや、感染地域が拡大していることが分かった。また、蚊媒介性感染症の国外からの流入も加速していることも明らかになった」と説明している。.今回の調査結果を踏まえ、研究グループは「各州および地域の保健当局や感染症を媒介する生物を管理する組織がこうした害虫への対策を強化できるよう、サポートする必要がある」と結論づけている。また、「サポートを強化することで、これらの感染症や害虫の検査や、感染の予防や制御を担うスタッフの訓練、一般市民への害虫の咬傷から身を守る方法の啓発などをさらに充実させることができる」としている。.これを受け、米国感染症学会(IDSA)会長のPaul Auwaerter氏は「ライム病やジカ熱など、節足動物媒介性ウイルス感染症によってもたらされる苦しみは極めて大きく、患者やその家族に与える影響は計り知れない。これまで何度となく、こうした感染症による苦痛の軽減を望む数多くの患者を診てきたが、われわれも患者と同様に解決策を求めている」と話している。.また、米レノックス・ヒル病院の救急医であるRobert Glatter氏は、一般の人々にも蚊やダニに咬まれないよう意識してほしいと呼び掛けている。その具体策として、長袖と長ズボンを着用し、特にダニに咬まれるリスクが高い森林や草が多い場所を歩くときは、必ず適切な虫よけを使用するよう助言している。そのほかに、ペットを飼っている人は、定期的にペットにダニが潜んでいないか確認してほしいとしている。(HealthDay News 2018年5月1日).https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/tick-borne-illness-1000/u-s-illnesses-tied-to-ticks-mosquitoes-are-soaring-733509.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.