体外受精(IVF)などの生殖補助医療(ART)で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて早産や低出生体重といった新生児合併症リスクが高いとされる。一般に、その原因はARTに伴う凍結胚や遅延受精、ホルモン療法などの処置にあると考えられてきたが、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスのAlice Goisis氏らが実施した研究で、これらの処置は関与していない可能性があることが分かった。詳細は「The Lancet」1月14日オンライン版に掲載された。Goisis氏によれば、現在では、世界中で500万人以上の子どもがIVFなどのARTで生まれている。同氏らは今回、フィンランドの行政登録データを用いて、2000年時点で0~14歳の子どもが1人以上いる世帯の20%をランダムに抽出。ARTで生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもの計6万5,723人を対象に、出生時の体重と妊娠期間、低出生体重や早産のリスクを分析した。.その結果、子どもと両親の特性で調整して解析しても、ARTにより生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもに比べて低出生体重や早産となるリスクが高いことが分かった(出生時の体重の差は-60g、早産リスクは2.15ポイント上昇)。.次に、Goisis氏らは、1995~2000年の間に、ARTにより生まれた子ども2,776人(対象全体の4%)のうち、自然妊娠で生まれた兄弟姉妹を持つ子ども1,245人を対象に分析した。その結果、ARTにより生まれた子どもにおける低出生体重や早産リスクの上昇は、わずかにとどまることが明らかになった(出生時の体重の差は-31g、早産リスクは1.56ポイント上昇)。.Goisis氏らによれば、この結果は、出産転帰が不良となる原因はART以外にある可能性を示唆するもので、原因として、妊孕性や遺伝的な特徴、出産順位に関連する親の健康状態や精神的なストレスが考えられるという。さらに、ARTにより生まれた子供の約60%が第一子であったことも、リスク因子の一つになり得るとしている。.Goisis氏らは「集団として考えると、ARTにより生まれた子どもでは、そうでない子どもに比べて合併症リスクが高い。しかし、今回の研究結果は、こうしたリスクの上昇は、ARTによる処置以外が原因である可能性が高いことを示している」と説明している。ただし、この研究は、ARTが新生児の合併症と関連しないことを証明するものではないとしている。.これらを踏まえた上で、Goisis氏は「この結果は、将来ARTを希望する親や治療に関わる医療関係者に、ARTの技術自体が生まれた子どもの健康リスクに悪影響を与えるものではないという安心材料になるだろう。ARTに関連して考えられるリスクについて理解しておくことは、きわめて重要だ」と述べている。(HealthDay News 2019年1月22日).https://consumer.healthday.com/infertility-information-22/infertility-news-412/ivf-won-t-cause-birth-complications-study-741637.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
体外受精(IVF)などの生殖補助医療(ART)で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもと比べて早産や低出生体重といった新生児合併症リスクが高いとされる。一般に、その原因はARTに伴う凍結胚や遅延受精、ホルモン療法などの処置にあると考えられてきたが、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスのAlice Goisis氏らが実施した研究で、これらの処置は関与していない可能性があることが分かった。詳細は「The Lancet」1月14日オンライン版に掲載された。Goisis氏によれば、現在では、世界中で500万人以上の子どもがIVFなどのARTで生まれている。同氏らは今回、フィンランドの行政登録データを用いて、2000年時点で0~14歳の子どもが1人以上いる世帯の20%をランダムに抽出。ARTで生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもの計6万5,723人を対象に、出生時の体重と妊娠期間、低出生体重や早産のリスクを分析した。.その結果、子どもと両親の特性で調整して解析しても、ARTにより生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもに比べて低出生体重や早産となるリスクが高いことが分かった(出生時の体重の差は-60g、早産リスクは2.15ポイント上昇)。.次に、Goisis氏らは、1995~2000年の間に、ARTにより生まれた子ども2,776人(対象全体の4%)のうち、自然妊娠で生まれた兄弟姉妹を持つ子ども1,245人を対象に分析した。その結果、ARTにより生まれた子どもにおける低出生体重や早産リスクの上昇は、わずかにとどまることが明らかになった(出生時の体重の差は-31g、早産リスクは1.56ポイント上昇)。.Goisis氏らによれば、この結果は、出産転帰が不良となる原因はART以外にある可能性を示唆するもので、原因として、妊孕性や遺伝的な特徴、出産順位に関連する親の健康状態や精神的なストレスが考えられるという。さらに、ARTにより生まれた子供の約60%が第一子であったことも、リスク因子の一つになり得るとしている。.Goisis氏らは「集団として考えると、ARTにより生まれた子どもでは、そうでない子どもに比べて合併症リスクが高い。しかし、今回の研究結果は、こうしたリスクの上昇は、ARTによる処置以外が原因である可能性が高いことを示している」と説明している。ただし、この研究は、ARTが新生児の合併症と関連しないことを証明するものではないとしている。.これらを踏まえた上で、Goisis氏は「この結果は、将来ARTを希望する親や治療に関わる医療関係者に、ARTの技術自体が生まれた子どもの健康リスクに悪影響を与えるものではないという安心材料になるだろう。ARTに関連して考えられるリスクについて理解しておくことは、きわめて重要だ」と述べている。(HealthDay News 2019年1月22日).https://consumer.healthday.com/infertility-information-22/infertility-news-412/ivf-won-t-cause-birth-complications-study-741637.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.