女性が卵子の凍結保存を選ぶ理由は、必ずしもキャリアのためではないことが、米イェール大学人類学教授のMarcia Inhorn氏らが実施した調査から明らかになった。米国などの不妊治療クリニックで卵子凍結の処置を受けた女性150人を対象としたこの調査では、キャリアのために卵子凍結を選んだ女性は極めて少なく、パートナーがいないか、パートナーがいても安定した関係にないために卵子凍結を決断した女性がほとんどを占めていたことが分かった。この調査結果は、欧州ヒト生殖医学会(ESHRE 2018、7月1~4日、スペイン・バルセロナ)で発表された。Inhorn氏らは今回、米国とイスラエルの不妊治療クリニックで凍結保存のために卵子を採取した29~42歳の女性150人(米国114人、イスラエル36人)を対象に、聞き取り調査を実施した。このうち73%を35~39歳の女性が占めていた。.その結果、対象者の85%にはパートナーがいなかった。こうした女性にはもともと独身だった女性のほか、離婚や恋人と別れた女性、シングルマザーを選んだ女性などが含まれていた。しかし、パートナーのいない女性のうち、キャリア計画を理由に卵子の凍結を選んだ女性はほとんどいなかった。.一方、残る15%にはパートナーがいたが、それでも卵子の凍結を選択した理由には、「子どもを持つことにパートナーが同意しなかった」「パートナーとの関係が安定していなかった」などが挙げられた。.この調査結果を踏まえ、「女性はキャリアを優先したいという身勝手な理由で卵子の凍結保存を選択している、という見方は誤っている」とInhorn氏は指摘する。また、卵子凍結を選んだ女性のほとんどは仕事で成功を収めていたが、男性との真剣な交際を望んでいるにもかかわらず実現できていなかった。そのため、同氏は「キャリアよりもパートナーシップの問題の方が、女性に卵子凍結の選択を迫る主な要因になっているのではないか」と説明している。.なお、米国では2013年に実施された卵子凍結は約5,000件だったが、2018年には7万6,000件に達すると予測されている。凍結する卵子の採取に必要な費用は1周期当たり5,000~1万5,000ドル(約56万~170万円)で、このほかに薬剤費が2,000~6,000ドル(約23万~68万)、凍結した卵子の保存に年間500~1,000ドル(約5万6,000~11万3,000円;採取後1年以降)かかるとみられている。.凍結保存のために採取すべき卵子の数は明確にされていないが、Inhorn氏とともに調査を実施した同大学のPasquale Patrizio氏は、これまでのデータに基づき35歳未満の女性は10~12個、35歳以上の女性は妊娠する確率を高めるために約20個の卵子の凍結を勧めているという。.専門家の一人で米ノースウェル・ヘルス・ファーティリティーのTomer Singer氏は、今回の調査結果は実臨床での経験と一致するとした上で、「パートナーを見つけられない女性や、現在のパートナーとの関係にあまり満足していない女性は少なくない。彼女たちは『すぐに理想の男性が現れる』とは考えず、バックアップのための選択肢として卵子の凍結保存を選んでいるのではないか」と話している。なお、学会で発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2018年7月10日).https://consumer.healthday.com/pregnancy-information-29/pregnancy-news-543/it-s-men-not-careers-that-drive-women-to-freeze-their-eggs-735559.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
女性が卵子の凍結保存を選ぶ理由は、必ずしもキャリアのためではないことが、米イェール大学人類学教授のMarcia Inhorn氏らが実施した調査から明らかになった。米国などの不妊治療クリニックで卵子凍結の処置を受けた女性150人を対象としたこの調査では、キャリアのために卵子凍結を選んだ女性は極めて少なく、パートナーがいないか、パートナーがいても安定した関係にないために卵子凍結を決断した女性がほとんどを占めていたことが分かった。この調査結果は、欧州ヒト生殖医学会(ESHRE 2018、7月1~4日、スペイン・バルセロナ)で発表された。Inhorn氏らは今回、米国とイスラエルの不妊治療クリニックで凍結保存のために卵子を採取した29~42歳の女性150人(米国114人、イスラエル36人)を対象に、聞き取り調査を実施した。このうち73%を35~39歳の女性が占めていた。.その結果、対象者の85%にはパートナーがいなかった。こうした女性にはもともと独身だった女性のほか、離婚や恋人と別れた女性、シングルマザーを選んだ女性などが含まれていた。しかし、パートナーのいない女性のうち、キャリア計画を理由に卵子の凍結を選んだ女性はほとんどいなかった。.一方、残る15%にはパートナーがいたが、それでも卵子の凍結を選択した理由には、「子どもを持つことにパートナーが同意しなかった」「パートナーとの関係が安定していなかった」などが挙げられた。.この調査結果を踏まえ、「女性はキャリアを優先したいという身勝手な理由で卵子の凍結保存を選択している、という見方は誤っている」とInhorn氏は指摘する。また、卵子凍結を選んだ女性のほとんどは仕事で成功を収めていたが、男性との真剣な交際を望んでいるにもかかわらず実現できていなかった。そのため、同氏は「キャリアよりもパートナーシップの問題の方が、女性に卵子凍結の選択を迫る主な要因になっているのではないか」と説明している。.なお、米国では2013年に実施された卵子凍結は約5,000件だったが、2018年には7万6,000件に達すると予測されている。凍結する卵子の採取に必要な費用は1周期当たり5,000~1万5,000ドル(約56万~170万円)で、このほかに薬剤費が2,000~6,000ドル(約23万~68万)、凍結した卵子の保存に年間500~1,000ドル(約5万6,000~11万3,000円;採取後1年以降)かかるとみられている。.凍結保存のために採取すべき卵子の数は明確にされていないが、Inhorn氏とともに調査を実施した同大学のPasquale Patrizio氏は、これまでのデータに基づき35歳未満の女性は10~12個、35歳以上の女性は妊娠する確率を高めるために約20個の卵子の凍結を勧めているという。.専門家の一人で米ノースウェル・ヘルス・ファーティリティーのTomer Singer氏は、今回の調査結果は実臨床での経験と一致するとした上で、「パートナーを見つけられない女性や、現在のパートナーとの関係にあまり満足していない女性は少なくない。彼女たちは『すぐに理想の男性が現れる』とは考えず、バックアップのための選択肢として卵子の凍結保存を選んでいるのではないか」と話している。なお、学会で発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2018年7月10日).https://consumer.healthday.com/pregnancy-information-29/pregnancy-news-543/it-s-men-not-careers-that-drive-women-to-freeze-their-eggs-735559.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.