米国では、耳が聞こえづらくなっても、高価だからという理由で補聴器を使わない人が多いことが、新たな研究で明らかになった。補聴器を装着するのを恥ずかしいと感じる人も多かったという。「The Gerontologist」5月21日オンライン版に掲載された論文の筆頭著者で米ミシガン大学家庭医学のMichael McKee氏は「理由が何であれ、聴力の低下(難聴)をそのまま放置すると心理面や身体面、認知機能に大きな影響を及ぼし、失業にもつながりやすい」とその影響力の大きさを指摘している。McKee氏らは今回、米国の健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study;HRS)に参加した聴力の低下がみられる55歳以上の男女3万5,572人を対象に、補聴器の使用実態を調べた。このうち21人では対面調査を実施して詳しく話を聞いた。.その結果、全ての対象者のうち、補聴器を使用している人は約3分の1にとどまっていた。80歳代では57%が補聴器を使用していたが、50歳代後半では15%に過ぎなかった。また、補聴器を使わない理由には、「費用が高い」「保険が適用されない」「見栄や恥ずかしさ」といった回答のほかにも、「かかりつけ医の関心が薄い」「信頼できる聴覚訓練士がいない」などが挙げられた。.補聴器の使用率には人種差もみられ、白人(40%)に比べて黒人(18%)やヒスパニック系(21%)で低かった。また、大学教育を受けた人では45%以上が補聴器を使用していたが、高校を卒業していない人では29%に満たなかった。さらに、所得が最も低い層では、最も高い層に比べて補聴器の使用率は4分の1程度と低かった。一方で、退役軍人では補聴器を購入する際に補助が出る場合が多いことが影響したのか、55~64歳における補聴器の使用率は退役軍人でない人の2倍に上っていた。.米国では、補聴器の自己負担額は2,000~7,000ドル(約23万~79万円)であり、メディケア(65歳以上の人や身体障害者などを対象とする公的医療保険制度)を始めとするほとんどの医療保険は適用されていない。なお、米国では、聴力の低下がみられる人の割合は50歳代では30%ほどだが、60歳代では45%、70歳代では70%、80歳代では90%と加齢に伴って上昇するとされている。.米国聴覚学会(AAA)会長のJackie Clark氏は、専門家の立場から「補聴器の使用を阻む障壁は、費用だけではない」と指摘。その理由は複雑で、米国社会の文化的背景も影響しているのではとの見方を示す。また、同氏によれば、聴覚の研究は第二次世界大戦後、多くの退役軍人が爆弾の影響で聴力障害を負って帰還したのが始まりで、その歴史は比較的浅いという。同氏は「補聴器が広く受け入れられるためには保険で費用をカバーするほかに、補聴器の有用性について広く理解してもらうことが重要だ」と強調し、有名人が装着する姿を見せることも、補聴器は格好悪いものではないことをアピールする一つの手段になるのではないかと話している。(HealthDay News 2018年7月5日).https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/hearing-aid-news-350/cost-keeps-many-americans-from-getting-hearing-aids-735320.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
米国では、耳が聞こえづらくなっても、高価だからという理由で補聴器を使わない人が多いことが、新たな研究で明らかになった。補聴器を装着するのを恥ずかしいと感じる人も多かったという。「The Gerontologist」5月21日オンライン版に掲載された論文の筆頭著者で米ミシガン大学家庭医学のMichael McKee氏は「理由が何であれ、聴力の低下(難聴)をそのまま放置すると心理面や身体面、認知機能に大きな影響を及ぼし、失業にもつながりやすい」とその影響力の大きさを指摘している。McKee氏らは今回、米国の健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study;HRS)に参加した聴力の低下がみられる55歳以上の男女3万5,572人を対象に、補聴器の使用実態を調べた。このうち21人では対面調査を実施して詳しく話を聞いた。.その結果、全ての対象者のうち、補聴器を使用している人は約3分の1にとどまっていた。80歳代では57%が補聴器を使用していたが、50歳代後半では15%に過ぎなかった。また、補聴器を使わない理由には、「費用が高い」「保険が適用されない」「見栄や恥ずかしさ」といった回答のほかにも、「かかりつけ医の関心が薄い」「信頼できる聴覚訓練士がいない」などが挙げられた。.補聴器の使用率には人種差もみられ、白人(40%)に比べて黒人(18%)やヒスパニック系(21%)で低かった。また、大学教育を受けた人では45%以上が補聴器を使用していたが、高校を卒業していない人では29%に満たなかった。さらに、所得が最も低い層では、最も高い層に比べて補聴器の使用率は4分の1程度と低かった。一方で、退役軍人では補聴器を購入する際に補助が出る場合が多いことが影響したのか、55~64歳における補聴器の使用率は退役軍人でない人の2倍に上っていた。.米国では、補聴器の自己負担額は2,000~7,000ドル(約23万~79万円)であり、メディケア(65歳以上の人や身体障害者などを対象とする公的医療保険制度)を始めとするほとんどの医療保険は適用されていない。なお、米国では、聴力の低下がみられる人の割合は50歳代では30%ほどだが、60歳代では45%、70歳代では70%、80歳代では90%と加齢に伴って上昇するとされている。.米国聴覚学会(AAA)会長のJackie Clark氏は、専門家の立場から「補聴器の使用を阻む障壁は、費用だけではない」と指摘。その理由は複雑で、米国社会の文化的背景も影響しているのではとの見方を示す。また、同氏によれば、聴覚の研究は第二次世界大戦後、多くの退役軍人が爆弾の影響で聴力障害を負って帰還したのが始まりで、その歴史は比較的浅いという。同氏は「補聴器が広く受け入れられるためには保険で費用をカバーするほかに、補聴器の有用性について広く理解してもらうことが重要だ」と強調し、有名人が装着する姿を見せることも、補聴器は格好悪いものではないことをアピールする一つの手段になるのではないかと話している。(HealthDay News 2018年7月5日).https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/hearing-aid-news-350/cost-keeps-many-americans-from-getting-hearing-aids-735320.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.