経験豊かな皮膚科医よりも人工知能(AI)の方がメラノーマの診断精度が高い可能性があることが、ハイデルベルク大学(ドイツ)のHolger Haenssle氏らによる研究から明らかになった。この研究では、58人の皮膚科医よりも「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれるAIの手法を用いたコンピューター・アルゴリズムの方が、ダーモスコピーによる診断で、メラノーマを見逃したり良性のほくろをメラノーマと誤診したりする確率が低いことが示されたという。この研究結果は「Annals of Oncology」5月28日オンライン版に掲載された。今回の研究を含め診断にAIを用いた複数の研究で、ヒトの脳の神経ネットワークを模倣した深層学習のアルゴリズムが使用されている。Haenssle氏らは今回、深層学習のアルゴリズムを用いたAIと17カ国から参加した58人の皮膚科医を対抗させ、メラノーマと良性のほくろとを正確に鑑別する能力を比較検討した。なお、参加医師のうち30人には皮膚科専門医としての経験が5年以上あり、自身を「専門医」だと認識していた。.研究ではまず、医師にメラノーマと良性のほくろのダーモスコピー画像計100点を評価してもらった。その4週間後、それぞれの画像に写ったメラノーマまたはほくろの持ち主である患者の年齢や病変の位置といった特徴について詳細な情報を提供し、実臨床に近付けた上で、再び同じ画像を評価してもらった。.その結果、ダーモスコピーの画像のみを見た段階では皮膚科医によるメラノーマ診断の感度は86.6%、特異度は71.3%だった。しかし、AIによるメラノーマ診断の感度は95%とより高く、特異度は63.8%だった。また、患者や病変の特徴など詳細な情報を提供した上で再び同じ画像を評価してもらった結果、皮膚科医によるメラノーマ診断の感度は88.9%、特異度は75.7%に上昇した。一方、AIによるメラノーマ診断の感度は皮膚科医と同程度であったが、特異度は82.5%とより優れていた。.今回の研究ではAIによる診断精度が多くの皮膚科医を上回ることが明らかになったが、この研究を率いたHaenssle氏は「将来、皮膚がん診断においてAIが医師に取って代わることにはならないだろう」との見方を示し、「将来的にはAIを診断の補助に用いることで、医師はよりがんの疑いが強い皮膚病変に集中できるようになるかもしれない。またダーモスコピー画像の分析にもAIを使用できる可能性がある」と期待を示している。.一方、専門家の一人で米ニューヨーク大学ランゴン医療センター皮膚科学のMary Stevenson氏は、Haenssle氏の意見に同意した上で「この研究はメラノーマと良性のほくろの鑑別にのみ焦点を合わせたものだが、ほくろの鑑別だけでは皮膚がんの診断はできない」と指摘している。.また、メラノーマを早期に発見する対策には、Stevenson氏は「皮膚にがんが疑われる部分がないかどうか全身をくまなく検査してもらい、どのように経過観察をしていくべきか医師に相談すべきだ」と助言。さらに、月に1回は鏡の前に立って自分の身体をチェックすることも勧めている。(HealthDay News 2018年5月31日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/skin-cancer-news-108/ai-better-than-docs-at-catching-skin-cancers-734377.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
経験豊かな皮膚科医よりも人工知能(AI)の方がメラノーマの診断精度が高い可能性があることが、ハイデルベルク大学(ドイツ)のHolger Haenssle氏らによる研究から明らかになった。この研究では、58人の皮膚科医よりも「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれるAIの手法を用いたコンピューター・アルゴリズムの方が、ダーモスコピーによる診断で、メラノーマを見逃したり良性のほくろをメラノーマと誤診したりする確率が低いことが示されたという。この研究結果は「Annals of Oncology」5月28日オンライン版に掲載された。今回の研究を含め診断にAIを用いた複数の研究で、ヒトの脳の神経ネットワークを模倣した深層学習のアルゴリズムが使用されている。Haenssle氏らは今回、深層学習のアルゴリズムを用いたAIと17カ国から参加した58人の皮膚科医を対抗させ、メラノーマと良性のほくろとを正確に鑑別する能力を比較検討した。なお、参加医師のうち30人には皮膚科専門医としての経験が5年以上あり、自身を「専門医」だと認識していた。.研究ではまず、医師にメラノーマと良性のほくろのダーモスコピー画像計100点を評価してもらった。その4週間後、それぞれの画像に写ったメラノーマまたはほくろの持ち主である患者の年齢や病変の位置といった特徴について詳細な情報を提供し、実臨床に近付けた上で、再び同じ画像を評価してもらった。.その結果、ダーモスコピーの画像のみを見た段階では皮膚科医によるメラノーマ診断の感度は86.6%、特異度は71.3%だった。しかし、AIによるメラノーマ診断の感度は95%とより高く、特異度は63.8%だった。また、患者や病変の特徴など詳細な情報を提供した上で再び同じ画像を評価してもらった結果、皮膚科医によるメラノーマ診断の感度は88.9%、特異度は75.7%に上昇した。一方、AIによるメラノーマ診断の感度は皮膚科医と同程度であったが、特異度は82.5%とより優れていた。.今回の研究ではAIによる診断精度が多くの皮膚科医を上回ることが明らかになったが、この研究を率いたHaenssle氏は「将来、皮膚がん診断においてAIが医師に取って代わることにはならないだろう」との見方を示し、「将来的にはAIを診断の補助に用いることで、医師はよりがんの疑いが強い皮膚病変に集中できるようになるかもしれない。またダーモスコピー画像の分析にもAIを使用できる可能性がある」と期待を示している。.一方、専門家の一人で米ニューヨーク大学ランゴン医療センター皮膚科学のMary Stevenson氏は、Haenssle氏の意見に同意した上で「この研究はメラノーマと良性のほくろの鑑別にのみ焦点を合わせたものだが、ほくろの鑑別だけでは皮膚がんの診断はできない」と指摘している。.また、メラノーマを早期に発見する対策には、Stevenson氏は「皮膚にがんが疑われる部分がないかどうか全身をくまなく検査してもらい、どのように経過観察をしていくべきか医師に相談すべきだ」と助言。さらに、月に1回は鏡の前に立って自分の身体をチェックすることも勧めている。(HealthDay News 2018年5月31日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/skin-cancer-news-108/ai-better-than-docs-at-catching-skin-cancers-734377.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.