高齢者のフレイル(虚弱)は、アルツハイマー病の脳病変とその深刻な臨床症状を来すリスクのいずれとも関連する可能性があることが、ダルハウジー大学(カナダ)教授のKenneth Rockwood氏らの研究で明らかになった。アルツハイマー病の脳病変がみられなくても、フレイルが進行している高齢者では認知症と診断されるリスクが高いという。研究の詳細は「The Lancet Neurology」2月号に掲載された。今回の研究は、高齢者を対象とした疫学調査「Rush Memory and Aging Project」に参加し、研究参加時点で認知症ではなかったイリノイ州に在住する59歳以上の男女456人を対象としたもの。参加者には、毎年、神経心理学的および臨床的な評価を行い、死亡後には脳の剖検を実施した。また、フレイルの進行の程度は、疲労、関節および心臓の問題、骨粗鬆症、運動性および食事を準備できるかなどを含む41項目によるフレイル指数を用いて評価した。.その結果、最後の臨床評価時には、参加者の53%がアルツハイマー病とその可能性があると診断されていた。また、参加者の8%は認知症とは診断されていないが、アルツハイマー病の脳病変を有しており、11%はアルツハイマー病と診断されたが、脳病変の兆候はほとんど認められなかった。.解析の結果、フレイル指数が高い人では、アルツハイマー病の脳病変と認知症の症状の両方を有する確率が高かったのに対し、アルツハイマー病の脳病変があってもフレイルではない人は、認知症の症状を示す確率が低いことも明らかになった。.年齢や性、学歴で調整した後でも、フレイルとアルツハイマー病の脳病変は、認知症の症状と独立して関連していた。しかし、Rockwood氏らは「この結果は、フレイルがアルツハイマー病の脳病変や症状の原因であることを証明するものではない」と述べている。.さらに、フレイル指数から日常生活動作に関する項目を除いた上で、脳卒中や心不全、高血圧、糖尿病などの他のリスク因子を考慮して解析しても、フレイルとアルツハイマー病の脳病変との間には有意な関連が認められた。.Rockwood氏は「フレイルが進行して生理学的な予備力が低下すると、フレイルがなかった時には無症状に抑えられていた認知症の臨床症状を誘発する引き金になると考えられる」と説明している。同氏は「このことは、"フレイルの人の脳(frail brain)"は、脳内の病理学的な負荷に対応できず、認知症などの神経学的な問題による影響を受けやすい可能性があることを示している」と付け加えている。.今回の結果について、Rockwood氏は「アルツハイマー病研究を進める上で大きな一歩となるものだ」と述べ、「この研究結果は、認知症症状が現れる原因はさまざまであり、アルツハイマー病の脳病変は、臨床症状を引き起こす一連の要因のうちの一つに過ぎない可能性を示している」と説明している。また、論文の付随論評を執筆したバーリ大学(イタリア)のFrancesco Panza氏は「フレイルを理解することは、認知症の発症を予測し、予防するのに役立つだろう」とコメントしている。(HealthDay News 2019年1月18日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/frailty-a-risk-factor-for-dementia-741657.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
高齢者のフレイル(虚弱)は、アルツハイマー病の脳病変とその深刻な臨床症状を来すリスクのいずれとも関連する可能性があることが、ダルハウジー大学(カナダ)教授のKenneth Rockwood氏らの研究で明らかになった。アルツハイマー病の脳病変がみられなくても、フレイルが進行している高齢者では認知症と診断されるリスクが高いという。研究の詳細は「The Lancet Neurology」2月号に掲載された。今回の研究は、高齢者を対象とした疫学調査「Rush Memory and Aging Project」に参加し、研究参加時点で認知症ではなかったイリノイ州に在住する59歳以上の男女456人を対象としたもの。参加者には、毎年、神経心理学的および臨床的な評価を行い、死亡後には脳の剖検を実施した。また、フレイルの進行の程度は、疲労、関節および心臓の問題、骨粗鬆症、運動性および食事を準備できるかなどを含む41項目によるフレイル指数を用いて評価した。.その結果、最後の臨床評価時には、参加者の53%がアルツハイマー病とその可能性があると診断されていた。また、参加者の8%は認知症とは診断されていないが、アルツハイマー病の脳病変を有しており、11%はアルツハイマー病と診断されたが、脳病変の兆候はほとんど認められなかった。.解析の結果、フレイル指数が高い人では、アルツハイマー病の脳病変と認知症の症状の両方を有する確率が高かったのに対し、アルツハイマー病の脳病変があってもフレイルではない人は、認知症の症状を示す確率が低いことも明らかになった。.年齢や性、学歴で調整した後でも、フレイルとアルツハイマー病の脳病変は、認知症の症状と独立して関連していた。しかし、Rockwood氏らは「この結果は、フレイルがアルツハイマー病の脳病変や症状の原因であることを証明するものではない」と述べている。.さらに、フレイル指数から日常生活動作に関する項目を除いた上で、脳卒中や心不全、高血圧、糖尿病などの他のリスク因子を考慮して解析しても、フレイルとアルツハイマー病の脳病変との間には有意な関連が認められた。.Rockwood氏は「フレイルが進行して生理学的な予備力が低下すると、フレイルがなかった時には無症状に抑えられていた認知症の臨床症状を誘発する引き金になると考えられる」と説明している。同氏は「このことは、"フレイルの人の脳(frail brain)"は、脳内の病理学的な負荷に対応できず、認知症などの神経学的な問題による影響を受けやすい可能性があることを示している」と付け加えている。.今回の結果について、Rockwood氏は「アルツハイマー病研究を進める上で大きな一歩となるものだ」と述べ、「この研究結果は、認知症症状が現れる原因はさまざまであり、アルツハイマー病の脳病変は、臨床症状を引き起こす一連の要因のうちの一つに過ぎない可能性を示している」と説明している。また、論文の付随論評を執筆したバーリ大学(イタリア)のFrancesco Panza氏は「フレイルを理解することは、認知症の発症を予測し、予防するのに役立つだろう」とコメントしている。(HealthDay News 2019年1月18日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/frailty-a-risk-factor-for-dementia-741657.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.