ジカ熱の原因ウイルスであるジカウイルスは、妊婦が感染すると新生児の小頭症リスクが高まることが知られ、世界的に問題視されている。しかし、このジカウイルスが脳細胞に感染する能力を活用することで、悪性度の高い脳腫瘍の一つである膠芽腫の治療に応用できる可能性があることが、マウスを用いた実験で示された。ジカウイルスの弱毒化生ワクチン候補と再発の原因となる膠芽腫幹細胞をマウスの脳に注入したところ、腫瘍の成長を抑えられることが分かったという。詳細は「mBIO」9月18日オンライン版に掲載された。膠芽腫は成人の脳腫瘍の中でも最も一般的で悪性度が高い。米国では年間1万5,000人が膠芽腫で死亡すると推計されており、上院議員だった故ジョン・マケイン氏やエドワード・ケネディ氏も膠芽腫を患っていたことが知られている。.この研究は、米テキサス大学医学部ガルベストン校のPei-Yong Shi氏と中国軍事医学科学院のCheng-Feng Qin氏らが率いる国際共同研究チームが行ったもの。同氏らはまず、培養組織とモデルマウスを用いた実験で、ジカウイルスが膠芽腫幹細胞を攻撃することを確認した。次に、研究グループが既に開発していたジカウイルスの弱毒化生ワクチン候補と膠芽腫幹細胞を混合してマウスの脳に注入する実験を行った。別のマウスには、ワクチン候補を混合せず膠芽腫幹細胞のみを注入した。.その結果、膠芽腫幹細胞のみを注入したマウスの脳では急速に膠芽腫が発生したのに対し、ジカウイルスワクチン候補を注入したマウスでは腫瘍の成長は抑えられ、膠芽腫の発生は緩やかであることが分かった。また、マウスの生存期間(中央値)は膠芽腫幹細胞のみを注入したマウスは30日だったのに対し、ワクチン候補を投与したマウスでは48日と長いことも明らかになった。.Qin氏らによると、ジカウイルスの能力を利用することで腫瘍が再発する原因となる膠芽腫幹細胞を標的として選択的に攻撃できるという。同氏は「膠芽腫幹細胞を標的とした治療が開発できれば、膠芽腫の再発を抑えられるだけでなく治癒も目指せるだろう」と話している。その上で、「この研究はごく初期段階のものだが、将来的には膠芽腫に対する外科治療と同時にジカウイルスワクチンを投与する治療が実現する可能性がある」と展望している。.一方、専門家の一人で米ノースショア大学病院のMichael Schulder氏は「膠芽腫の治療は動物実験で有望とされても、その後の研究がうまくいかないものが多い。しかし、今回の研究でジカウイルスの脅威をうまく利用した発想は独創的だ」と話している。なお、Shi氏らは、次のステップとして膠芽腫患者を対象にこの方法の安全性を評価する試験を実施したいとしている。(HealthDay News 2018年9月18日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/brain-cancer-news-93/could-the-zika-virus-fight-the-brain-cancer-that-killed-john-mccain-737827.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
ジカ熱の原因ウイルスであるジカウイルスは、妊婦が感染すると新生児の小頭症リスクが高まることが知られ、世界的に問題視されている。しかし、このジカウイルスが脳細胞に感染する能力を活用することで、悪性度の高い脳腫瘍の一つである膠芽腫の治療に応用できる可能性があることが、マウスを用いた実験で示された。ジカウイルスの弱毒化生ワクチン候補と再発の原因となる膠芽腫幹細胞をマウスの脳に注入したところ、腫瘍の成長を抑えられることが分かったという。詳細は「mBIO」9月18日オンライン版に掲載された。膠芽腫は成人の脳腫瘍の中でも最も一般的で悪性度が高い。米国では年間1万5,000人が膠芽腫で死亡すると推計されており、上院議員だった故ジョン・マケイン氏やエドワード・ケネディ氏も膠芽腫を患っていたことが知られている。.この研究は、米テキサス大学医学部ガルベストン校のPei-Yong Shi氏と中国軍事医学科学院のCheng-Feng Qin氏らが率いる国際共同研究チームが行ったもの。同氏らはまず、培養組織とモデルマウスを用いた実験で、ジカウイルスが膠芽腫幹細胞を攻撃することを確認した。次に、研究グループが既に開発していたジカウイルスの弱毒化生ワクチン候補と膠芽腫幹細胞を混合してマウスの脳に注入する実験を行った。別のマウスには、ワクチン候補を混合せず膠芽腫幹細胞のみを注入した。.その結果、膠芽腫幹細胞のみを注入したマウスの脳では急速に膠芽腫が発生したのに対し、ジカウイルスワクチン候補を注入したマウスでは腫瘍の成長は抑えられ、膠芽腫の発生は緩やかであることが分かった。また、マウスの生存期間(中央値)は膠芽腫幹細胞のみを注入したマウスは30日だったのに対し、ワクチン候補を投与したマウスでは48日と長いことも明らかになった。.Qin氏らによると、ジカウイルスの能力を利用することで腫瘍が再発する原因となる膠芽腫幹細胞を標的として選択的に攻撃できるという。同氏は「膠芽腫幹細胞を標的とした治療が開発できれば、膠芽腫の再発を抑えられるだけでなく治癒も目指せるだろう」と話している。その上で、「この研究はごく初期段階のものだが、将来的には膠芽腫に対する外科治療と同時にジカウイルスワクチンを投与する治療が実現する可能性がある」と展望している。.一方、専門家の一人で米ノースショア大学病院のMichael Schulder氏は「膠芽腫の治療は動物実験で有望とされても、その後の研究がうまくいかないものが多い。しかし、今回の研究でジカウイルスの脅威をうまく利用した発想は独創的だ」と話している。なお、Shi氏らは、次のステップとして膠芽腫患者を対象にこの方法の安全性を評価する試験を実施したいとしている。(HealthDay News 2018年9月18日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/brain-cancer-news-93/could-the-zika-virus-fight-the-brain-cancer-that-killed-john-mccain-737827.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.