単純なルールの改正によって、アメリカンフットボール選手のプレー中の安全性が高まる可能性があることが、米アイビーリーグが実施した研究で示された。キックオフ地点を35ヤードラインから40ヤードラインへと5ヤード(約4.6m)前方に移動させるだけで、脳震盪の年間発生率が平均68%以上も低減したという。詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」10月1日オンライン版に掲載された。.論文著者の一人で米ペンシルベニア大学ペン傷害科学センターのDouglas Wiebe氏は、このルール改正により、相手側がキックオフしたボールをキャッチして前進するキックオフリターンの際に選手が衝突する確率が低くなるとしている。キックオフは脳震盪の原因の多くを占め、2015年には、アイビーリーグの試合中の全プレーのうちキックオフの比率は6%に過ぎなかったが、脳震盪の21%はキックオフ時に発生していた。また、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の統計によると、キックオフ時には脳震盪が起こる確率は5倍になると米スポーツ専門チャンネルのESPNは報じている。.こうした状況を踏まえ、アイビーリーグは2016年にキックオフラインの変更を決定した。これは蹴られたボールがゴールラインを越えやすくなり、リターンが減ってタッチバックが増えるようになるのを狙ったものだと、共著者で同センターのBernadette D'Alonzo氏は説明する。これにより、キックオフでタッチバックとなる確率は、2013~2015年のシーズンにおける年間平均17.9%から2016~2017年のシーズンには48%まで増加し、その分、選手同士が衝突する回数が減ったことが明らかになった。また、キックオフ時の脳震盪の発生率は1,000回のプレー当たり10.93回から2.04回まで減少した。.さらに、脳震盪の減少がルール改正による結果であることを確認するため、Wiebe氏らは同じシーズン中の他の全てのフットボールの試合を対照としてキックオフの回数を比較した。その結果、キックオフ以外のプレーでも、ルール改正に伴い、脳震盪の発生率は1,000回当たり2.56回から1.18回に減少したことが分かった。「全体として、このルール改正によりキックオフリターンに起因する脳震盪の発生回数は1,000回当たり7.51回減少した」と同氏は述べている。.NFLは、2011年には既にキックオフ地点を30ヤードラインから35ヤードラインに変更していたが、ある分析では、その後に怪我は減ったものの、頭部外傷は減少しなかったと結論づけられていた。ただし、この研究ではキックオフとキックオフ以外のプレーを比較していなかった。なお、ESPN によれば、NFLは今後、場合によってはキックオフ自体を廃止することも検討中だという。.専門家の一人で米マウントサイナイ脳損傷研究センターのKristen Dams-O'Connor氏は、今回の研究について、「多くの人に愛されるアメフトをどこまで安全なスポーツにできるかを示した優れた実例だ」と賞賛している。米メイヨー・クリニックのMichael Stuart氏もこの考えに同意し、「このルール変更は大きな意味があるものだ」と評価する。一方で、同氏は、脳震盪はキックオフリターンする選手だけでなく、他の選手でもそのリスクは高いことを考慮しながら今後の議論を進める必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2018年10月2日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/concussions-news-733/one-football-rule-change-might-lower-concussion-risk-738264.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
単純なルールの改正によって、アメリカンフットボール選手のプレー中の安全性が高まる可能性があることが、米アイビーリーグが実施した研究で示された。キックオフ地点を35ヤードラインから40ヤードラインへと5ヤード(約4.6m)前方に移動させるだけで、脳震盪の年間発生率が平均68%以上も低減したという。詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」10月1日オンライン版に掲載された。.論文著者の一人で米ペンシルベニア大学ペン傷害科学センターのDouglas Wiebe氏は、このルール改正により、相手側がキックオフしたボールをキャッチして前進するキックオフリターンの際に選手が衝突する確率が低くなるとしている。キックオフは脳震盪の原因の多くを占め、2015年には、アイビーリーグの試合中の全プレーのうちキックオフの比率は6%に過ぎなかったが、脳震盪の21%はキックオフ時に発生していた。また、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の統計によると、キックオフ時には脳震盪が起こる確率は5倍になると米スポーツ専門チャンネルのESPNは報じている。.こうした状況を踏まえ、アイビーリーグは2016年にキックオフラインの変更を決定した。これは蹴られたボールがゴールラインを越えやすくなり、リターンが減ってタッチバックが増えるようになるのを狙ったものだと、共著者で同センターのBernadette D'Alonzo氏は説明する。これにより、キックオフでタッチバックとなる確率は、2013~2015年のシーズンにおける年間平均17.9%から2016~2017年のシーズンには48%まで増加し、その分、選手同士が衝突する回数が減ったことが明らかになった。また、キックオフ時の脳震盪の発生率は1,000回のプレー当たり10.93回から2.04回まで減少した。.さらに、脳震盪の減少がルール改正による結果であることを確認するため、Wiebe氏らは同じシーズン中の他の全てのフットボールの試合を対照としてキックオフの回数を比較した。その結果、キックオフ以外のプレーでも、ルール改正に伴い、脳震盪の発生率は1,000回当たり2.56回から1.18回に減少したことが分かった。「全体として、このルール改正によりキックオフリターンに起因する脳震盪の発生回数は1,000回当たり7.51回減少した」と同氏は述べている。.NFLは、2011年には既にキックオフ地点を30ヤードラインから35ヤードラインに変更していたが、ある分析では、その後に怪我は減ったものの、頭部外傷は減少しなかったと結論づけられていた。ただし、この研究ではキックオフとキックオフ以外のプレーを比較していなかった。なお、ESPN によれば、NFLは今後、場合によってはキックオフ自体を廃止することも検討中だという。.専門家の一人で米マウントサイナイ脳損傷研究センターのKristen Dams-O'Connor氏は、今回の研究について、「多くの人に愛されるアメフトをどこまで安全なスポーツにできるかを示した優れた実例だ」と賞賛している。米メイヨー・クリニックのMichael Stuart氏もこの考えに同意し、「このルール変更は大きな意味があるものだ」と評価する。一方で、同氏は、脳震盪はキックオフリターンする選手だけでなく、他の選手でもそのリスクは高いことを考慮しながら今後の議論を進める必要がある」と付け加えている。(HealthDay News 2018年10月2日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/concussions-news-733/one-football-rule-change-might-lower-concussion-risk-738264.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.