1HDN8月30日「パッケージニュース」No.4
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腸内酵素で血液型を変換、輸血用血液不足の解消に光

ヒトの腸内細菌に存在する酵素を用いることで、A型やB型の血液をO型に変えることに成功したとする研究結果が、米国化学会(ACS、8月19~23日、米ボストン)で発表された。O型はA型やB型の人にも献血が可能な「ユニバーサルな血液型」であるため、この新しい技術の実用化は輸血用製剤の供給量を増やすための手段として有望視されている。

この研究は、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)生化学教授のStephen Withers氏らが実施したもの。同氏らによると、これまでにもさまざまな酵素で血液型の変換に成功したとする報告はあったが、今回Withers氏らが同定した酵素は、それらの約30倍のスピードでO型に変えることができるという。

献血された血液を輸血する場合、血液型が合わないと重篤な免疫反応が起こり、死に至る可能性もあるが、O型の血液だけはA型やB型の人にも輸血することができる。Withers氏によれば、その理由は、赤血球の表面にある糖鎖の違いにあるという。O型の糖鎖は基本型(H抗原)とフコースと呼ばれる糖のみで構成されているが、A型とB型ではO型と同じ糖鎖の末端にそれぞれに特有の糖(抗原)が、AB型ではA型とB型の両方の糖が結合している。A型とB型の人の血液にはそれぞれB型とA型の糖に対する抗体があるため、血液型が不適合な血液を輸血すると免疫反応が起こるが、O型ではこうした問題は起こらない。

そこで、A型やB型の血液の糖鎖の末端にある糖を取り除けば、より多くの人に輸血できるO型の血液に変えられるのではないかという発想が生まれた。なお、糖を除去する手段として酵素を用いた研究はWithers氏の研究が初めてではなく、1982年にもB型の血液をO型に変換できたとする報告がある。ただ、この時に使われた酵素はO型に変えるのに時間がかかり、効率も悪かった。

その後、新たに開発された遺伝子解析によって、より効率的にO型に変えることのできる酵素を見つけやすくなった。Withers氏らも今回、この新しい技術によって腸内細菌が産生する酵素を調べた。腸内細菌に着目したのは、腸壁の糖には血液型をA型かB型かを決める糖と類似したものがあるためだという。

その結果、Withers氏らはA型の糖を特異的に除去するとみられる酵素を見いだした。「特異度の高さ、すなわちA型の糖だけを取り除くことは極めて重要だ。赤血球にそれ以外の変化を与えると、輸血した人の免疫反応を誘発する可能性がある」と同氏は説明する。なお、同氏らは次の段階として、最も効率的に糖を除去できる酵素を作り出したいとしている。

今回の研究報告を受け、米国赤十字社のチーフメディカルオフィサーであるPampee Young氏は「革新的かつ興味深いアプローチだ。この新しい技術の実用化によって、輸血用血液不足の問題が解消に向かうことが期待される」とコメントしている。なお、学会発表された研究は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2018年8月21日)

https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/research-and-development-health-news-578/gut-enzyme-could-help-solve-u-s-blood-shortages-736932.html

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