ウイルスや血液の循環が原因で起こるまれな突発性難聴に、高圧酸素療法が有効な可能性があることが、新たな研究で示された。研究を実施した韓国国立海洋医療センターのTae-Min Rhee氏らは、突発性感音難聴と呼ばれる難聴に対しては、標準的な薬物療法に加えて高圧酸素療法を行うのが最も有益な治療選択肢だとしている。研究の詳細は「JAMA Otolaryngology — Head and Neck Surgery」9月27日オンライン版に掲載された。専門家の一人で米レノックス・ヒル病院のDarius Kohan氏によると、突発性感音難聴は約1万人に1人に生じ、ウイルス感染や血液循環の障害が引き金となると考えられているという。患者の3人に1人は治療しなくても聴力は回復するが、残りの3分の2にはステロイドを中心とした薬物療法のほか、内耳の酸素濃度を高める高圧酸素療法が行われている。.Rhee氏らは今回、突発性感音難聴患者を対象に、薬物療法と高圧酸素療法の有効性を比較検討した論文のシステマティックレビューを実施。基準を満たした19件の研究を対象にメタ解析を行った。これらの研究では、薬物療法単独または薬物療法と高圧酸素療法を併用した計2,401人の患者(平均年齢45.4歳、女性55.3%)が対象とされた。.解析の結果、薬物療法と高圧酸素療法を併用した群では、薬物療法単独群に比べ聴力が完全に回復する患者の割合が有意に高く(オッズ比1.61、95%信頼区間1.05~2.44)、平均的な聴力の回復度も併用群で高いことが分かった。さらに、高圧酸素療法は、特に重度の聴力低下がみられる患者で最も有効であることも明らかになった。.このことから、Rhee氏らは「ステロイドなどの薬物療法に高圧酸素療法を併用することは、感音難聴患者にとって合理的な選択肢であるようだ」と述べている。.一方、Kohan氏は、Rhee氏らの研究にはいくつか注意すべき点があると指摘している。例えば、解析の際に、薬物療法の投与量やタイミング、突発性難聴に併発することが多いめまいや耳鳴りの有無などで調整していなかったことが挙げられるという。そのため、「決定的な確証を得るには、さらに厳密な条件で研究を重ねる必要がある」と同氏は強調している。.さらに、高圧酸素療法にかかる費用の問題がある。今回の研究から、高圧酸素療法の効果が得られるまでには通常、20時間以上の治療を要することも示された。米国では、高圧酸素療法には一般に1時間300ドル(約3万4,000円)の費用がかかると、Kohan氏は指摘している。(HealthDay News 2018年9月27日).https://consumer.healthday.com/hearing-information-19/hearing-disorder-news-351/study-supports-oxygen-therapy-for-sudden-hearing-loss-738095.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
ウイルスや血液の循環が原因で起こるまれな突発性難聴に、高圧酸素療法が有効な可能性があることが、新たな研究で示された。研究を実施した韓国国立海洋医療センターのTae-Min Rhee氏らは、突発性感音難聴と呼ばれる難聴に対しては、標準的な薬物療法に加えて高圧酸素療法を行うのが最も有益な治療選択肢だとしている。研究の詳細は「JAMA Otolaryngology — Head and Neck Surgery」9月27日オンライン版に掲載された。専門家の一人で米レノックス・ヒル病院のDarius Kohan氏によると、突発性感音難聴は約1万人に1人に生じ、ウイルス感染や血液循環の障害が引き金となると考えられているという。患者の3人に1人は治療しなくても聴力は回復するが、残りの3分の2にはステロイドを中心とした薬物療法のほか、内耳の酸素濃度を高める高圧酸素療法が行われている。.Rhee氏らは今回、突発性感音難聴患者を対象に、薬物療法と高圧酸素療法の有効性を比較検討した論文のシステマティックレビューを実施。基準を満たした19件の研究を対象にメタ解析を行った。これらの研究では、薬物療法単独または薬物療法と高圧酸素療法を併用した計2,401人の患者(平均年齢45.4歳、女性55.3%)が対象とされた。.解析の結果、薬物療法と高圧酸素療法を併用した群では、薬物療法単独群に比べ聴力が完全に回復する患者の割合が有意に高く(オッズ比1.61、95%信頼区間1.05~2.44)、平均的な聴力の回復度も併用群で高いことが分かった。さらに、高圧酸素療法は、特に重度の聴力低下がみられる患者で最も有効であることも明らかになった。.このことから、Rhee氏らは「ステロイドなどの薬物療法に高圧酸素療法を併用することは、感音難聴患者にとって合理的な選択肢であるようだ」と述べている。.一方、Kohan氏は、Rhee氏らの研究にはいくつか注意すべき点があると指摘している。例えば、解析の際に、薬物療法の投与量やタイミング、突発性難聴に併発することが多いめまいや耳鳴りの有無などで調整していなかったことが挙げられるという。そのため、「決定的な確証を得るには、さらに厳密な条件で研究を重ねる必要がある」と同氏は強調している。.さらに、高圧酸素療法にかかる費用の問題がある。今回の研究から、高圧酸素療法の効果が得られるまでには通常、20時間以上の治療を要することも示された。米国では、高圧酸素療法には一般に1時間300ドル(約3万4,000円)の費用がかかると、Kohan氏は指摘している。(HealthDay News 2018年9月27日).https://consumer.healthday.com/hearing-information-19/hearing-disorder-news-351/study-supports-oxygen-therapy-for-sudden-hearing-loss-738095.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.