森林や緑に囲まれて老後を過ごすのは見るからに気持ちよさそうだが、心臓にとっても好ましい可能性があるようだ。米マイアミ大学医学部公衆衛生科学・建築学のScott Brown氏らによる研究で、マイアミ・デイド郡の最も緑地環境が豊かな地域に住む65歳以上のメディケア受給者約25万人では、最も緑の少ない地域に住む人と比べて、急性心筋梗塞を発症する可能性が25％低いことが分かった。詳細は、米国心臓協会（AHA）が主催する疫学や予防医学などに関する学会（EPI/Lifestyle 2019、3月5～8日、米ヒューストン）で発表され、「Journal of the American Heart Association」3月5日オンライン版に掲載された。これまでの研究により、緑地環境の近隣では、糖尿病や高血圧、高コレステロールのリスクが低減するといった健康へのベネフィットが示されている。しかし、Brown氏らによると、居住区画単位で心疾患に焦点を当てたのは、この研究が初めてだという。また、今回の結果が他の試験でも確認されれば、都市計画を立てる際に、全体的な緑地の割合ではなく、近隣の公園や住宅地近くの植林などに焦点を当ててもらいやすくなるだろうとしている。.Brown氏は「緑地環境により身体活動が促され、大気汚染が軽減される。自然や緑を眺めるだけでも健康にベネフィットがあることを示唆する研究もある」と指摘する。その上で、「この研究は、街並みの緑化や住宅から徒歩圏内の公園を含む広域な公園計画を策定する際の論拠になりうる」と述べている。.研究グループは、衛星画像を用いてマイアミ・デイド郡における3万6,563の国勢調査細分区の緑地を計測した。一般的に、緑地は可視光を吸収し、塗装面はそれを反射する。また、同じ国勢調査細分区のメディケアデータから、65歳以上の高齢者24万9,405人を対象に、急性心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全、心房細動の発症率を得た。.緑地区域の近くに住む人では、これらの4つの心疾患のうち3つのリスク低減との間に有意な相関が認められた。マイアミの最も緑地豊かな地域に住む人では、急性心筋梗塞リスクが25％低下したほか、虚血性心疾患リスクは20％、心不全リスクは16％低下した。一方で、心房細動リスクの低下は6％にとどまったが、Brown氏は、遺伝がより強く関与している可能性を指摘している。.今回の研究には関与していない米ルイビル大学糖尿病・肥満センターのディレクターを務めるAruni Bhatnagar氏は、居住区域に焦点を当てた今回の新たな研究は、緑地による健康へのベネフィットの要因として、近接性がどの程度、関与するのかを明らかにするのに役立つと述べている。なお、同氏らの研究グループは、木や茂みなどの緑が密生した地域に住むことは、心臓や血管の健康に好ましい影響を与えることを明らかにし、2018年12月に論文を発表している。.ただ、緑地豊かな地域に住むことと心疾患リスクの低減を関連づけるには、さらなる研究が必要である。今回の研究の限界として、研究グループは、広大な海沿いの単一の郡に焦点を当てた研究だった点を挙げている。また、糖尿病や高血圧、高コレステロールの発症率を考慮に入れると、緑地の健康へのベネフィットはあまり劇的なものではなかった。.定評のある心疾患予防に関するガイドラインには、活動的でいることや健康的な食生活、禁煙、適正体重の維持が予防策として盛り込まれている。このリストに「緑地の近くに住むこと」を加えるには、なぜ心臓の健康によいのかを具体的に示す必要がある。.Bhatnagar氏は「どのように緑地が健康に影響を与えるのかを調べる必要がある。緑地が運動を促すのかどうか、関連性だけでは科学的な根拠とすることはできない。さらに、理想的な緑地の種類やどの程度のアクセスしやすさであるべきなのかも重要だ」と述べている。ただ、同氏らは「これらの疑問に答えられる日も近いかもしれない」と話している。同氏は、最近、緑地や植樹のような活動を通して緑地エリアを造ることが、心血管の健康の経年変化と関係するのかどうかを検討する研究の資金を獲得したとしている。（American Heart Association News 2019年3月5日）.https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/heart-attack-news-357/aha-news-a-home-near-green-space-could-cut-heart-attack-risk-743491.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
森林や緑に囲まれて老後を過ごすのは見るからに気持ちよさそうだが、心臓にとっても好ましい可能性があるようだ。米マイアミ大学医学部公衆衛生科学・建築学のScott Brown氏らによる研究で、マイアミ・デイド郡の最も緑地環境が豊かな地域に住む65歳以上のメディケア受給者約25万人では、最も緑の少ない地域に住む人と比べて、急性心筋梗塞を発症する可能性が25％低いことが分かった。詳細は、米国心臓協会（AHA）が主催する疫学や予防医学などに関する学会（EPI/Lifestyle 2019、3月5～8日、米ヒューストン）で発表され、「Journal of the American Heart Association」3月5日オンライン版に掲載された。これまでの研究により、緑地環境の近隣では、糖尿病や高血圧、高コレステロールのリスクが低減するといった健康へのベネフィットが示されている。しかし、Brown氏らによると、居住区画単位で心疾患に焦点を当てたのは、この研究が初めてだという。また、今回の結果が他の試験でも確認されれば、都市計画を立てる際に、全体的な緑地の割合ではなく、近隣の公園や住宅地近くの植林などに焦点を当ててもらいやすくなるだろうとしている。.Brown氏は「緑地環境により身体活動が促され、大気汚染が軽減される。自然や緑を眺めるだけでも健康にベネフィットがあることを示唆する研究もある」と指摘する。その上で、「この研究は、街並みの緑化や住宅から徒歩圏内の公園を含む広域な公園計画を策定する際の論拠になりうる」と述べている。.研究グループは、衛星画像を用いてマイアミ・デイド郡における3万6,563の国勢調査細分区の緑地を計測した。一般的に、緑地は可視光を吸収し、塗装面はそれを反射する。また、同じ国勢調査細分区のメディケアデータから、65歳以上の高齢者24万9,405人を対象に、急性心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全、心房細動の発症率を得た。.緑地区域の近くに住む人では、これらの4つの心疾患のうち3つのリスク低減との間に有意な相関が認められた。マイアミの最も緑地豊かな地域に住む人では、急性心筋梗塞リスクが25％低下したほか、虚血性心疾患リスクは20％、心不全リスクは16％低下した。一方で、心房細動リスクの低下は6％にとどまったが、Brown氏は、遺伝がより強く関与している可能性を指摘している。.今回の研究には関与していない米ルイビル大学糖尿病・肥満センターのディレクターを務めるAruni Bhatnagar氏は、居住区域に焦点を当てた今回の新たな研究は、緑地による健康へのベネフィットの要因として、近接性がどの程度、関与するのかを明らかにするのに役立つと述べている。なお、同氏らの研究グループは、木や茂みなどの緑が密生した地域に住むことは、心臓や血管の健康に好ましい影響を与えることを明らかにし、2018年12月に論文を発表している。.ただ、緑地豊かな地域に住むことと心疾患リスクの低減を関連づけるには、さらなる研究が必要である。今回の研究の限界として、研究グループは、広大な海沿いの単一の郡に焦点を当てた研究だった点を挙げている。また、糖尿病や高血圧、高コレステロールの発症率を考慮に入れると、緑地の健康へのベネフィットはあまり劇的なものではなかった。.定評のある心疾患予防に関するガイドラインには、活動的でいることや健康的な食生活、禁煙、適正体重の維持が予防策として盛り込まれている。このリストに「緑地の近くに住むこと」を加えるには、なぜ心臓の健康によいのかを具体的に示す必要がある。.Bhatnagar氏は「どのように緑地が健康に影響を与えるのかを調べる必要がある。緑地が運動を促すのかどうか、関連性だけでは科学的な根拠とすることはできない。さらに、理想的な緑地の種類やどの程度のアクセスしやすさであるべきなのかも重要だ」と述べている。ただ、同氏らは「これらの疑問に答えられる日も近いかもしれない」と話している。同氏は、最近、緑地や植樹のような活動を通して緑地エリアを造ることが、心血管の健康の経年変化と関係するのかどうかを検討する研究の資金を獲得したとしている。（American Heart Association News 2019年3月5日）.https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/heart-attack-news-357/aha-news-a-home-near-green-space-could-cut-heart-attack-risk-743491.html.American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
