2HDN糖尿病ニュース7月5日配信2
image_print
疾患・分野別ニュース/糖尿病/

イオン液体利用の薬物送達で「経口インスリン」実現の可能性

多くの糖尿病患者にとって、1日数回のインスリン注射は痛みを伴い、治療を続ける上で大きな負担となっている。今回、米ハーバード大学の研究グループはラットの実験で、インスリンを経口投与する新しい方法を開発したと「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」6月25日オンライン版に発表した。インスリンの薬物送達にイオン液体を利用した結果、インスリンの経口投与はラットの血糖値を有意に低下させ、その状態をしばらく維持できたことが確認されたという。

経口インスリン開発には多くの障壁が立ちはだかっている。インスリンは胃の消化作用で壊れやすく、胃酸を逃れたとしても分子が大きいインスリンは腸壁を通過できないとされているためだ。

そこで研究グループは、インスリンが腸壁を通過できる方法として、室温で液体として存在する塩(えん)であるイオン液体に着目。コリンとゲラネート(CAGE)のイオン液体にインスリンを混ぜて、このインスリン-イオン液体をラットの空腸に直接投与したところ、インスリンはイオン液体の助けで大腸壁を通過し、血液中に入ることが確認された。体重1kg当たり3~10単位の低用量でも、ラットの血糖値は少なくとも12時間は有意に低下した状態が保たれていた。

さらに、研究グループは、このインスリン-イオン液体が胃を無事に通過して小腸で溶けるように、経口投与可能なカプセル剤を設計した。ラットに、このカプセル剤(体重1kg当たり10単位)を経口投与したところ、血糖値は最大で45%低下し、その状態がしばらく維持されることが分かった。

論文の最終著者で同大学生物工学教授のSamir Mitragotri氏は、経口インスリンの利点として注射剤よりも常温保存しやすい点を挙げる。現状のインスリン製剤は常温で約28日間保存できるが、この経口インスリンは少なくとも常温で2カ月間、冷蔵では4カ月間保存できるという。また、インスリンの過量投与は低血糖をもたらす危険性があるが、同氏は、今回の経口インスリンは放出されるまでに時間を要するため低血糖リスクも少ないと指摘している。

この経口インスリンには用量設定やきちんと薬剤が血液中に送達されるのか、ヒトでも効果を発揮するのかなどの数々の問題がある。Mitragotri氏は、さらなる研究の必要性を認めながらも、「うまくいけば3~5年のうちに臨床試験に進めるのではないか」と期待を示し、「ラットの実験では、この方法を用いると経口インスリンを腸内まで無事に届けることができた。これは非侵襲的で患者に優しい治療法になるだろう」と話している。

なお、経口インスリン製剤の価格は今のところ不明だが、イオン液体やカプセルのコーティング材は高価なものではないため、既存のインスリン製剤とあまり変わらない価格になることが予想されるという。

米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センターのセンター長を務めるJoel Zonszein氏は「インスリンの新しい薬物送達システムに関する研究は、大いに歓迎される。今回のラットの実験で得られた結果は、過去のものよりも実現の可能性が高い印象を持った。ただし、インスリンの放出は変動が大きいため、経口薬が実際に利用できるようになるかどうかは不明だ」としている。(HealthDay News 2018年6月25日)

https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/insulin-news-414/will-the-future-be-needle-free-for-diabetics-735144.html

Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.

RELATED ARTICLES