製薬企業は特定の薬の供給が不足すると値上げする傾向にあることが、米ピッツバーグ大学医療センター保険サービス部門のWilliam Shrank氏らによる調査から明らかになった。在庫が豊富な薬剤の価格上昇率は約9%程度だったのに対し、供給不足に陥っている薬剤は約20%とほぼ2倍になることが分かったという。調査の詳細は「Annals of Internal Medicine」9月17日オンライン版に発表された。Shrank氏らは今回、米食品医薬品局(FDA)の薬剤供給不足に関するデータベースからデータを収集した。2016年に供給不足に陥った60種の薬剤を同定し、供給が不足する前の11カ月間と、不足状態となってから11カ月間の価格の変動を調べた。その結果、価格上昇率は不足する前の11カ月間には約7%だったが、不足してからの11カ月間には約16%に高まっていた。.今回の調査では、同じ薬剤を製造する企業が複数あり、競争が働く場合には、供給不足の状況下でも値上げはされにくくなることも分かった。供給不足時の値上げ率は、薬剤を製造する企業が3社以下の場合は約13%であるのに対し、4社以上の場合には8%にとどまっていた。また、製造企業が3社以下の薬剤の価格上昇率については、供給不足となる前の11カ月間には12%だったが、不足状態になってからの11カ月間には27%に高まっていた。一方で、4社以上が製造する薬剤の価格上昇率はそれぞれ2.5%、4.8%だった。.Shrank氏は「需要と供給に不一致がみられると、それに便乗して製薬企業が値上げをしていることは明白だ」と指摘している。.この結果について、ジェネリック医薬品の業界団体であるAssociation for Accessible Medicines(AAM)の関係者は、限られた期間の古いデータに基づいたものであり、その後2年間にジェネリック業界では平均7%の薬価の下落がみられていることなどを考慮すると時代遅れの結論だと指摘している。.一方で、ヘルスケア消費者団体のFamilies USA啓発・パートナーシップ部門のClaire McAndrew氏にとって、この報告内容に驚きはなかったという。同氏はこの結果について、「これまでに公衆衛生上の危機的な状況や薬剤不足の状況において、われわれが目の当たりにしてきた製薬企業の行動を数値で示したものだ」と説明する。「製薬企業が多額の利益を得るためにそうした状況を利用するのはよくあることだ」とした上で、具体例として、オピオイド過剰摂取時の治療薬であるnaloxone(ナロキソン、日本国内未承認)の価格高騰を挙げている。.その上で、McAndrew氏は「さまざまな段階で政策立案者が薬剤の価格決定やパテントのシステムに関与し、消費者にとってよいものに改善することは可能なはずだ」と主張する。また、調査を実施したShrank氏は供給不足の状況における薬剤の値上げに上限を設けることを提案している。(HealthDay News 2018年9月18日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/prescription-drug-news-551/does-big-pharma-hike-prices-when-meds-are-in-short-supply-737832.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
製薬企業は特定の薬の供給が不足すると値上げする傾向にあることが、米ピッツバーグ大学医療センター保険サービス部門のWilliam Shrank氏らによる調査から明らかになった。在庫が豊富な薬剤の価格上昇率は約9%程度だったのに対し、供給不足に陥っている薬剤は約20%とほぼ2倍になることが分かったという。調査の詳細は「Annals of Internal Medicine」9月17日オンライン版に発表された。Shrank氏らは今回、米食品医薬品局(FDA)の薬剤供給不足に関するデータベースからデータを収集した。2016年に供給不足に陥った60種の薬剤を同定し、供給が不足する前の11カ月間と、不足状態となってから11カ月間の価格の変動を調べた。その結果、価格上昇率は不足する前の11カ月間には約7%だったが、不足してからの11カ月間には約16%に高まっていた。.今回の調査では、同じ薬剤を製造する企業が複数あり、競争が働く場合には、供給不足の状況下でも値上げはされにくくなることも分かった。供給不足時の値上げ率は、薬剤を製造する企業が3社以下の場合は約13%であるのに対し、4社以上の場合には8%にとどまっていた。また、製造企業が3社以下の薬剤の価格上昇率については、供給不足となる前の11カ月間には12%だったが、不足状態になってからの11カ月間には27%に高まっていた。一方で、4社以上が製造する薬剤の価格上昇率はそれぞれ2.5%、4.8%だった。.Shrank氏は「需要と供給に不一致がみられると、それに便乗して製薬企業が値上げをしていることは明白だ」と指摘している。.この結果について、ジェネリック医薬品の業界団体であるAssociation for Accessible Medicines(AAM)の関係者は、限られた期間の古いデータに基づいたものであり、その後2年間にジェネリック業界では平均7%の薬価の下落がみられていることなどを考慮すると時代遅れの結論だと指摘している。.一方で、ヘルスケア消費者団体のFamilies USA啓発・パートナーシップ部門のClaire McAndrew氏にとって、この報告内容に驚きはなかったという。同氏はこの結果について、「これまでに公衆衛生上の危機的な状況や薬剤不足の状況において、われわれが目の当たりにしてきた製薬企業の行動を数値で示したものだ」と説明する。「製薬企業が多額の利益を得るためにそうした状況を利用するのはよくあることだ」とした上で、具体例として、オピオイド過剰摂取時の治療薬であるnaloxone(ナロキソン、日本国内未承認)の価格高騰を挙げている。.その上で、McAndrew氏は「さまざまな段階で政策立案者が薬剤の価格決定やパテントのシステムに関与し、消費者にとってよいものに改善することは可能なはずだ」と主張する。また、調査を実施したShrank氏は供給不足の状況における薬剤の値上げに上限を設けることを提案している。(HealthDay News 2018年9月18日).https://consumer.healthday.com/general-health-information-16/prescription-drug-news-551/does-big-pharma-hike-prices-when-meds-are-in-short-supply-737832.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.