米国で手足の麻痺などの重篤な症状をもたらすポリオに似た疾患が急増していることを、米疾病対策センター(CDC)が10月16日に明らかにした。CDC予防接種・呼吸器疾患センター所長のNancy Messonnier氏によると、同日までに米国22州で127件の報告があり、このうち62件は急性弛緩性脊髄炎(AFM)であることが確認されているという。米国では2014年にもAFMが流行し、今回は同年以降で3回目の流行となる。しかし、今年の流行は過去最悪の規模と予測する専門家の声も聞かれる。CNNは30州でAFM と確認された47人に加えてAFMが疑われる49人について調査が行われていると報じており、実際の患者数はCDCの報告数を上回っている可能性もある。神経疾患を専門とする米ジョンズ・ホプキンス大学のCarlos Pardo-Villamizar氏は「AFMが子どもとその家族に長期にわたってもたらす苦しみの大きさは計り知れず、われわれはこの事態を注視しておく必要がある」と話す。.AFMの流行が初めて報告された2014年には、34州で120人の小児が原因不明の筋力低下に見舞われた。次にAFMが多発したのは2016年で、同年には39州で149人が罹患した。.AFMの原因ウイルスとして、ポリオと同じグループに属するエンテロウイルス(EV)D68が2014年の流行に密接に関与していたと考えられている。しかし、他のウイルスが関連している可能性もある。例えば、現在コロラド州で流行しているAFMはEV A71との関連が指摘されている。米コロラド小児病院の小児感染症の専門医であるSamuel Dominguez氏によると、この型のウイルスは東南アジアで高頻度にみられるという。.しかし、CDCは「現時点でAFMの具体的な原因は確認できていない」としている。Messonnier氏によると、患者から採取した検体を調べた結果、一部の患者ではEVが検出された一方で、ライノウイルスが検出された患者もいた。また、環境中の毒性物質やなんらかの自己免疫疾患が原因である可能性も否定できないという。.AFMの典型的な症状は上腕や下肢の筋力低下だが、それ以外の部位の筋力が低下する場合もある。最も重篤な症例では、呼吸に必要な筋肉の力が弱まり、呼吸不全に至っている。Pardo-Villamizar氏らは今年9月、2016年にAFMに罹患した16人の患者を追跡した結果を論文にまとめ、「Developmental Medicine and Child Neurology」に発表した。この論文は「AFMに罹患した小児のほとんどでは、運動機能は限定的にしか回復せず、障害が残った」と結論づけている。Dominguez氏も「2014年にコロラド州でAFMに罹患した小児の何人かは回復したが、ほとんどは1年経過した後も障害が残っていた」としている。.ただし、専門家らはAFMがまれな疾患であることを強調している。また、小児がEVに感染しても上気道感染症を来すにとどまることがほとんどで、AFMに関連した筋力の低下がみられる小児はごくわずかだという。.AFMの予防法に関しては、「風邪やインフルエンザの予防法と同様に、こまめな手洗いや咳、くしゃみによる飛沫の拡散を防止すること」だとDominguez氏は説明する。一方、Pardo-Villamizar氏は「子どもが体調を崩したら四肢の筋力低下がみられないか注意し、そのような徴候がみられた場合には速やかに小児科や救急を受診する必要がある」と話している。(HealthDay News 2018年10月16日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/polio-news-539/cdc-warns-of-polio-like-virus-striking-more-u-s-kids-738692.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
米国で手足の麻痺などの重篤な症状をもたらすポリオに似た疾患が急増していることを、米疾病対策センター(CDC)が10月16日に明らかにした。CDC予防接種・呼吸器疾患センター所長のNancy Messonnier氏によると、同日までに米国22州で127件の報告があり、このうち62件は急性弛緩性脊髄炎(AFM)であることが確認されているという。米国では2014年にもAFMが流行し、今回は同年以降で3回目の流行となる。しかし、今年の流行は過去最悪の規模と予測する専門家の声も聞かれる。CNNは30州でAFM と確認された47人に加えてAFMが疑われる49人について調査が行われていると報じており、実際の患者数はCDCの報告数を上回っている可能性もある。神経疾患を専門とする米ジョンズ・ホプキンス大学のCarlos Pardo-Villamizar氏は「AFMが子どもとその家族に長期にわたってもたらす苦しみの大きさは計り知れず、われわれはこの事態を注視しておく必要がある」と話す。.AFMの流行が初めて報告された2014年には、34州で120人の小児が原因不明の筋力低下に見舞われた。次にAFMが多発したのは2016年で、同年には39州で149人が罹患した。.AFMの原因ウイルスとして、ポリオと同じグループに属するエンテロウイルス(EV)D68が2014年の流行に密接に関与していたと考えられている。しかし、他のウイルスが関連している可能性もある。例えば、現在コロラド州で流行しているAFMはEV A71との関連が指摘されている。米コロラド小児病院の小児感染症の専門医であるSamuel Dominguez氏によると、この型のウイルスは東南アジアで高頻度にみられるという。.しかし、CDCは「現時点でAFMの具体的な原因は確認できていない」としている。Messonnier氏によると、患者から採取した検体を調べた結果、一部の患者ではEVが検出された一方で、ライノウイルスが検出された患者もいた。また、環境中の毒性物質やなんらかの自己免疫疾患が原因である可能性も否定できないという。.AFMの典型的な症状は上腕や下肢の筋力低下だが、それ以外の部位の筋力が低下する場合もある。最も重篤な症例では、呼吸に必要な筋肉の力が弱まり、呼吸不全に至っている。Pardo-Villamizar氏らは今年9月、2016年にAFMに罹患した16人の患者を追跡した結果を論文にまとめ、「Developmental Medicine and Child Neurology」に発表した。この論文は「AFMに罹患した小児のほとんどでは、運動機能は限定的にしか回復せず、障害が残った」と結論づけている。Dominguez氏も「2014年にコロラド州でAFMに罹患した小児の何人かは回復したが、ほとんどは1年経過した後も障害が残っていた」としている。.ただし、専門家らはAFMがまれな疾患であることを強調している。また、小児がEVに感染しても上気道感染症を来すにとどまることがほとんどで、AFMに関連した筋力の低下がみられる小児はごくわずかだという。.AFMの予防法に関しては、「風邪やインフルエンザの予防法と同様に、こまめな手洗いや咳、くしゃみによる飛沫の拡散を防止すること」だとDominguez氏は説明する。一方、Pardo-Villamizar氏は「子どもが体調を崩したら四肢の筋力低下がみられないか注意し、そのような徴候がみられた場合には速やかに小児科や救急を受診する必要がある」と話している。(HealthDay News 2018年10月16日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/polio-news-539/cdc-warns-of-polio-like-virus-striking-more-u-s-kids-738692.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.