米食品医薬品局(FDA)は今年2月、ビスフェノールA(BPA)は、認可されている範囲内での使用であれば安全であるとする声明を発表した。しかし、この発表は"フライング"だったとして米国内分泌学会(ENDO)の専門家らが批判の声をあげている。米ノースカロライナ州立大学生物学教授のHeather Patisaul氏は、ENDOが10月23日に開いたメディア向けカンファレンスで「FDAの管轄外で実施されている研究の未解決のエビデンスが考慮されていない」と指摘した。また、米マサチューセッツ大学アマースト校のLaura Vandenberg氏も「FDAは、低用量のBPAでも乳がんなどのリスクが上昇することを示した自分たちの研究データさえ、なかったことにしている」と不信感をあらわにした。なお、HealthDayの取材に対するFDAの回答は得られていない。.Vandenberg氏が指摘するFDAの核となる研究では、連邦規制機関と学術研究者が共同で実施し、ラットに幅広い用量のBPAを最長で2年間摂取させる実験を行った。この研究の目的は、缶詰の内側のコーティングやプラスチック製の容器などに使用されるBPAの安全性に関する懸念を払拭することであった。.Vandenberg氏は「BPAの構造は女性ホルモンのエストロゲンに類似しており、生殖機能障害や行動障害、内分泌障害との関連が指摘されている」と説明する。しかし、その最終報告書に学術分野の専門家の一人として関与しているPatisaul氏によると、FDAのデータと学術研究の結果をまとめた最終報告書は2019年秋の発表を待たねばならないが、FDAは自分たちのデータのみに基づいた声明を、"このコンソーシアムにおける重要な一歩"として発表したという。.Patisaul氏は「われわれは今、全てのデータをまとめ、BPAの人体への影響について結論を導き出すという極めて重要な段階に来ている。しかし、FDAはデータがまとめられていない段階で食品の包装にBPAを使用しても安全だと結論づけた。それが学会などから懸念の声があがっている理由だ」と話した。また、FDAは今後、報告書を発表する予定としているが、「今回の声明で、FDAは実質的にBPAの安全性を支持する立場であることを明示した」と指摘した。.さらに、Vandenberg氏は「FDAの研究でも低用量のBPAに曝露したラットでは乳がんや前立腺炎、腎臓病の発症率が高まることが示されている」と指摘している。その上で「FDAがこのデータを無視したのは、BPAの曝露量と健康リスクには用量依存性の関係が明確に認められなかったことが要因となった可能性はある。しかし、ホルモンに影響を与える物質は多くの場合、低用量と高用量の場合に健康になんらかの作用を及ぼし、こうした物質と健康リスクは線形ではなくU字型の関係にある」と説明した。.なお、BPAについて不安を抱いている消費者に対し、Patisaul氏は「食品の保存にはプラスチック製品ではなくガラス製の容器を使用する」「感熱紙のレシートを使用しない」「プラスチック製の容器に入った電子レンジで加熱する食品を避ける」以外に、缶詰の食品を避けることも勧めている。特にトマトのような酸性度が高い食品は、缶詰の内側のコーティングに反応しやすいため注意が必要だとしている。(HealthDay News 2018年10月23日).https://consumer.healthday.com/environmental-health-information-12/chemical-health-news-730/fda-too-quick-to-call-bpa-chemical-safe-health-experts-say-738896.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
米食品医薬品局(FDA)は今年2月、ビスフェノールA(BPA)は、認可されている範囲内での使用であれば安全であるとする声明を発表した。しかし、この発表は"フライング"だったとして米国内分泌学会(ENDO)の専門家らが批判の声をあげている。米ノースカロライナ州立大学生物学教授のHeather Patisaul氏は、ENDOが10月23日に開いたメディア向けカンファレンスで「FDAの管轄外で実施されている研究の未解決のエビデンスが考慮されていない」と指摘した。また、米マサチューセッツ大学アマースト校のLaura Vandenberg氏も「FDAは、低用量のBPAでも乳がんなどのリスクが上昇することを示した自分たちの研究データさえ、なかったことにしている」と不信感をあらわにした。なお、HealthDayの取材に対するFDAの回答は得られていない。.Vandenberg氏が指摘するFDAの核となる研究では、連邦規制機関と学術研究者が共同で実施し、ラットに幅広い用量のBPAを最長で2年間摂取させる実験を行った。この研究の目的は、缶詰の内側のコーティングやプラスチック製の容器などに使用されるBPAの安全性に関する懸念を払拭することであった。.Vandenberg氏は「BPAの構造は女性ホルモンのエストロゲンに類似しており、生殖機能障害や行動障害、内分泌障害との関連が指摘されている」と説明する。しかし、その最終報告書に学術分野の専門家の一人として関与しているPatisaul氏によると、FDAのデータと学術研究の結果をまとめた最終報告書は2019年秋の発表を待たねばならないが、FDAは自分たちのデータのみに基づいた声明を、"このコンソーシアムにおける重要な一歩"として発表したという。.Patisaul氏は「われわれは今、全てのデータをまとめ、BPAの人体への影響について結論を導き出すという極めて重要な段階に来ている。しかし、FDAはデータがまとめられていない段階で食品の包装にBPAを使用しても安全だと結論づけた。それが学会などから懸念の声があがっている理由だ」と話した。また、FDAは今後、報告書を発表する予定としているが、「今回の声明で、FDAは実質的にBPAの安全性を支持する立場であることを明示した」と指摘した。.さらに、Vandenberg氏は「FDAの研究でも低用量のBPAに曝露したラットでは乳がんや前立腺炎、腎臓病の発症率が高まることが示されている」と指摘している。その上で「FDAがこのデータを無視したのは、BPAの曝露量と健康リスクには用量依存性の関係が明確に認められなかったことが要因となった可能性はある。しかし、ホルモンに影響を与える物質は多くの場合、低用量と高用量の場合に健康になんらかの作用を及ぼし、こうした物質と健康リスクは線形ではなくU字型の関係にある」と説明した。.なお、BPAについて不安を抱いている消費者に対し、Patisaul氏は「食品の保存にはプラスチック製品ではなくガラス製の容器を使用する」「感熱紙のレシートを使用しない」「プラスチック製の容器に入った電子レンジで加熱する食品を避ける」以外に、缶詰の食品を避けることも勧めている。特にトマトのような酸性度が高い食品は、缶詰の内側のコーティングに反応しやすいため注意が必要だとしている。(HealthDay News 2018年10月23日).https://consumer.healthday.com/environmental-health-information-12/chemical-health-news-730/fda-too-quick-to-call-bpa-chemical-safe-health-experts-say-738896.html.Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.