山の頂上まで登ったり、高層ビルの最上階まで上がったりすることに恐怖心を抱く高所恐怖症の人には、バーチャルリアリティーを用いた精神療法が有効かもしれない。高所が苦手な成人を対象としたランダム化比較試験(RCT)の結果、頭部装着型ディスプレーとハンドコントローラーを使ったバーチャルリアリティーでの精神療法によって、高所に対する恐怖心が軽減されることが分かった。詳細は「The Lancet Psychiatry」7月11日オンライン版に発表された。この試験は、英オックスフォード大学臨床心理学教授のDaniel Freeman氏が主導したもの。ラジオの宣伝で高所に対して恐怖心を抱いている18歳以上の男女を募集し、高所に対する恐怖心の程度を評価する質問票(Heights Interpretation Questionnaire;HIQ)のスコアが29点を上回っていた100人を対象にRCTを実施した。対象者のうち49人をバーチャルリアリティーによる精神療法を行う群(バーチャルリアリティー群)に、51人を通常ケア群(対照群)にランダムに割り付けて4週間追跡した。.バーチャルリアリティー群では、30分間の治療セッションを週に2~3回のペースで2週間にわたり実施した。治療では、仮想空間でバーチャルの指導者が高所に対する恐怖心を克服するための指導を行った。また、セッションを通じて徐々に高所に慣れさせるため、仮想空間の中でビルの上層階で吹き抜けに面したフロアに出てみたり、木によじ登って下りられなくなったネコを助けたりするなどの経験を積ませた。.その結果、対照群と比べてバーチャルリアリティー群では、治療終了時に高所に対する恐怖心の程度が減弱していた。ベースライン時から2週後までのHIQスコアの変化量は、対照群の1.2ポイント減に対してバーチャルリアリティー群では24.5ポイント減と大幅な減少が認められた。この効果は、治療終了時から2週後までの追跡期間中においても継続してみられた。.Freeman氏は「バーチャルリアリティーの世界では、日常生活で遭遇するトラブルを何度も再現して訓練することができる。現実の世界では警戒心を抱くような状況でも、バーチャルリアリティーの世界でシミュレーションしていれば挑戦しようという気持ちになる。こうして身につけた力は日常生活でも大きなベネフィットをもたらす点が、この治療法の素晴らしい点だ」と話す。.なお、RCTの参加者にバーチャルリアリティー治療の感想を尋ねたところ、一人は「4回の治療セッション後に、高所に対する気持ちをコントロールする能力に驚くべき変化があった」と話し、もう一人は「普段の生活で崖の縁や階段、高い場所が以前ほど怖くなくなってきたことに気が付いた」と話しており、いずれもその治療効果を認めている。.今回の報告を受け、米ノーザン・ウェストチェスター病院精神科のRichard Catanzaro氏は「恐怖症には認知行動療法(CBT)やCBTをベースとした曝露療法が標準的な治療とされているが、治療に時間がかかることや資格を有するセラピストしか行えないといった課題があった」と指摘。今回報告されたバーチャルリアリティーによる精神療法については、「セラピストがいなくても安全に行えるのではないか」と期待を寄せているが、実臨床で用いるまでにはさらなる研究が必要だと付け加えている。(HealthDay News 2018年7月12日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/fears-and-phobias-health-news-304/virtual-reality-therapy-edges-out-fear-of-heights-735699.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
山の頂上まで登ったり、高層ビルの最上階まで上がったりすることに恐怖心を抱く高所恐怖症の人には、バーチャルリアリティーを用いた精神療法が有効かもしれない。高所が苦手な成人を対象としたランダム化比較試験(RCT)の結果、頭部装着型ディスプレーとハンドコントローラーを使ったバーチャルリアリティーでの精神療法によって、高所に対する恐怖心が軽減されることが分かった。詳細は「The Lancet Psychiatry」7月11日オンライン版に発表された。この試験は、英オックスフォード大学臨床心理学教授のDaniel Freeman氏が主導したもの。ラジオの宣伝で高所に対して恐怖心を抱いている18歳以上の男女を募集し、高所に対する恐怖心の程度を評価する質問票(Heights Interpretation Questionnaire;HIQ)のスコアが29点を上回っていた100人を対象にRCTを実施した。対象者のうち49人をバーチャルリアリティーによる精神療法を行う群(バーチャルリアリティー群)に、51人を通常ケア群(対照群)にランダムに割り付けて4週間追跡した。.バーチャルリアリティー群では、30分間の治療セッションを週に2~3回のペースで2週間にわたり実施した。治療では、仮想空間でバーチャルの指導者が高所に対する恐怖心を克服するための指導を行った。また、セッションを通じて徐々に高所に慣れさせるため、仮想空間の中でビルの上層階で吹き抜けに面したフロアに出てみたり、木によじ登って下りられなくなったネコを助けたりするなどの経験を積ませた。.その結果、対照群と比べてバーチャルリアリティー群では、治療終了時に高所に対する恐怖心の程度が減弱していた。ベースライン時から2週後までのHIQスコアの変化量は、対照群の1.2ポイント減に対してバーチャルリアリティー群では24.5ポイント減と大幅な減少が認められた。この効果は、治療終了時から2週後までの追跡期間中においても継続してみられた。.Freeman氏は「バーチャルリアリティーの世界では、日常生活で遭遇するトラブルを何度も再現して訓練することができる。現実の世界では警戒心を抱くような状況でも、バーチャルリアリティーの世界でシミュレーションしていれば挑戦しようという気持ちになる。こうして身につけた力は日常生活でも大きなベネフィットをもたらす点が、この治療法の素晴らしい点だ」と話す。.なお、RCTの参加者にバーチャルリアリティー治療の感想を尋ねたところ、一人は「4回の治療セッション後に、高所に対する気持ちをコントロールする能力に驚くべき変化があった」と話し、もう一人は「普段の生活で崖の縁や階段、高い場所が以前ほど怖くなくなってきたことに気が付いた」と話しており、いずれもその治療効果を認めている。.今回の報告を受け、米ノーザン・ウェストチェスター病院精神科のRichard Catanzaro氏は「恐怖症には認知行動療法(CBT)やCBTをベースとした曝露療法が標準的な治療とされているが、治療に時間がかかることや資格を有するセラピストしか行えないといった課題があった」と指摘。今回報告されたバーチャルリアリティーによる精神療法については、「セラピストがいなくても安全に行えるのではないか」と期待を寄せているが、実臨床で用いるまでにはさらなる研究が必要だと付け加えている。(HealthDay News 2018年7月12日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/fears-and-phobias-health-news-304/virtual-reality-therapy-edges-out-fear-of-heights-735699.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.